ナオミは、前方に太さ五、六メートルはありそうな銀杏の木があるのを確認するとゾンビに向かって走り出した。
ボロボロになった相手の緑色の顔を見ると逃げ出したい気分になったが勇気を奮ってスピードを上げていく。
ワン、ツー、スリー!
かけ声をかけて飛び上がる。ゾンビの肩をジャンプ台にはるか先まで飛ぶ。
銀杏の幹で両足を一度縮めてから伸ばした右足を三角跳びの要領でゾンビにかます。後頭部にまともに入ったはずだが、ゾンビはまるでハエでも止まったような表情をしている。
次の瞬間、ゾンビの右手にレザーパンツの左足首をガッチリ掴まれた。
にやっ、とゾンビが笑った。思いっきり身体をひねって左足でゾンビの顔を蹴り飛ばす。
ボキッ。
イヤな音がして首が不自然にねじれる。
それでも離れないゾンビの右手が軽々とナオミの身体を振り回す。
一回、二回、三回、四回、勢いをつけて放り投げる。
その刹那、ナオミはゾンビの頭に蹴りを入れることで勢いを半減させるが、数メートル先の地面にたたきつけられて息が詰まる。
無理矢理起きあがると、ゾンビが全部で7人いることに気づく。
こんな時に、アンラッキーセブンか・・・・・・
戦い慣れている孔明が近づいてきて言った。
「落ち着け。知らない奴とまともにぶつかるのは愚か者のすることだ。スピード、耐久力、得意技。まず相手を知ることが先決だ」
「スピードC、耐久力特A、得意技バカ力ってとこかしら」
「その調子だ。恐怖心にとらわれるなんて俺の知ってるナオミらしくないぜ」
ナオミは何となくどこかで聞いたセリフのような気がした。
「今度は俺が様子を見る。バックアップ頼むぜ」
言うが早いか孔明が一番のでかぶつに向かっていく。流水の動きでのろのろしたゾンビの攻撃をかわしていく。
次に、相手の懐に入り込んで左腕を押さえると右肘を思いっきり打ち込む。
バキッ。
音がして相手の左腕が曲がってはいけないはずの方向に折れ曲がる。
オッシャー。
折れた腕に飛び膝蹴りをかけるとゾンビの左腕がちぎれる。
何が起こったのかという顔をしているゾンビの真横に立つと蹴りを入れて膝の骨を砕いてしまう。よたつくゾンビに足払いをかけると飛び上がって両足で踏みつける。顔面にとどめの一撃を入れるとブクブクと口から泡を出している。
一人倒してからは孔明の独壇場のように見えた。次々に肘打ちと膝蹴りでゾンビたちの腕を引きちぎり、足払いをかけた相手の頭をつぶしていく。
だが、恐怖の本番はここからだった。
荒い息をした孔明がナオミの側に来て車まで引っ張っていく。
最初は激しい雨のせいで二人とも気づかなかった。
「見ろ。こいつら復活し始めてる」
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