「だけど大道芸なら時間と場所を間違えてるんじゃない?」
「昼は美容のため睡眠を取ることにしてるの。わたしの実の父はヴラド・ツェペシュ。冥界の大将軍よ。人間たちは吸血鬼ドラキュラとかふざけたあだ名をつけているようだけど」ジャグリングを続けながらマクミラが言った。
「父親がドラキュラなら母親はサーカス団出身かしら。でも、いいの? 初対面の相手に秘密を漏らしてしまって」
「堂々と名乗り会ってから戦いたかったしお礼もしなければと思ってね」
「お礼?」
「わたしの母はサラマンダーの女王。あなたと出会うまで封印されていた能力が目覚めつつある。あなたもマーメイドの力を感じているはず。ついにその時が来たわ。あなたにも目覚めていただくわ。もっともあなたが生き残れたらの話だけど」
「ナオミ、引っ込んでろ! 化け物の相手は、俺がする」
回りの空気がゆがんだと錯覚するほどの闘気が孔明の足下からあふれ出た。
今までおとなしかった三匹がうなり出し瘴気(しょうき)が口から漏れ出す。
「キル、カル、ルル、おとなしくしておいで。二枚目気取りの龍、いい波動だわ。冥界にもちょっとこれだけの闘気をだせる奴はいない。完全にコントロールできるようになるにはもう少し時間がかかりそうだけど。でも残念ながら、今夜の相手はわたしでもこの子たちでもないの」
火の玉をポーンと投げ上げてライトアップすると、マクミラは右手の指をパチーンと鳴らした。
“ラウンド・ワーン”というわけだ。
「さあゲームを始めましょう。今晩のお相手はわたしのかわいいドールたち。お手並み拝見といこうじゃないの」
ズズッ、ズズッ。
ナオミの目の前でマンホールの蓋がずれてミドリ色の指がのぞいた。
続いてもう1本の手が現れて、地獄から出ることを神に許された悪鬼が現世の空気をかみしめようとするかのように両手がマンホールの縁にかかるとミドリ色のゾンビが這い出してきた。
二人、三人・・・・・・次々とゾンビはマンホールから這い出てくる。
「ごちそうの独り占めは出来そうもないわね」
ナオミは気合いを入れて闘気を身にまとうと飛び出した。
心臓の血液がスロットマシーンの絵のように流れるのを感じた。
落ち着け、落ち着け、大丈夫だ。
今日は雨の日。雨の日のわたしにかなう相手なんていない。
自分に、言い聞かせた。
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