深夜のタワーの周りにはビル風が吹いて凍えるほどだったが、それがダニエルには幸いした。市街地では、通常、風は建物の高さの0.2~0.25乗に比例する。例えば、地上1メートルでの高さの風速を1とすると、高さ100mでは2.5~3.1程度となる。高層建築ほど受ける風のエネルギーは大きくなり、その結果、強いビル風を発生させる。ビル風に乗ってダニエルは一気に屋上に達した。
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一瞬にして,状況を把握したダニエルは急襲を決心した。天使の羽は猛禽類の羽。当然、足の指には鋭い爪が生えている。さかさまジョージは、アストロラーベを呑み込んで有頂天になっていた。
イケる! そう思ったダニエルだったが、真横から大蛇の尻尾が富んできた。
「ケッケッケッ、だてに蛇の目は横についてないんだ。こっそり近づこうったってダメ、ダメ、ダメ」実際、爬虫類は両眼視野が狭いために周りをよく見るには首を回さなくてはならない。だが、顔の横に目がついている蛇は前方視野こそ20〜46度と狭いが、爬虫類の中では最も広い単眼視野を持っている。
屋上の外まではじき出されたダニエルだが、6枚の翼を全力で羽ばたいて体制を整える。今度はゆっくりと着地すると、ジェフを下ろす。「大丈夫か?」
「だ、大丈夫でございます。それより早くマクミラ様をお救いください」
さて、どうするか? トリックスターとなったさかさまジョージには小細工は通用しない。おそらく俺がミックスト・ブレッシングを出せるのは一回切りだろう。それ以上はなさけない話だが、もう身体が持たない気がする・・・・・・
その時、アストロラーベからテレパシーが伝わってきた。
(ペリセリアスよ、我の思念が分かるか?)
(その名はもう忘れた。今は堕天使ダニエルと呼んでくれ。なぜお前は人間界で肉を持つ存在になっても、思念を使えるんだ?)
(さかさまジョージの腹の中には冥界から来たものの力を封じるヒエラポリス神殿があった。呑み込まれた将軍殿とマクミラは見つけたが、二人ともすでに死んだようになって眠っている。我も本来ならここでは力を使えないが、神殿をサーバー代わりにお前に思念を送ってる)
(最近はやりだしたインターネットみたいなもんか?)
(我はまだ使ったことがないが、たぶんそうだ。それより万が一に備えて我は地上の精霊たちの力を借りてコールド・デー・イン・ヘルが使えるようあらかじめ魔術を用意しておいた)
(さすが冥界一のネクロマンサーだな。だが、大丈夫か? そんな名前の魔術)
*コールド・デー・イン・ヘル(cold day in hell)は、英語では「業火であふれた地獄が冷える日」が転じて、ありえないことの意。
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