~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

モアレ検診の重要性 カナダのケース 再編集中

2008-04-10 00:32:45 | 脊柱検診スクリーニング
(オリジナルは2007年6月21日に記載しました。このときは、ネット検索で文献の
アブストラクトしか入手できていなかったのですが、本日2008年4月10日に文献の
本体を入手できましたので、現在読み直しているところです。当然ですがアブス
トラクト以上の様々な情報がありましたので、それらを追加して修正する予定です)

ざっと見て思えることは、スクリーニングにも精度の点などいろいろと課題はある
ようですが、まったくスクリーニング制度を持たない状態と、その制度を持っている
ということでは、発症した患者におけるインパクトが異なってくる。ということです。
この文献を中心に、もう少し、脊柱検診(学校検診)についてブログでとりあげて
いきたいと思います。

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(H19年7月4日追記 : この項は、august03が和訳したものです。
また私の意見も記載してありますが、
私は医師ではありませんので、医学的に誤解や誤りが含まれている可能性は
ありますので、どうかそのことを考慮されてお読みいただきたいと思います。
また、なんとかして文献本体を入手して、さらに詳細な内容をいつか皆様に
ご提供したいと考えております)

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側弯症検診 (スクリーニング)についてPubMed検索していましたところ、検診の
大切さがよくわかる例がありましたので、ご紹介させていただきます。


専門誌 : Spine. 2007 May 20;32(12):1349-54
タイトル : 学校検診制度中止後の側彎症外来への初回受診時の患者の特徴
医療機関 :Research Center, CHU Sainte-Justine Mother and Child University
     Hospital Center, Montreal, Quebec, Canada.

研究デザイン : 思春期特発性側彎症の疑いでカナダメトロポリタン小児病院の専門
外来を受診した全ての患者に対する調査。

目的 : (学校検診制度中止後、市井のクリニックで)特発性側彎症患者の疑いありと
して、患者を専門病院に照会してくる現状の方法を、以前の学校検診制度と比較検証
する。

背景 : カナダにおける学校での側彎症検診制度の中止が、患者を発見することに
与える影響はいまだ調査されていなかった。

方法 : 1年間に市井のクリニックからの照会により専門外来を受診した636人の
臨床検査およびレントゲン写真を調査した。
患者は、骨成熟度とカーブの進行度によってグループ分けした。

結果 : 照会により受診した636人のうち、側彎症の疑いがあるとされた患者は489人
(77%)であった。このうち、206人(42%)はコブ角10度以下の正常域であり、専門病院
へ照会するには不適切なものであった。側彎症と確定診断された患者のうち、91人
(32%)は装具療法をするには遅すぎる段階にきていた。

結論 : 現状の紹介システムは最善のものではないことがわかった。


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August03の意見 :
カナダでは、これまでは学校を中心として、学童への側彎症検診制度がありました
が、それが理由は不明ですが中止された模様です。
その中止後は、家庭でこどもの異変に気づいて市中のクリニックあるいは病院で
検査を受け、そこから「偽陽性」のこども達は側彎症専門病院に行く、という
ステップになっているようです。

専門病院での1年間の結果として、 
  636人中147人(23%)は、完全に側彎症ではないこどもたち
  636人中489人(77%)が、偽陽性のこどもたち
  ただし、489人中206人(42%)は、コブ角10度以下の正常域のこどもたち
  つまり、147人+206人=353人(56%)のこどもたちは、問題なし、という結果が
  得られています。

  489人-206人=283人が側彎症患者と確定診断されました。

先に照会したギリシアにおける学校スクリーニングでは、約80%が偽陽性のこども
たちでした。このカナダの場合は、家庭で気づいた時点での受診ということですの
で、「見た目」がさらに進行しているわけですから偽陽性率が56%ということになる
のは当然だと思います。
このカナダの現在の方法で、不幸なことは、専門病院に送られてきた636人中91人
(14%) …..確定診断を受けた283人中91人(32%)は、すでに装具療法をするには
「遅すぎるほどカーブが進行していた」という指摘であり、この報告は、
スクリーニングを中止したことは間違いであったと暗に指摘しているものです。

つまり、日本国内の一部地域で実施されている「モアレ検診」は、偽陽性率がやは
り80%ほどあり、偽陽性といわれたこどもさんとご両親にとっては、ショックと
パニックのもと…..人騒がせと、民間療法者の土壌になるのですが、でも、もし、
このカナダのように学校検診がない場合は、家庭で気づいた時点、あるいは、
民間療法に頼っている間に装具療法が手遅れになるほど進行している。という事態
が発生することが、このカナダの研究から推測することができるのだと思います。

関連項目
Step by step
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/1a78c2a576134dae2d84f8c331e57908

マイルドカーブ Q&A
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/555dca1476ce045bfc81a03cab3acf93

特発性側弯症のカーブ進行のリスク
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/b573de9c4bfe8951d301c99bd5a59524

側弯症専門医師
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/c98b46ae8347107690bc67a459be65f9

お母さんは自分のことを責めないで下さい
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/22bf62ebf9707d847e57c1b56ceb81d8

脊柱側弯症の治療体系
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/a3b49dccb03880d050d4e0b1fc9268a0


オリジナル英文
Patient characteristics at the initial visit to a scoliosis clinic: a
cross-sectional study in a community without school screening.

STUDY DESIGN: A cross-sectional study was conducted of all patients
referred for an initial visit to the orthopedic outpatient clinic of a
metropolitan pediatric hospital in Canada for suspected adolescent
idiopathic scoliosis (AIS).
OBJECTIVE: To document the appropriateness of current referral patterns for
AIS in comparison to those that were prevailing before discontinuation of
school screening in Canada.
SUMMARY OF BACKGROUND DATA: The consequences of the discontinuation of
school scoliosis screening programs on the referral patterns of AIS
patients remain unknown.
METHODS: The clinical and radiologic charts of the 636 consecutive patients
referred for scoliosis evaluation over a 1-year period were reviewed.
Patients were classified according to defined criteria of appropriateness
of referral based on skeletal maturity and curve magnitude.
RESULTS: Of the 489 suspected cases of AIS, 206 (42%) had no significant
deformity (Cobb angle <10 degrees ) and could be considered as were classified as late referrals with regards to brace treatment
indications.
CONCLUSIONS: These findings suggest that current referral mechanisms for
AIS are leading to a suboptimal case-mix in orthopedics in terms of
appropriateness of referral.

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