「ナンシー・・・・・・」
「大丈夫。要件に入りましょう。こんなものがキャンパスで配られていたの」
青ざめた顔のマウスピークスがビラの下の方を指して言った。
ビラはKKK団が講演会の宣伝に作ったものらしかった。そこには、「アポロノミカンからの予言」という文字と共に
・・・・・・こころざしをおなじゅうする者
南風の地につどいて戦いの宴に身をささげよ
十字架の戦士たちと競う瞬間
炎がすべてを包み
死への旅路が終わりをつげ
始まりの旅が幕を切って落とされる・・・・・・
と書かれていた。
「何でしょう、このアポロノミカンって?」
「ナオミ、とうとう話さなければいけない時が来たわ。アポロノミカン・・・・・・」
アポロノミカン、ナオミはどこかで聞いたような気がした。
そうしてマウスピークスの話が始まった。
わたしが大学二年生のことよ。
わたしにも若かった時があるのは驚きかしら?
今では針でつついたら破裂してしまいそうなほど太ってしまったけど、その頃はきれいだったのよと言ったらもっと驚くかしら。わたしだって人並みに恋をしたし男の子にはけっこう持てたのよ。
ゴメンナサイ。関係ないように思うかもしれないけど、どうしても話はここから始まるの。当時の彼は大学の二年先輩でオランダ人と日本人の混血でエキゾチックな雰囲気を持っていたわ。校内でも知らない女の子がいないくらいのハンサムだったわ。そんな彼を持ってわたしは自慢だったし有頂天になっていたの。
ある日、仲のいい友人から彼が別の人と歩いていたと聞かされたわ。確かめようとすると、そんなことあるわけじゃないかって否定されたし、もちろん彼を信じたわ。そのうち、別の友人たちからも同じことを聞かされるようになってそのたびに確かめては同じようにはぐらかされる繰り返し。
そしてとうとう、わたしよりずっと美しい人とキャンパスを歩いているのを見てしまったわ。彼にそのことを尋ねると僕が信じられないのって言われたわ。そんなこと言われたら女の子なんて誰でもそれ以上何も言えなくなってしまうでしょう。
結局、だまされていたことがわかって、しばらくふさぎ込んで部屋から一歩も出ない日が、二週間くらい続いたかしら。
振られたことはしかたがないという気持ちだったわ。釣り合いが取れない彼と付き合っている間、いつダメになるだろうという不安でいっぱいだったから、正直言うと来るべき時が来たときはホッとした部分もあったの。
つらかったのは彼がわたしに嘘をついたこと。
なぜ正直にもっと好きな人ができたと言ってくれなかったのか。
僕が信じられないのって言いながら嘘をつかれたのは一生のトラウマよ。
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