(他人よりも自分のことを心配しろ。チャンスは一度切りだ。バレンタインデーのニューヨーク中の冷気を集めるから、ミックスト・ブレッシングをかましてくれ)
(簡単に言ってくれるな。まあいい、マクミラを救うためだ。異存はない)
(頼んだぞ! 将軍殿の本体はガイコツだから問題ないが、マクミラはあまり長い時間冷気に耐えられない)
(了解だ! かますタイミングはどうする?)
(フッ)アストロラーベが不敵に微笑んだ。(さかさまジョージが凍り付いたところで頼む)アストロラーベは、よたりながらかろうじて呪文を唱える用意を整えた。
まったく軍師ともあろうものが、この姿。とうてい部下達には見せられんな。このままでは、我も呪文さえ唱えられなくなるまで長いことはない。フフフ、そんなことになったらアフロンディーヌに笑われるわ。
地上の精霊たちよ
我が呼びかけの刻は来たり
とらわれの身のスカルラーベとマクミラを救う手助けをするがよい
さすれば必ずや冥主のご加護を賜るであろう
獲物を求める青き炎の3つ首ドラゴンよ
我が呼びかけに答える刻は来たり
燃える2つの首を輪廻の大蛇の首に絡みつかせるがよい
バレンタイン・ナイトの冷気が獲物の血潮の熱を奪う刻
残った首は輪廻の蛇の輪廻を断ち切るがよい
ウロボロスは新たな輪廻の蛇となるがよい
そしてコールド・デー・イン・ヘルが訪れる
アストロラーベの呪文を聞いて、さかさまジョージ中で取り込まれたはずの青き炎の3首ドラゴンがスカルラーベから分離して叫び声を上げた。前もってかけておいた魔術なら、ヒエラポリス神殿の前でも効果を発揮できるのだ。
獅子身中の虫ならぬ大蛇身中の虫となった3首ドラゴンは、さかさまジョージの腹を食い破り外に飛び出した。2つの首は、輪廻の蛇の各々の首に絡みついた。たちまち輪廻の蛇2匹の血潮が沸き立った。体内の血潮が蒸発し始め、気化熱が発生した。気化熱は液体が気体になる時に周囲から吸収する熱であり、液体が接しているものから熱を奪う。
「ケッケッケッ、これで攻撃したつもり? まったく効いてないんだけど」だが、この攻撃は注意をそぐためのものだった。3番目のドラゴンの首が隙をついてさかさまジョージの腹を切り裂くと、中からマクミラ、スカルラーベ、そしてアストロラーベが飛び出してきた。
ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!
にほんブログ村