(気の迷いではございませぬ、軍師様)思念を放ってきたのはかつての婚約者アフロンディーヌの霊体だった。
人間界では思念の使えないはずのアストロラーベがつぶやく。(こんなことが・・・・・・いったい我はトリックスターの魔術にかかっているのか?)
(そう思われるのもムリはございませんが、私も海神界最高位の巫女。およそ神殿と名の付く場所なら、霊体を送り込むことくらいはできます。神殿は人間界においては、思念を通じてコミュニケーションを取るためのサーバーの役目を果たします)
(そうだったのか。たしかに、神殿に巫女はつきものだな。アア、この波動に間違いはない。さかさまジョージも最後に粋な計らいをしてくれたことになる。死ぬ前に美しき巫女に再び会えてもう思い残すことはない)
(思い残すことはないなど、軍師様とも思えぬセリフ。こんな死に場所で悔いは本当にないのですか?)
(確かに・・・・・・まだ死ぬわけにはいかぬ。軍師たるもの闘いを率い、闘いの中でこそ死に花を咲かせられるというもの)
(その通りでございます。今は神殿の力によって思考能力を奪われているだけ。「操るもの」に戻って準備していてください。しばらくすればペルセリアス様が助けに来てくれます)
(ペルセリアスが?)
(今は、堕天使ダニエルという名になっておりますが、さらなるご進化の刻がもうそこまで来ております)
(分かった。将軍殿とマクミラを捜して、ここを抜け出す準備をしよう)
(それでこそ軍師様。私が愛したお方・・・・・・)
アストロラーベが微笑みを浮かべているのに、アフロンディーヌは気づいた。(何か、おかしいことが?)
(美しき巫女よ、もう二度と会うまいと思っていたが、しばらく会わぬうちに強くなったものよな)
(私などのことより、どうか究極の予言をお忘れ無きように。
道化師(clown)が冠を抱くもの(crown)に変わり
十三の白きものと黒きものが一つになる刻
切り裂かれた天使が純粋な悪を生み出し
緑の霧を巡る兄の子等と弟の軍団の闘いの
幕が切って落とされる
マーメイドとヴァンパイアの縛めが魔術師によって解かれ
生きるために愛し合うことを求める者たちと
生きるために殺し合うことを求める者たちの
最後の審判が下り
母なる星の希望と絶望が始まる
私は、いつも陰からナオミたちの闘いを見守っております)
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