米景気後退入り現実味 対中貿易戦争泥沼化、経済専門家に悲観論 (1/2ページ)
泥沼化している米中貿易戦争の影響を受け、米国経済の景気後退(リセッション)入りは避けられないとの悲観的な見方が経済専門家の間に広がっている。現在は景気に中立の立場を取っている連邦準備制度理事会(FRB)が経済立て直しのため年内に利下げを迫られるとのシナリオも浮上し始めた。
NY株大幅下落
貿易問題をめぐる米中両国の対立激化を受け、週明け13日のニューヨーク株式市場では4カ月で最大の売りを浴び、先週1週間分の下げを超える下落率を記録した。
米政権による追加関税第4弾の発表を前にブルームバーグがエコノミスト40人を対象に実施した調査によると、追加関税が発動され、中国による報復措置が取られた場合、米経済は一段と深刻な打撃を受け、リセッション入りする見通しだ。
過半数のエコノミストは、米政権が中国からの全ての輸入品に25%の追加関税を発動すると予測。約8割が、関税の引き上げにより来年末までに米国で景気後退が起こるリスクが高まると答えた。
米国の1~3月期の実質国内総生産(GDP)は成長率が予想以上に加速したが、今後は大型減税の効果が薄れることに加え、世界需要が減少することで米経済は減速すると予想される。リセッションの現実味が増す中、過半数のエコノミストがFRBが利下げに踏み切る可能性があると答えた。
昨年の株式相場下落を最も正確に予想したモルガン・スタンレーのチーフ株式ストラテジスト、マイク・ウィルソン氏は13日の顧客向けリポートで、両国の対立悪化が長期的なリセッションの可能性を高めたと警告。「景気下振れリスクは大幅に高まった。企業決算の利益予想が5~10%高過ぎるとの当社見解から、株式相場は上昇より下落の可能性が高い」と指摘した。
同氏は、トランプ政権が実際に第4弾の追加関税を発動すれば、S&P500指数を構成する企業の最終利益が最大1.5%減少し、企業による投資が鈍ると主張している。
JPモルガン・チェースのクロスアセットファンダメンタル戦略責任者、ジョン・ノーマンド氏も13日、ブルームバーグ・テレビの取材に対し、貿易戦争が一部の主要経済指標を「リセッション水準」にまで悪化させかねないとの見方を示した。株式相場はさらに10%下げる可能性があると指摘した。
消費者物価は上昇
ゴールドマン・サックスのエコノミストらはリポートで、対中関税引き上げにより、米金融当局が重視する基調インフレ指標は押し上げられる見通しであり、貿易摩擦がさらに激化すれば消費者物価は一段と上昇し、米経済成長を抑制しかねないと分析した。
ソシエテ・ジェネラルの米国担当主任エコノミスト、スティーブン・ギャラガー氏は米中の関税報復合戦が今後さらに激化した場合、米国だけでなく世界経済にも打撃を与えると指摘。追加関税第4弾の発動で米経済成長率は0.5ポイント低下する可能性があると試算している。
ピーターソン国際経済研究所のゲイリー・ハフバウアー研究員は第4弾発動により、米国で1世帯当たりの支出が年2000ドル(約22万円)増加すると指摘した。
米経済は、株式相場が強気相場入りした2009年以降、昨年末のような相場の調整局面が他にも5回あったが、リセッションには至らず、好調さを維持してきた。ただ、過去100年間は、株式の弱気相場入りと同時か、株価が急落した後にリセッション入りしている。(ブルームバーグ Shawn Donnan、Elena Popina)