「最初の神々のゲームを闘っていた頃、わたしはゾンゾーランドでは『生と死』の境をなくす研究をさせていた。最初から死んでいるから死を恐れないゾンビーソルジャーたちを生み出すために。ノーマンズランドでは『愛と憎しみ』の境をなくす研究をさせていた。どれだけ愛する相手にでも憎しみを持てるソルジャーたちを生み出すために。ナイトメアランドでは『夢と現実』の境をなくす研究をさせていた。人間に狂気と驚喜を同一視させるために。アポロノミカンランドでは『過去と未来』の境をなくす研究をさせていた。過去にこだわり、未来への展望を開かせないために。でも精神世界での闘いの後に、すべての研究成果は棄てさせた」
「どうして?」
「それが存在意義だと思えば人間は死をおそれないどころか、よろこんで相手を殺すと分かったし、愛する相手でもちょっとしたきっかけで愛が憎しみに取って代わることが分かったし、狂気と驚喜には何の違いもないことが分かったし、自分に都合がいいと思えば、平気で過去を作り替え未来を犠牲にすると分かったから。わたしが進めていた研究はムダだった。それに・・・・・・」
「それに?」
「あなたと知り合ってから人間を少し信じてみたくなった。あなたは彼らの明るいところしか見ようとしない心に一点の曇りもない元気印よ。自分さえよければと考える輩ばかりの中、神々のゲームは彼ら自身を滅ぼすオッズが9割9分9厘。だけど、あなたのような変わりものが万が一にも結果が見えているゲームをひっくり返すかしれないと思ったら、しばらく眺めていたくなった。それなのに、今回、魔性たちが横やりを入れて楽しみを奪おうっていうのは気に入らない」
「一点の曇りもない元気印って褒め言葉じゃない気もするけど、とりあえず、ありがとう。だけど、なぜ今回のゲームプランが奇襲かという答えは、まだ聞いてないわ。解放された魔性たちの意識が、彼ら自身の想定外になる可能性は?」
「その可能性はある。今回の魔性たちの正体は、魔界でも完全には把握できていない。それが、魔王たちが彼らを持て余した原因でもあるんだけど」
「わたしたちに秘密の援軍が関わるなら、それが結果的に奇襲になる可能性はあるわ。一つ思い出したことがある。あなたがゲームプランを考えるヒントになるかも知れない。OODAループって聞いたことある?」
「OODA?」

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