思念を打ち切った後で、アフロンディーヌは人知れず涙を流した。
いまでも彼への愛を考えると胸が張り裂けそうだった。アストロラーベ様、あなたに運命を伝えることは巫女の立場上、許されない。ですが、神殿を思念のネットワークとして使えることが手助けになれば・・・・・・
自身が神々の一員であり最高位の巫女であるアフロンディーヌが祈るなど、ジョークでしかなかった。それでもアフロンディーヌはアストロラーベに最高神のご加護があるように。さらに、もし神々を作った存在がいたならばその存在が彼を守ってくれるよう祈らずにはおられなかった。
ああ、どうかアストロラーベ様に予言の意味を読み取らせてください。
星へ困難な道を(Ad astra per aspera)・・・・・・
ジェフはエレベータが66階に着いてドアが開くと、664号室に向かって駆けだした。フロア全体がマクミラとダニエルのためのフロアになっており、661号室がマクミラのオフィスで、662号室が不老不死研究を行うゾンビ—ランドから上がってきた資料を整理する部屋、663号室が軍事研究を行うノーマンズランドから上がってきた資料を整理する部屋、664号室が精神世界研究を行うナイトメアランドから上がってきた資料を整理する部屋、665号室が魔術と神話研究を行うアポロノミカンランドから上がってきた資料を整理する部屋、666号室にはマクミラとダニエルの棺が置かれていた。
ジェフが言葉をかける時間さえもどかしく棺の蓋に飛びつこうとした。
その時。棺の蓋が持ち上がり、セラフィム(織天使)だけが持つ6枚の羽を広げて宙に浮かび上がった。その姿は、精神世界で闘った時の右半身が金色の鷲ペルセリアスに戻り、左半身が暗黒の墮天使のままであった。
「屋上の波動で目が覚めた。あれだけの大騒ぎしたら不能の天使だって目を覚ます。だが、眠っていた間も意識がなかったわけじゃない。ずっと考えていた。マクミラの美しさは、過去、現在、そして未来にもトラブルの種だ。おまけにあの気の強さ。そんなあいつを誰が守ってやれる? 大分、時間を無駄にして悪かった。さあ、マクミラを助けに行くぞ」
「ダニエル、大丈夫か?」
「心配するなと言いたいが、織天使、堕天使、ヴァンパイアの力が混ざって、身体の中で殴り合いの大喧嘩をしている。あとどれだけ正気を維持できるか、自分でも分からない」
「こっちもムリするなと言ってやりたいが、マクミラ様がトリックスターに呑み込まれた。アストロラーベ様が、今、闘ってくれている」
「超特急で行くぜ!」もしもトム・クルーズが見ていたならば、次の『ミッション・インポッシブル』で使いたくなるような場面だった。
ジェフを小脇に抱えると、ダニエルは窓を破ってタワーの外に飛び出した。一瞬急降下した後、急上昇で二人が屋上に向かっていく。
マクミラよ、待ってろよ。命に代えても救ってやる。そうつぶやくダニエルは、本当に自分の命がかかっているとは夢にも思っていなかった。
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