はじめに SOSORT に関する記事を参照いただければと思います。
「初めにお読みください : 特発性側弯症治療 - 何が問題なのか? 」
「下書き:SOSORT体操療法文献データを紐解いてみることにしました」
SOSORTの成り立ちが、思春期特発性側弯症に対する治療として「手術は否定する」「理学療法(側弯症体操)がベスト」という自分達 理学療法系医師 の立場から出発しているものでした。その背景には、ヨーロッパを中心としたSchrosh体操の歴史があると思われます。
私は、この背景や、医学的エビデンスを探るべく、Schrothシュロス体操の文献を読み漁り、その内容についてご紹介してきました。読みながらつねに感じていたのは、このシュロス体操並びにその流れを引く各種体操療法について書かれた論文の内容の「違和感」でした。 ブログ内で何度か述べたと思いますが、それはいわば「論文中のどこにも体操が効果を示した証拠は示されていないのに、なぜか結論だけは、手術はダメ、体操が良いのだ」という意見陳述で終わっている。ということ。 さらに、どうしてこのような内容でも医学論文として公表されているのか? という疑問を調べるなかで、昨今の流れとしての オープンアクセス という論文公表方法に行き当たりました。 それは、論文作成者が掲載料金をネット出版業者に支払うことで、査読(論文内容に対する第三者による点検)なしでインターネット上に公開される。というシステムでした。
医学論文として「質」が悪くても、お金さえ払えば「論文を公表」したことになる、という現代ビジネスと、そしてドクター側の事情を垣間見ることができました。
この問題点は、SOSORT会長である M.ROMANOも指摘しており、つねに品質の高い、証拠能力の高い医学論文を出すようにSOSORTメンバーにも指導してきているのが彼の発表からもわかりました。
下記は、2009年のSOSORT学会での彼の講演スライドと思われます。
この中で、SOSORTメンバーに対して、医学論文における「品質」「証拠能力」の順位が示されています。
「医学 (Medical)」としての証拠力.....エビデンスベースドメディスン (evidence based medicine) の高さは、上位のSystematic reviewsがもつとも信頼性の高いものとして紹介されています。
一方、側弯症体操関連の発表はその大半が下位の「expert opinion (意見)」あるいは「case reports(症例報告)」レベルでした。
国内でも、一部の理学系や側弯整体の影響を受けた柔道系の人たちが、Schrothシュロス体操やその他側弯体操の「海外文献」があることを理由として、思春期特発性側弯症における体操療法を広めようとしているのがネツト広告から読み取ることができました。 ......この件については別途記事を書きたいと思っているのですが、端的に言いますと、ここで特発性側弯症ビジネスの餌食にされているのは、体操療法の免許皆伝(認証書)を得るために、研修会費用を払って学んでいる生徒さんがた、ということです。これは整体を開業するために「整体スクール」を宣伝して授業料を得る「スクールビジネス」と同一でしょう。
話しを SOSORT会長の M.ROMANOに戻します。
彼が整形外科系ではもっとも権威の高い医学誌のひとつであるSPINEに掲載された論文がありました。
Exercises for adolescent idiopathic scoliosis: a Cochrane systematic review
(思春期特発性側弯症に対する体操 : Cochrane systematic review)
2013年 SPINE
Cochrance systematic review コクランシステマテッィクレビューについては ウイキペディアを参照ください。
いわばこの医学論文は、M.ROMANOが2009年から述べてきているところの「最高レベルの医学的証拠」を示す。という内容になります。
そして、ここでの彼の結論は
「There is a lack of high-quality evidence to recommend the use of SSE for AIS」
思春期特発性側弯症に対する側弯体操を推奨するに足る高い品質の証拠はない
敗北宣言といつては、同氏に対して失礼かもしれませんが、SOSORT発足以来、過去10年近くに渡って医療現場で実施され、多数の報告もなされてきた側弯体操ですが、結論としては、これ以上側弯体操が治療効果があるとは言えない。という結果報告を 権威のある医学雑誌に発表したことは、医療現場の混乱を収束させる。という意味で、とても潔いと感じました。
国内ではまだこれからもしばらくはインターネット上で「思春期特発性側弯症に対する側弯体操」「海外で証明された体操療法」などの宣伝を目にするでしょうが、どうかそのような宣伝に 皆さんは踊らされることのないようにしてください。
また、現状の職場や将来設計に不安を抱いている若い理学療法士の皆さん、イタズラな医学的根拠のない特発性側弯症ビジネスでお金を稼ごうなどと考えるのは、止められたほうが良いと思います。
某大〇整体が、特発性側弯症ビジネスで有名となりましたが、あれはビジネスであって、医学でも医療でもありません。 皆さんは、きちんと医学を学んで国家試験に合格した「理学療法士」という知識と見識を背景にもっています。皆さんが患者さんがたにしてあげられる医療は数限りなくあります。 エビデンスと経験に基づいて、患者さんの治療に貢献することができます。どうか、そのことを忘れないでいただきたいと思います。
august03
「初めにお読みください : 特発性側弯症治療 - 何が問題なのか? 」
「下書き:SOSORT体操療法文献データを紐解いてみることにしました」
SOSORTの成り立ちが、思春期特発性側弯症に対する治療として「手術は否定する」「理学療法(側弯症体操)がベスト」という自分達 理学療法系医師 の立場から出発しているものでした。その背景には、ヨーロッパを中心としたSchrosh体操の歴史があると思われます。
私は、この背景や、医学的エビデンスを探るべく、Schrothシュロス体操の文献を読み漁り、その内容についてご紹介してきました。読みながらつねに感じていたのは、このシュロス体操並びにその流れを引く各種体操療法について書かれた論文の内容の「違和感」でした。 ブログ内で何度か述べたと思いますが、それはいわば「論文中のどこにも体操が効果を示した証拠は示されていないのに、なぜか結論だけは、手術はダメ、体操が良いのだ」という意見陳述で終わっている。ということ。 さらに、どうしてこのような内容でも医学論文として公表されているのか? という疑問を調べるなかで、昨今の流れとしての オープンアクセス という論文公表方法に行き当たりました。 それは、論文作成者が掲載料金をネット出版業者に支払うことで、査読(論文内容に対する第三者による点検)なしでインターネット上に公開される。というシステムでした。
医学論文として「質」が悪くても、お金さえ払えば「論文を公表」したことになる、という現代ビジネスと、そしてドクター側の事情を垣間見ることができました。
この問題点は、SOSORT会長である M.ROMANOも指摘しており、つねに品質の高い、証拠能力の高い医学論文を出すようにSOSORTメンバーにも指導してきているのが彼の発表からもわかりました。
下記は、2009年のSOSORT学会での彼の講演スライドと思われます。
この中で、SOSORTメンバーに対して、医学論文における「品質」「証拠能力」の順位が示されています。
「医学 (Medical)」としての証拠力.....エビデンスベースドメディスン (evidence based medicine) の高さは、上位のSystematic reviewsがもつとも信頼性の高いものとして紹介されています。
一方、側弯症体操関連の発表はその大半が下位の「expert opinion (意見)」あるいは「case reports(症例報告)」レベルでした。
国内でも、一部の理学系や側弯整体の影響を受けた柔道系の人たちが、Schrothシュロス体操やその他側弯体操の「海外文献」があることを理由として、思春期特発性側弯症における体操療法を広めようとしているのがネツト広告から読み取ることができました。 ......この件については別途記事を書きたいと思っているのですが、端的に言いますと、ここで特発性側弯症ビジネスの餌食にされているのは、体操療法の免許皆伝(認証書)を得るために、研修会費用を払って学んでいる生徒さんがた、ということです。これは整体を開業するために「整体スクール」を宣伝して授業料を得る「スクールビジネス」と同一でしょう。
話しを SOSORT会長の M.ROMANOに戻します。
彼が整形外科系ではもっとも権威の高い医学誌のひとつであるSPINEに掲載された論文がありました。
Exercises for adolescent idiopathic scoliosis: a Cochrane systematic review
(思春期特発性側弯症に対する体操 : Cochrane systematic review)
2013年 SPINE
Cochrance systematic review コクランシステマテッィクレビューについては ウイキペディアを参照ください。
いわばこの医学論文は、M.ROMANOが2009年から述べてきているところの「最高レベルの医学的証拠」を示す。という内容になります。
そして、ここでの彼の結論は
「There is a lack of high-quality evidence to recommend the use of SSE for AIS」
思春期特発性側弯症に対する側弯体操を推奨するに足る高い品質の証拠はない
敗北宣言といつては、同氏に対して失礼かもしれませんが、SOSORT発足以来、過去10年近くに渡って医療現場で実施され、多数の報告もなされてきた側弯体操ですが、結論としては、これ以上側弯体操が治療効果があるとは言えない。という結果報告を 権威のある医学雑誌に発表したことは、医療現場の混乱を収束させる。という意味で、とても潔いと感じました。
国内ではまだこれからもしばらくはインターネット上で「思春期特発性側弯症に対する側弯体操」「海外で証明された体操療法」などの宣伝を目にするでしょうが、どうかそのような宣伝に 皆さんは踊らされることのないようにしてください。
また、現状の職場や将来設計に不安を抱いている若い理学療法士の皆さん、イタズラな医学的根拠のない特発性側弯症ビジネスでお金を稼ごうなどと考えるのは、止められたほうが良いと思います。
某大〇整体が、特発性側弯症ビジネスで有名となりましたが、あれはビジネスであって、医学でも医療でもありません。 皆さんは、きちんと医学を学んで国家試験に合格した「理学療法士」という知識と見識を背景にもっています。皆さんが患者さんがたにしてあげられる医療は数限りなくあります。 エビデンスと経験に基づいて、患者さんの治療に貢献することができます。どうか、そのことを忘れないでいただきたいと思います。
august03