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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第一部 第6章−7 仲間たちとの出会い

2019-12-23 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 

 一匹の真紅の龍が三匹の神獣たちと演武をしていた。

 しなやかな肢体の銀狼。背後が見えないほど巨大な雷獣。そして、所狭しと飛び回る金色の鷲。

 はるか昔、ネプチュヌス宮殿でゆうゆうと移動する海龍を見た記憶があるが、これほど見事なたてがみ、背びれ、鱗を見たことがなかった。

 落ち着きを称えたブラウンの瞳と裏腹に数本の角と爪はするどくとがり、掌中には龍の王族だけが持つ御霊があった。

 振り返った龍の目がナオミのところで止まった。

 幻視からさめると龍の刺繍が入ったチャイナ服に身を包んだ男がいた。

 時折前世からの縁ある人と再会するとナオミには記憶がよみがえった。神々の血筋を引く人間も人間界に存在しているのだ。

 微笑んだ顔には屈託がなく、孤独を好む龍族の性質は人間界の生活でなくなったようだった。

「どこかで、会ってないかな?」男がナオミに話しかけた。

「誰かに似ている気がするんだけど」

「たぶん初対面よ。もしもあなたがハワイ育ちじゃなければね」

「デジャブを感じたんだ。オレは蔡孔明(サイ・コーメー)。日本からの留学生だ」

 二人はすでには会っていたかもしれない。ただし、前世で。

「わたしはナオミ・アプリオール。まだここの学生じゃないけど、ディベート・キャンプのお手伝いしてるの。あなたたちは何してるの」

「俺たちは、St. Lawrence University Campus Guardians(聖ローレンス大学キャンパス警備隊)、略してLUCGだ」

「キャンパス・ガーディアンズ、暴走族には見えないから自警団?」

「ヘルズ・エンジェルスとかと一緒にしないでくれよ」

 孔明は苦笑いした後、こうつけ加えた。

「女の子だけでこんな時間にうろつくのは感心しないな」

 その言葉が合図になったかのように、孔明の仲間たちがナオミとケイティを囲んだ。 

「オレ、チャック・ハーベック。こいつの術に引っかかっちゃいけないよ!」

 ウルフカットの巨人が言った。額が張り出し狼のように細い目をしていたが、人なつっこい顔をしている。ただし、暗がりではスタジャンを着たフランケンシュタインと誤解されかねない。

「僕はウィリアム・シェルダン。ビルと呼んでくれ。女の子の夜歩きが不用心なのは同感だな」

 卒業後、マサチューセッツ工科大学の大学院に進学することになる秀才が言った。

 ヒッピーの生き残りのような服装を見て、将来二十代でノーベル賞候補者になると見抜いた者が果たしていただろうか。当時でも縦横の幅が変わらないくらい太っていたので、ナオミはこれで警備隊員が務まるのだろうかと心配した。

「こいつは女と見れば声かけまくる輩だ。俺はクリストフ・ボールデン、ずっと安全ですよ」

 自分の方がよほど危険そうなブロンドのベルギー人が言う。スエットスーツを気障に着こなしていたが、おそらく彼が着ればどんな服も気障に見えるだろう。

「あの。わたしはケイティ・オムニマス」

 どうやらハンサムなクリストフにときめいているようだった。男の子の前で自然とかわいく振る舞うケイティを見ると、自分にはなぜ同じように出来ないのかと思った。ナオミにできるのは、いつでも突っ張ることばかりだった。

「いつもここで練習しているの?」彼らを無視して、孔明に質問した。

「いつもはこんな時間にはしないんだが、今週からは練習をかねてキャンパス内を見回ってる。俺たちはもともとはカンザスシティの拳法道場仲間だったんだが、最近おかしな事件が頻発してるんでLUCGを結成したんだ」

「おかしな事件って?」

「これから学生生活をスタートしようという人に、こんな話をするのは気が引けるんだが・・・・・・聖ローレンス大でもキャンパス・レイプは毎年報告されているし、何年に一回は殺人事件さえ起こっている。ほとんどは外部者のしわざだけど」

「ハワイだって観光客の減少が怖くて報道されないだけでひどい事件は日常茶飯事だったわ。それで、おかしな事件というのは?」

「うん、ファントムが出没するって話だ」

 

 

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