◇「戦争法案反対」へ行動 若者、関心持ってほしい 仲尾宏さん(78)=大津市
国論を二分する安全保障関連法案。政府・与党が成立を急ぐ一方で、国会での慎重審議や廃案を求める意思表示が県内でも相次いでいる。昨年発足した 「戦争をさせない1000人委員会・しが」の代表運営委員で京都造形芸術大客員教授の仲尾宏さん(78)に、委員会の活動や法案を巡る動きを聞いた。【北 出昭】
◆1000人委員会について教えてください。
安倍晋三首相内閣による集団的自衛権行使容認の動きに危機感を持ったノーベル賞作家の大江健三郎さんらが、平和に生きる権利を守る運動を始めよう と呼びかけ、昨年3月、東京で発足しました。県内で11月に、私や元知事の武村正義さん、牧師らが呼びかけ人となって結成しました。既に「九条の会」とい う護憲団体がありますが、政府が憲法を改正せず、閣議決定で集団的自衛権の行使を容認し、「戦争法案」(安全保障関連法案)を出すと言ってきました。その ため「戦争法案反対」に絞った行動が必要との思いでスタートしました。
◆県内での活動は。
総会結成後、「日本は戦争をするのか」や「リベラルが『多数派』として動くには」をテーマにした講演会のほか、武村さんや民主党の国会議員を迎え ての学習会を開きました。また、5月には若い人が中心になって企画したコンサートも開催しました。高校生バンドも出場し、多くの人が集まりました。今まで の集会では参加しなかったような人たちにも呼びかけることの重要性を感じました。中心メンバーに若い女性も入っていることが「しが」の特徴で、自由な発想 が見られます。
私は、滋賀より取り組みが先行した京都の活動にも関わっていますが、京都では環境問題のグループ、公明党や共産党の関係者などさまざまな垣根を越 えた人たちが集会に参加しています。滋賀でも元自民党の武村さんが呼びかけているように、党派を超えて多くの人に参加してほしいと思います。特に選挙権年 齢が引き下げられたこともあり、若い人に関心を持ってもらいたいですね。
◆政府が今、法案成立を急ぐ理由は何でしょうか。
安倍政権の最終目標は憲法改正です。今、憲法改正の国民投票をしても結果がどうなるか、自民党にも分かりません。だから、いつでもどこでも戦争が できる法律をまず作って、「何をしても無駄だ」というあきらめムードが国民の間に生まれるのを待って、憲法改正を言い出すのでしょう。数の力だけで言え ば、法案は通ります。思い出してほしいのは、60年安保で、安倍首相の祖父、岸信介首相(当時)は多数の国民の反対を押し切って日米安全保障条約改定を強 行採決しました。しかし、全国に広がった反対闘争の結果、辞職に追い込まれ、憲法改正には手が出せなかったということです。今、反対運動がどれだけ盛り上 がるか、大事な山場を迎えています。
◆このような活動に関わってきた原点は何でしょうか。
私はその60年安保世代で当時、学生でした。また、在日韓国・朝鮮人の人権問題に関わったことも大きいです。在日1世の無年金問題など法律の問題 や本名を名乗れない心の問題、民族差別などを生身の人と接することで知りました。現場へ行っていなければ、知ることはなかったことばかりでした。今の若い 人たちは資本主義の行き詰まりで、夢や希望、働く意義、生きる目的を持てなくなっています。貧困と格差社会の今こそ、人権や労働の価値を正当に認める共通 認識を広める必要があります。運動に関わることで理解を深めてほしいと思います。