明治10年。
西南戦争の最終場面・鹿児島の城山。
西郷隆盛率いる、およそ400名が、この小高い山に立てこもった。
西南戦争が始まった時には2万の兵を擁していた西郷軍。
たしかに、それから比べれば少ないがしかし、すでに事実上の解散を宣言してなお、400名もの人々が西郷に従っていた。
なぜだろう。
以前拙著(『日本人を動かした政治家の名セリフ』青春文庫)に描いたが、それはほとんど西郷隆盛という人物に答えを見出せる。
西郷軍の辺見十郎太が負傷した折、辺見は自身が足手まといになることをおそれて、おいていってくれと頼んだ。
それを聞いた西郷は、
「何を言うか!」と大きな声で辺見をたしなめ、みなが交代しながら辺見をおぶって行った。
見捨てない・・・。
どんな理由があろうと、西郷は部下を見捨てなかった。
幕府に追われた勤皇僧・月照をかくまえないとわかった時、西郷は月照と一緒に入水自殺を図った。
島流しになった時も、自分を慕う島民たちのために、自身の立場が悪くなるのを承知の上で代官に詰め寄ることもあった。
西南戦争自体が、戦争をはじめた私学校の若者を放っておけなかったから西郷も参戦したといわれている。
城山で西郷とともに戦った400人は、そういう西郷の人間力によって集まったに違いない。
小沢一郎は、自分の秘書をしていた人間が離党するにあたって、「本人の意思を尊重したい」と離党を認めた。
負傷した辺見十郎太が、自発的に、足手まといになるのをおそれて「おいて行ってくれ」と頼んだ時、
「そうか、まあ本人が言うなら、どうぞ」
と西郷が言っていたら、はたして400人もの人間が西郷について行くであろうか。
戦場で負傷して放置されるのは「死」を意味している。
政治家が問題を起こして離党するのは、政治生命の顕著な衰退を意味する。
西郷に尽した辺見を、西郷は見捨てなかった。
小沢氏に尽した秘書出身の代議士は、見捨てられた。
不可解なのは、小沢氏が繰り返し怒気を含んで、
「悪いことはしていない、たんなる記載ミスだ」、と記者にキレ気味にしゃべっている点だ。
悪いことをしていないかつての部下を、
かくも簡単に切り捨てるこの人物に、天下を取る器がないことは自明である。
(もっとも、私をふくめて、単なる記載ミスと思っていない国民は多いが)。
部下を道具のように捨てるリーダーは、自分がやがて捨てられるということに気づくべきである。
調子の良い間は、まだいい。
負けが込んできたとき、「城山」に向かおうとする小沢氏に、はたして何人がついていくのか。
振り返れば、誰もいない、などという情景が出現するような気がしてならない。
西南戦争の最終場面・鹿児島の城山。
西郷隆盛率いる、およそ400名が、この小高い山に立てこもった。
西南戦争が始まった時には2万の兵を擁していた西郷軍。
たしかに、それから比べれば少ないがしかし、すでに事実上の解散を宣言してなお、400名もの人々が西郷に従っていた。
なぜだろう。
以前拙著(『日本人を動かした政治家の名セリフ』青春文庫)に描いたが、それはほとんど西郷隆盛という人物に答えを見出せる。
西郷軍の辺見十郎太が負傷した折、辺見は自身が足手まといになることをおそれて、おいていってくれと頼んだ。
それを聞いた西郷は、
「何を言うか!」と大きな声で辺見をたしなめ、みなが交代しながら辺見をおぶって行った。
見捨てない・・・。
どんな理由があろうと、西郷は部下を見捨てなかった。
幕府に追われた勤皇僧・月照をかくまえないとわかった時、西郷は月照と一緒に入水自殺を図った。
島流しになった時も、自分を慕う島民たちのために、自身の立場が悪くなるのを承知の上で代官に詰め寄ることもあった。
西南戦争自体が、戦争をはじめた私学校の若者を放っておけなかったから西郷も参戦したといわれている。
城山で西郷とともに戦った400人は、そういう西郷の人間力によって集まったに違いない。
小沢一郎は、自分の秘書をしていた人間が離党するにあたって、「本人の意思を尊重したい」と離党を認めた。
負傷した辺見十郎太が、自発的に、足手まといになるのをおそれて「おいて行ってくれ」と頼んだ時、
「そうか、まあ本人が言うなら、どうぞ」
と西郷が言っていたら、はたして400人もの人間が西郷について行くであろうか。
戦場で負傷して放置されるのは「死」を意味している。
政治家が問題を起こして離党するのは、政治生命の顕著な衰退を意味する。
西郷に尽した辺見を、西郷は見捨てなかった。
小沢氏に尽した秘書出身の代議士は、見捨てられた。
不可解なのは、小沢氏が繰り返し怒気を含んで、
「悪いことはしていない、たんなる記載ミスだ」、と記者にキレ気味にしゃべっている点だ。
悪いことをしていないかつての部下を、
かくも簡単に切り捨てるこの人物に、天下を取る器がないことは自明である。
(もっとも、私をふくめて、単なる記載ミスと思っていない国民は多いが)。
部下を道具のように捨てるリーダーは、自分がやがて捨てられるということに気づくべきである。
調子の良い間は、まだいい。
負けが込んできたとき、「城山」に向かおうとする小沢氏に、はたして何人がついていくのか。
振り返れば、誰もいない、などという情景が出現するような気がしてならない。