真夜中のカップらーめん

作家・政治史研究家、瀧澤中の雑感、新刊情報など。

怯(ひる)むなかれ

2010-09-20 01:18:33 | Weblog
たとえば。

庭先に、お爺さんが建てて、しばらく使っていなかった小屋があった。
小屋の近くには柿の木があって、美味しい柿の実がなる。

その柿の実が盗まれるので、警察に巡回をお願いしていた。

ある日、隣の家の男が、勝手に庭に入り込んで柿の実を取ろうとしていた。

「おい、なにをしてるんだ」

警官が声を掛けると、男は、警官に突進してきたので、捕まえた。

すると、隣の家の人々が、

「あの小屋はおれたちのもので、柿の木もおれたちのものだ!
なんで自分の家の庭で自分の柿の木から実をとるのがいけないんだ!」

と、逆切れして、男の釈放と、今後は近所づきあいをしない、と脅してきた。

これが、尖閣をめぐる騒ぎである。

国際的に、尖閣が日本領であることははっきりしている。
1895年、無人島であり、当時の清国(中国)も領有していないことを確認し、そして日本領とした。
戦後もアメリカが施政下に置いていた時期を除いて、日本が領土として保有している。

中国や台湾は、尖閣がアメリカの施政下にあった時には何も言わず、その後も、尖閣周辺の海底に有望な資源があるという国連の調査結果が出るまで領有は主張していなかった。

なにをか言わんや、である。

中国は民間交流から首脳会談、閣僚級の交渉などを拒否してきたと騒いでいるが、おそらくもっと日本人が驚く手段に出るだろう(たとえば経済的な制裁など)。

なぜなら、尖閣はうまくいけば、資源と領海を手に入れるチャンスだからである。

靖国神社参拝の騒ぎの時には、問題は単に歴史や思想であり、日本に圧力を掛けるための手段にすぎなかった。

が、尖閣は違う。
将来の資源確保と、中国海軍が太平洋に出ていくための足がかりであり、もっと言えば、いざという時に日本のシーレーンを妨害できる格好の場所だからである。

相手が弱いとなれば、脅して脅して脅し通して、好条件の譲歩を引きずり出すのが中国の外交である。フィリピンやベトナムとの間で、中国がどんなえげつないやり方で岩礁などを手に入れたか、調べればすぐにわかる。

日本は島国だから、国境は都市からはるかに離れている。
為に、領土・領海・領空の侵犯にあまり敏感ではない。
そして、国際的に見ても明らかな日本領であるにも関わらず、
「話し合いで解決しよう」
という空気が流れる。

話し合いは、相手にも相応の権利がある場合に、
「それでは、どのあたりを落とし所にしましょうか?」
という時だけ有効である。

どうして私たちは、法的にも歴史的にも、明らかに自分の家の庭先であるにもかかわらず、その場所を、たとえ一部分でも隣家に譲らなければいけないのか?

いま怯めば、庭先からやがて軒先に迫り、外出する時にはいちいち隣家(中国)の許可を得なければならなくなる。
そして中国の気に入らないことを日本がやれば、庭先から門を封鎖して、買い物にも行かれなくすることも可能だ(シーレーンの妨害など)。

中国に、侵略の困難さを教えなければ、必ずその日は来る。

融和政策を繰り返して、ヒトラーに侵略のうまみを教え、第二次大戦を引き起こさせた愚を繰り返してはいけない。

しかしながら。
いまこそ防衛体制の強化と、日米同盟の出番だと思うのだが、現政権からはどちらも聴こえてこない。

かつて吉田茂は、自分の政策や人事を通すため、用事もないのにGHQへ出かけ、帰ってきてからおもむろに政策や人事を発表したことがある。

周囲が勝手に、「吉田の言うことは、占領軍の意向だ」と解釈するのを知っていたからである。

たとえ世間話でも、首相がオバマ大統領と電話会談を連日行っている、というアナウンスは、効果がある。
どうしてそんな簡単なことも、この政権はできないのか。

そういえば、現内閣を見て、外交手腕のあるベテラン大臣は見当たらない。
しかし今は、私たちはこのメンバーに託すより仕方ないのだ。

菅内閣よ、怯むなかれ。

いま、一歩後退したら、取り返すのに百倍の力が必要になる。