娘、
「この間、料理してたら
手を切って。
絆創膏なくて困った〜。
原始的な処置を
したわ」
原始的な処置を具体的には
尋ねなかったが、
一人暮らしを始めると
意外なものがなくて、
困ることも多いんやね。
一人暮らしの部屋に戻る娘の荷物の中に
カワイイ袋に入れ
ラッピングをした絆創膏を
そっと入れておいた。
すごく喜んでいた。
娘、
「今日は外国語の試験や。
嫌やな〜(笑)」と言いながら、
笑顔で元気に
部屋に戻って行った。
家の中が
しゅんとした。
たくさんのお喋りをしていても、
充実しているのが
よくよくわかるよ。
あんなに生き生きと
戻って行ったんやもんな。
でもね、
お母さんは
バスタオルをたたんでいると、
涙が出てきてね。
この娘は、
将来はこの家に戻って来ないね。
いろいろと話したなら
よくよく伝わったよ。
そう、
大きな「卒業」が待っているのね。
こんなんで、
メソメソしていて、どうすんの。
急に帰ってきたから
枕もお布団も干さなくて。
気がつかなかったね。
今度帰ってくる時は
フカフカにしておくからね。
いつでも、
帰っておいで。
ほら、
ワンコもあんなに大喜びしてたよ。
帰ってきた娘にと
ワンコと買ってきた
桜の
つぼみが
ほら、みんな咲いたよね。