1995年9月4日、ナオミの22才の誕生日。
ナオミは、ディベート部室で山のようになった資料を整理し切り貼りしてはトーナメント用ブリーフシートを何時間も作っていた。何日も徹夜を続けていたため、仮眠を取ることにした。
ディベート部のカウチに倒れ込むと、ナオミはすぐ眠りについた。
「ナオミ、寝てる場合じゃないわ。起きて!」
「誰? せっかく気持ちよく寝てたのに・・・・・・え~!」
そこにいたのは、ナオミの育ての母、夏海だった。
「ニューヨークでダンサーになったはずじゃ?」
「わたしだけじゃないわ。ほら!」
指差す方向には、3人のベリーダンサーたちがいた。
一人目は、今は亡きアラビア王の血筋を引くシェラザード。二人目は、ロシア王朝の末裔であるユリア。三人目は、ベリーダンスを生み出したと言われるジプシーの長の娘ザムザ。
「なんかイヤ〜な予感がするんですけど・・・・・・」
「やっぱり」夏海がニヤリと笑った。
シェラザードがクルリと回転すると、「酔わすもの」蛇姫ライムに変身した。ユリアがクルリと回転すると、「いたぶるもの」両性具有の氷天使メギリヌに変身した。ザムザがクルリと回転すると、「悩ますもの」で唄姫リギスに変身した。
「あれ、夏海は変身しないの?」
「『爆破するもの』悪魔姫ドルガが死んだことは、知ってるでしょ。そんなことより、あなたにトラブルが迫っているの。とんでもないトラブルが」
「どうせ、わたしはトラブルに引き寄せられるマーメイド」
「開き直らないの。あせらずに待つのよ・・・・・・まだ、どんな巨大な敵が待っているかは、教えられないわ。だけど誕生日祝いに、少しだけ教えてあげるわ。ライム、メギリヌ、ザムザと私があなたを助けてあげられるかも知れない」
「でも夏海は・・・・・・」
「ただの人間だと言いたいわけ?」
「・・・・・・」
ナオミが返答に困っていると、ケイティの声が聞こえた。
ナオミ、起きて! ん、夢だったんだ
サプラーイズ! 大声に目を覚ますと、聖ローレンス大学ディベート部員たちとナンシーが目の前にいた。
「ごめんなさい。いつもあなたの誕生日と北アイオワ大学大会の準備が重なってしまって。でも今年は4年生で最後のシーズンだからってケイティが誕生日祝いを企画したのよ」
「さあ、ケーキを吹き消して。願いを込めることを忘れちゃダメよ(Don't forget to make your wish!)」
ナオミは、大事なことを夢の最後に考えた気がしたが、思い出せなかった。
まっ、いっか! 何を願おう?
そうだ。次こそ、最高の闘いを(Let me fight the best bout next time!)。
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