ジェフリー・エプシュタインが8月10日に独房内で「自殺」した。7月23日には「ほぼ意識をなくし」て倒れているところを発見されているが、今回は手遅れ。ニューヨーク・タイムズ紙は午前7時30分頃に首をつった彼の死体が発見されたとしているが、7時30分に病院へ運び込まれるエプシュタインが目撃され、消防署へ心停止の通報があったのは午前6時38分とする証言もある。その前日、裁判所は事件に関する2000ページの文書を公表していた。
エプシュタインが未成年の女性を有力者へ性的な目的で提供していることが明るみに出はじめたのは2005年3月。2008年6月に彼は有罪を認めて懲役18カ月を言い渡されているが、州刑務所ではなく郡の営巣へ入れられ、しかも3カ月半で週に6日間は1日12時間、外へ出ることが許されている。
こうした特別待遇を受けた理由について、事件を地方検事として担当したアレキサンダー・アコスタは、エプシュタインについて「情報機関に所属している」ので放っておけと言われたとしている。なお、アコスタはドナルド・トランプ政権で労働長官を務めていたが、今回の件が浮上すると辞任している。
確かに、エプシュタインの背後には情報機関や治安機関の影がちらつく。例えば、彼の妻だったギスレイン・マクスウェルの父親はミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェル。この人物は1960年代からイスラエルの情報機関であるモサドのエージェントだったとも言われている。このロバートは1991年11月、カナリア諸島沖で死体となって発見された。
エプシュタインが運営していた小児性愛のネットワークは有力者へのサービスであると同時に、有力者を脅す材料を集める目的があった。顧客の様子は全て音声や映像で記録されていたと言われている。
そうした顧客のリストをエプシュタインの自宅から2009年に持ち出した人物がいる。その人物によると、リストは「小児性愛ネットワーク」を解き明かすものだという。
今回は厳しい処罰が予想されていたエプシュタインは有罪を認めず、そのリストを反撃の材料に使おうとしていたと言われている。すでに不適切な行為を強制されたと主張している女性から何人かの有力者の名前が明らかにされているが、エプシュタインが全体像を口にしたなら、アメリカやイギリスのエリートはパニックに陥る可能性がある。そうした顧客の中に日本人や中国人が含まれていても驚かない。
本ブログではすでに書いたことだが、小児性愛の問題はイラクを先制攻撃したアメリカ主導軍にも波及する。占領地ではそうしたことが行われていたというのだ。そうした事実を隠蔽、あるいは自身も参加していたひとりだと噂されたいるのがデイビッド・ペトレイアス。その当時、彼は第101空挺師団の司令官だった。
これも本ブログで紹介済みだが、エプシュタインの恐喝人脈はドナルド・トランプの顧問弁護士を務め、ジョセフ・マッカーシー上院議員の顧問で、FBIの長官だったJ・エドガー・フーバと関係するロイ・コーン、そのコーンを親しくしていた密造酒業者で後に大手酒造メーカーを経営するルイス・ローゼンスティール、その同業者だったサミュエル・ブロンフマンというように続いていく。この人脈は犯罪組織やCIAともつながる。
また、ローゼンシュタインに対し、アメリカで酒の販売が合法になる準備をするよう、1922年にアドバイスしたのがウィンストン・チャーチルだとされている。
エプシュタインの「自殺」で胸をなで下ろしたエリートは少なくないだろう。
森友学園への国有地売却をめぐる背任や決裁文書改竄の問題で改竄を指示した佐川宣寿前国税庁長官を含む財務省関係者全員を不起訴にした大阪地検の決定を大阪第一検察審査会は不当だと判断し、それを受けて検察側は再捜査していたが、再び不起訴にした。この件で文書の300カ所以上が改竄されていたのだが、そうした行為は起訴するに値しないと日本の検察は考えているわけだ。
元検事の郷原信郎は、「今回の『書き換え』は基本的に『一部記述の削除』に過ぎず、一部の文言や交渉経緯等が削除されたことによって、国有地売却に関する決裁文書が、事実に反する内容の文書になったと認められなければ『虚偽公文書の作成』とは言えないとの理由で、虚偽公文書作成罪で起訴される可能性は高くない」としていた。(「財務省決裁文書改ざんが起訴できない“本当の理由”」郷原信郎が斬る、2018年6月4日)
「一部の文言や交渉経緯等」の「一部」がどの程度まで許されるのかは微妙な話で、「忖度」の対象になる。
郷原は陸山会事件における虚偽捜査報告書の作成で最高検察庁は虚偽有印公文書作成罪で告発されていた当時の検事と特捜部長を不起訴にしていることも指摘している。
その検事は懲戒処分を受けて辞職したが、特捜部長だった佐久間達哉は前橋地検検事正、千葉地検検事正、そして2016年には法務総合研究所の所長に就任している。また、この事件を不起訴にした当時の最高検主任検事の長谷川充弘は広島高検検事長を務めた後、証券取引等監視委員会の委員長のポストに就いた。
こうしたことをしてきた検察が財務省の関係者を起訴できないだろうと郷原は見ていたのだが、その通りの展開になった。
決裁文書改竄の件を「なかったことにする」ことは検察当局が最初から決めていたことで、そのため近畿財務局を家宅捜索することもなかったと言われている。この決定をした人物として指摘されているのは法務省の事務次官だった黒川弘務だという。
背任で近畿財務局の担当職員を起訴するためには「自己や第三者の利益を図る目的で損害を与えた」ことを立証する必要があり、それができなければ背任容疑で刑事責任を追及できないとも郷原は指摘、不起訴を正当化するために検察は森友学園の前理事長とその妻を悪者にし、近畿財務局を被害者であるというイメージを作ろうとしていると推測していた。
検察は裁判所や警察と同じように支配体制を維持するための組織である。その支配体制とは天皇制官僚システムだが、それをコントロールしているのはアメリカの支配者たちだ。
以前にも本ブログで書いたことだが、それを象徴する出来事が田中角栄のケース。第2次世界大戦後、日本で最も大きな力を持っていた政治家は田中だろうが、その田中はロッキード事件で葬り去られている。
おそらく最初に田中角栄逮捕が決まったと書いたのはアメリカのニューズレター。そこに掲載された記事を見た某ジャーナリストが田中にその事実を知らせた際、警察も検察もおさえているので大丈夫だと本人から言われたという。が、実際は逮捕された。
一方、本当のロッキード事件は軍用機に絡むもので、その最重要容疑者は別の政治家だとする見方がある。警察はその政治家の逮捕令状をとっていたのだが、重要証人が急死したので逮捕は見送られたとする話が警視庁の内部から漏れていた。
山口敬之元TBSワシントン支局長と親しいという安倍晋三首相の周辺からは、さまざまなスキャンダルの存在が伝えられているが、摘発されていない。そうしたスキャンダルを具体的に指摘している人物もいる。
山口のケースでは高輪署が山口の逮捕状を取り、2015年6月8日に成田空港でアメリカから帰国する山口を逮捕する手はずになっていたのだが、デイリー新潮によると、担当の警部補とその上司を含めた複数の警察官が成田空港で被疑者となる人物を逮捕すべく待ち構えていたところ、上層部から「山口逮捕は取りやめ!」と命令された。
この件に関して取材していた週刊新潮に対し、警視庁刑事部長だった中村格は山口を逮捕する必要なしと「私が判断した」と語ったという。中村は2012年12月から菅義偉内閣官房長官の秘書官を務めた人物だが、山口を守った勢力は太平洋の向こう側にいるのではないだろうか。その海の向こう側ではジェフリー・エプシュタインのスキャンダルが摘発され、長年にわたる恐喝政治の実態も語られている。日本の宗主国では権力の腐敗が限界に近づいているのだろう。