アメリカのベネズエラ政権転覆のねらいは、デモクラシーではなく石油だ
*転載情報
みなさまへ 松元=パレスチナ連帯・札幌
世界人権宣言が国連で採択されて今日まで、アメリカは国連を利用しながら世界数十か国の国々に対して陰に陽に「レジーム・チェンジ(政権転覆)」を行使して世界大戦に匹敵する死者と難民を生み出してきた。きまって口実は、民主主義、人道支援、人道的介入であった。いま、チャベス後のベネズエラが危ない。日米同盟を隠れ蓑に国民を篭絡し沖縄に犠牲を強い続ける安倍政権は悪の超大国の積極的共犯者だ。拙訳ですが拡散願います。
(2019年2月7日)
アメリカのベネズエラ政権転覆のねらいは、デモクラシーではなく石油だ
2019年1月30日
by Garikai Chenguガリカイ・チェング(松元保昭訳)
グローバル・リサーチ誌
原題:Sanctions of Mass Destruction: America’s War on Venezuela「大量破壊制裁:アメリカのベネズエラに対する戦争」
This article’s URL
https://www.globalresearch.ca/sanctions-mass-destruction-americas-war-venezuela/5666969
/二度の世界大戦以降、人道の罪に対する最悪の犯罪となったアメリカの経済制裁は、かつて人類が使用した核兵器、生物化学兵器のすべてを上回って無垢の人々を殺戮してきた。/
アメリカにとってベネズエラの問題はデモクラシーではなく石油だという事実は、ニュースだけみる歴史に無知な人々を驚かせるだろう。ベネズエラは地球上で世界最大の石油埋蔵量を誇る。
アメリカは、カリブ海、中央アメリカ、南アメリカ世界の戦略的な交点に位置する故にベネズエラ支配を追求する。この国の影響力は、常にこれら三つの地域にまたがって計画的に勢力を伸ばすという注目すべき効果的なやり方であった。
ウゴ・チャベスが就任した最初の瞬間から、アメリカ合州国は、クーデターの未遂、敵対政党への資金援助など制裁を行使することによって、ベネズエラの社会主義運動を転覆させようと試みてきた。結局、これらは非民主的どころかクーデターと何ら変わるものではない。
国連人権理事会の特別報告者アルフレッド・デ・ゼイアスが、つい2,3日前、アメリカが人道に対する罪を犯した可能性があるとして、国際刑事裁判所がベネズエラに対する経済制裁を調査するよう勧告した。
過去5年にわたって、アメリカの経済制裁はベネズエラを大部分の金融市場から締め出した。それは、ベネズエラ現地の石油生産を急落させる原因となった。その結果、ベネズエラはラテンアメリカの歴史で記録されたどの国の生活水準よりも最悪の下落に見舞われた。
アメリカの制裁以前には、ベネズエラ社会主義は年金が拡大され不平等と貧困を相当減退させた。同時期のあいだアメリカでは疑いなく退行であった。チャベス大統領は石油収益の財源を、保健医療、教育、助成金による食糧援助ネットワーク、住宅建設など無料6項目の社会支出の中に集中させた。
アメリカがなぜベネズエラ国民に対して経済戦争を遂行しているか、これを完全に理解するためには、オイルダラー・システムと大量破壊制裁との歴史的関係を分析する必要がある。すなわち、20世紀以前カネの価値は金に縛られていた。銀行がカネを貸すとき彼らは正貨(金)準備にその規模を規制されていた。しかし1971年、米国のリチャード・ニクソン大統領は金本位制から離脱した。ニクソンとサウジアラビアは、石油のために無数の戦争の根本原因となってきた歴史の方向を転換する石油ドル決済合意に達した。このオイルダラー合意のもとで、サウジが石油を売却できた唯一の通貨は米ドルだった。サウジ王国は、その石油利益が米国国庫とアメリカの銀行へ還流することを確実にした。
引き換えに、アメリカはサウジ王家政権に軍事的保護と武器供与を約束した。
これはじっさい偉大なアメリカの何かの始まりだった。20世紀の帝国を確実なものとした石油利権の確保とオイルダラー合意は、世界唯一の超大国としてのアメリカ合州国優位の鍵となった。アメリカの戦争マシーンは、石油確保で実存し資金供与され稼働することとなった。
このオイルダラー・システムを邪魔するどんな国の脅威をも、ワシントンはアメリカ合州国に対する宣戦布告とみなす。
過去20年において、イラク、イラン、リビア、そしてベネズエラ、これらの国は彼らの石油を別の通貨で売るとアメリカを脅かした。その結果、これらの国のすべては米国の制裁による破壊の対象となった。
このオイルダラー・システムは、石油を超えて時間とともに拡がりUSドルはゆっくりと確実に大部分の必需品や商品によって世界貿易の準備通貨となった。23兆ドルという驚異的な借金にもかかわらず、このシステムは唯一の超大国としての支配的立場を維持することをアメリカに許している。
大地に眠る数十億ドルもの価値とともに、世界最大の石油埋蔵国ベネズエラは、たんに豊かであるばかりかその国民は発展途上世界の羨望の的でもあった。
だが、国際金融システムから締め出したアメリカの経済制裁によって、過去5年にわたって60億ドルを要したためこの国は本質的には崩壊している。制裁がなかったなら、その経済を始動するに必要な貸し付けを得るため豊富な資源あるいは正貨準備の80億ドルを担保にベネズエラは容易に回復できたはずである。
*経済制裁に対抗するベネズエラの通貨革命*
ベネズエラ危機の狡猾な姿を完全に理解するためには、経済制裁の起源にさかのぼって理解する必要がある。第二次世界大戦の頂点で、トルーマン大統領は、直後に14万人の人々を殺戮するリトルボーイとファットマンを広島と長崎に投下する命令を下した。瓦礫から現れたその恐ろしい光景は世界中に放映され、空前の憤激を引き起こした。その政治的な反発は、米国の政策決定者に大量破壊のより巧妙な兵器を考案するよう仕向けた。すなわち、経済制裁!
「大量破壊兵器(WMD)」という用語は、1948年に国連によって最初に定義された。「原子爆発兵器、放射性物質兵器、致死性化学生物兵器、原爆あるいは他の兵器に対して破壊効果において匹敵する特性を持つ将来開発されるであろういかなる兵器も」大量破壊兵器とみなす。
*制裁は明らかに21世紀でもっとも残忍な大量破壊兵器である*
2001年に米国政権は、イラクが大量破壊兵器を保有したとわれわれに告げた。イラクはテロ国家だった。イラクはアルカイダと提携した。中身は何もなかった。じっさい、サダムが保有したという唯一の大量破壊兵器なるものは、核でもなんでもなく生物化学兵器だったということをアメリカはすでに知っていた。彼らがこれをあらかじめ知っていたという唯一の理由は、1991年に対イランにサダムが使用するためアメリカがそれらの兵器を売却していたからであった。
米国政権がわれわれに告げなかったのは、サダム・フセインが合州国の強力な同盟国となっていたからだ。イラク国民に制裁を課しサダム政権を転覆させた主な理由は、イラクが石油決済ドルとの関係を断ったという事実だった。
ビル・クリントンの制裁のおかげで、170万人のイラク人が死んだと国連は推計している。うち50万人は子どもたちであった。1996年に、一人のジャーナリストが前米国国務長官マドレーヌ・オルブライトにこれらの国連報告にかんして尋ねた。これらの国連報告書とりわけ子どもたちにかんして、アメリカ外交当局トップ、オルブライトは次のように返答した。「これは難しい選択であって、かつ代償だと思うが、しかしその代償には価値があると思う。」明らかに米国の制裁措置は、国家が認可したジェノサイド以外の何ものでもなかった。
過去5年にわたる制裁は、ベネズエラの一人当たり国民所得が40パーセント低下した原因となった。それはイラクとシリアが武力紛争の絶頂で分断された戦争と同様の衰退である。何百万人ものベネズエラ国民が国外逃亡しなければならなかった。アメリカが難民に懸念を抱くなら、現実に難民を生み出す破滅的な外交政策の推進をトランプは直ちに止めるべきである。チャベスのもとで、ベネズエラは難民歓迎の政策を採っていた。チャベス大統領は、平等な最高所得によってベネズエラをラテンアメリカでもっとも豊かな社会に変
えたのだった。
きびしい制裁さえなければ、その国民を豊かにするため石油資源を使ったゆえに非常に中傷されたもう一人の指導者は、ムアンマル・カダフィである。カダフィ大佐は1967年に、アフリカ最貧国のひとつリビアを引き継いだ。ところが、彼が暗殺されるときには、カダフィはリビアをアフリカでもっとも豊かな国に変えていた。おそらくNATOの眼から見て、カダフィの最大の犯罪は、リビアの石油を無礼にも新たな金で裏打ちされたアフリカ統一通貨で表示して売却し、米ドル決済を止めようと模索していたことだった。じっさい2011年8月、オバマ大統領は、カダフィが金裏付けのアフリカ統一通貨ディナールおよびアフリカ中央銀行設立のために準備していた300億ドルをリビア中央銀行から押収した。
アフリカは世界でもっとも成長しており、アフリカの共通通貨で売却する石油は、米ドル、米国経済、とりわけオイルダラー・システムを担う中枢連中に打撃を与えることになろう。
こうした理由で、クリントン大統領はいまなお悪名高いイラン‐リビア制裁決議に署名したのだった。国連児童基金は、「燃料供給、現金へのアクセス、不可欠な薬品および食糧の補給備蓄など、さまざまな手段への極端な制限」によって広範な被害が民間人に拡がっている原因だと警告した。米国の制裁は、あきらかに大量破壊兵器である。
そんなに昔のことではなく、イラクとリビアは、中東および北アフリカにおける地域最高の生活水準を誇る二大世俗国家であった。今日では、米国の軍事干渉と経済制裁がイラクとリビアを世界で最も凋落した国に変えてしまった。
「彼らはリビアの石油を確保したかったのだ。リビア民衆の命なんぞ心配などしない。」と、2011年の西側のリビア干渉の際にチャベスは語った。2017年9月、マドゥーロ大統領は、石油売却を米ドルではなく中国元に組み入れるというチャベスの約束を果たした。数週間後、トランプはベネズエラ国民に対する一連の過酷な制裁に署名した。今週月曜日に、米国国家安全保障顧問ジョン・ボルトンは、ベネズエラ国営石油会社から非常に重要な70億ドルを強奪する新たな制裁を発表した。メディアの記者会見でボルトンは、ずうずうしくも「コロンビアに5000人の部隊」というボードを見せびらかして、「トランプ大統領はテーブルの上にはあらゆるオプションがあると表明している」と簡単に述べた。
アメリカのメディアは、疑いなくもっとも堕落した組織だ。この国のメディアは、トランプの国内政策についてはあら捜しに努めるかもしれないが、海外で石油のために戦争を起こすとなると、彼らはきまって同調のサインを送る。FOXニュース、CNN、ニューヨークタイムズのすべては、じっさいにアメリカがイラク民衆に対して大量破壊の制裁を行使する最中、ひときわ大量破壊兵器の作り話に包んで、国民をイラク戦争へと駆り立てたのだった。リビアでもそのようにした彼らは、こんどは三度ベネズエラでそれをやっている。自由と民主主義は、西側メディア自身がつねに石油のための資本主義拡大の偽装マシーンと認めている最前線の煙幕となった。経済戦争は、ずっと前からベネズエラに対して進行中であったが、現在、軍事戦争が差し迫っている。
まさにトランプは、ベネズエラに対する米国特別全権大使としてエリオット・エイブラムズを任命した。彼はラテンアメリカで長期にわたる強烈な歴史をもっている。エイブラムズは、アメリカが敵対する共産反乱軍に資金援助で関与したという、レーガン時代最悪のスキャンダルとなったイラン‐コントラ事件について、議会で偽証したという罪を認めた。エイブラムズは、父ジョージ・ブッシュによって特赦された。ベネズエラに対するこのアメリカの先鋒隊長もまた、エルサルバドルにおける米国に訓練された部隊によって引き起こされた近年のラテンアメリカ史上最大規模の大量殺戮についても嘘をついていた。
クーデター以上に非民主的なものはない。国連人権理事会の報告者アルフレッド・デ・ゼイアスは、「ベネズエラにおけるアメリカのねらいは、あらゆるものを民営化して売却するネオリベ政権を引き入れることであり、莫大な利益を獲得するために多くの暫定企業を立ち上げ、合州国はそれらの多国籍企業によって再駆動されることになる。」と、指摘した。
1980年以降、アメリカ合州国は世界最大の債権国から世界最悪の借金国へと着実に転落してきた。だが、オイルダラー・システムという米ドル決済の巨大でグローバルな見せかけの需要のおかげで、アメリカは記録破りの赤字と抑制なしの出費、幾何級数的な軍事拡大を持続することができる。
アメリカ最大の輸出は、アメリカが誇りをもってつくった製造商品だったものだ。今日、アメリカ最大の輸出は米ドルである。ベネズエラのように脅威を受けるどんな国もアメリカの第二の巨大な輸出の要請を受ける。すなわち兵器であり、なかんずく最大のものは大量破壊制裁である。
(翻訳終わり)
Garikai Chengu
は、ハーバード、スタンフォード、コロンビア各大学を経た古代アフリカ史の学者である