亡き次男に捧げる冒険小説です。
二五
暫く三人は声をひそめ、背中を丸めて森を見渡していた。30分ほどしても何も起こらなかったので、《サンダー渓谷》を発つことにした。
だがその前にテーリの所持品を見つけなければならない。いくら記憶がないといっても、テーリがここまで全裸で来られたわけがない。周囲を捜索すると、テーリが潜っていた澱み近くの河原に荷物が積まれているのを発見した。近くにはきちんと畳まれた衣服や鎧があった。サイズはテーリにぴったり。やはり自分の足でここまで来て、自分の意思で服を脱いで川に潜ったのだ。
テーリの直近の足取りと荷物を回収した三人は、《サンダー渓谷》からの脱出を試みた。《野伏せり》だったテーリはすぐに獣道を見つけると、そこから渓谷を登る山道に辿りつき、ものの20分で《ゴール橋》の出口側に出ることができた。
真夏の夕刻、日が長くまだ人通りも多い。テーリのお師匠様が住む《魔法都市》は大マータの中央部に位置する。《魔法都市》を訪ねるには、西に向かわなければならない。三人は少しでも早く先に進もうと、《ゴール橋》の出口から一番近い宿場町に向けて早足で歩き始めた。
【第1話 二六に続く】
次回更新 令和7年1月10日金曜日
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