Hyperionからアンジェラ・ヒューイットのDVD「バッハ・パフォーマンス・オン・ザ・ピアノ」(DVDA 68001)が出たので、早速取り寄せてチビチビと見てみました。以前まで、バッハのピアノ演奏はグールドが一番と、洗脳されていたのですが、最近、ヒューイットによるバッハ作品を聞き続けていると、グールドより魅力的では、と感じてきていた所でしたので、私にとっては非常にタイムリーこのDVDが発売されたので、すぐに取り寄せてみました。
DISC1でのレクチャーを聴いて、ヒューイットの魅力が何処から来ていたのかが、理論的に手に取るように解り、“なるほど”といった感じです。専門的な用語も多く、十分に理解出来ないところもあるのですが、非常に勉強になります。このレクチャーの中で、“バッハのピアノ演奏をノンレガートに音を切って演奏するのであれば、チェンバロで弾けばいいのであって、ピアノはチェンバロより豊かな表現が可能な楽器であり、そのような演奏法に拘らず、各声部が聴き手によく聞き取れるような工夫が必要である....”との趣旨の発言があり、グールドの演奏に対する批判とも取れなくはないところがあり、特に印象に残りました。
イタリア協奏曲の演奏を、ヒューイットとグールドで聴き比べると違いが良く分かるように思います。グールドの演奏はもちろん神業的で最高ですが、ヒューイットの演奏の方が不思議に魅力的に感じます。特に第2楽章(緩徐楽章)を飽きささずに魅力的に弾くにはかなりの技術を要するのではと思われますが、ヒューイットの演奏は今までのピアノによる演奏の中では最高と思います。この2人の演奏の違いが、このDVDを見て少しは解ったように思います。
最近、ブランデンブルク協奏曲また聞きたくなり、-その3-になってしまいました。このCDは、以前に買っていた、サイトウ・キネン・チェンバープレイヤーズ(音楽監督:ワルター・ファン・ハウヴェ)による演奏の「J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲(全曲)」(KINNG:KICC 379-80)(録音:2001年9月3、4、5日、松本ザ・ハーモニーホール)です。
最初に聞いたときに、あまり特別にいい印象がなかったため、ちょっと聞き流しただけて、棚にしまっておいたのですが、今回、改めて聞き直してみると、結構良いと思いました。超高級なペルシャ製の絨毯の複雑な紋様の折り目を見たり触ったりしているような雰囲気で、各演奏者のレベルも高く、音の響きも繊細で、空間の広がりも感じます。このCDが発売された時、確かレコ芸の評価は今一で、特選には選ばれていなかったと記憶しているのですが...。このブランデンブルク協奏曲は指揮者なしで演奏することが多いのですが、このサイトウ・キネンも指揮者なしの演奏で、このことが今回の演奏に躍動感が少し欠け、全体の一体感の乏しいのでは....というような内容の記載があったように思います。バッハの室内楽のような小編成の楽曲に指揮者が必要かどうかは私には良く分からないのですが、合同練習を頻回に行い、お互いの個性を熟知しないと、指揮者がいない場合、お互いに息を合わせることに神経を使いすぎて生き生きとした演奏が出来ないのではと想像しています。解説書を見ますと、各メンバーは皆さん凄いプロフィールの持ち主で、非常に素晴らしい演奏ですが、欲を言えば、もう少し楽しさや躍動感があれば完璧ではないかと勝手に考えてます。
昨日は、日曜日にもかかわらず、終日8時間ぶっ続けでの講習会でお尻も痛く、クタクタで、その上、今日もそれなりにハードな日でした。ふーっ。
最近、スティーブン・イッサーリス演奏の「無伴奏チェロ組曲」(Hyperion CDA 67541/2)を聞いてから、以前から聞きたかって買いそびれていた、堤 剛さん演奏の「バッハ:無伴奏チェロ組曲全集」(SONY:SICC 756-7)(録音:1990~1991年)を買って聞いてみました。聞き始めた瞬間に、理屈抜きに“いい!”と思いました。今までの外人さんの演奏に比べて、音が明確で、メロディーも謳うようで、とにかく聞きやすいと思いました。一言で言えば、≪和の無伴奏チェロ≫でしょうか。抵抗無く、自然な演奏で、肩に力が入っていなくて、敷居も高くないような....、そんな感じです。片山杜秀さんの解説に、「斎藤とフォイアマンとピアティゴルスキーとシュタルケルを、日本的に円満に、和の心でもって、なだらかにつなぐ。それが堤のチェロなのだと思う。」と書いてありましたが、日本人にとって最も聞きやすく、分かりやすい無伴奏チェロ組曲のように思います。
年度末に向けて、益々忙しくなり、来週はピークに達しそうです。そろそろパーワー切れになりそうな.....、感じです。
最近、バッハの弦楽器による作品を聞いている時間が多いのですが、今回はヴァイオリン・ソナタ集を紹介します。左のCDは「バッハ:ヴァイオリン・ソナタ BWV1014-1019」(ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン、ピアノ:エンリコ・バーチェ)(録音:2006年11月)(SONY:SICC 766~7)で、クライスラーが所有していたという1711年製ストラディヴァリウスでの演奏です。解説書(ハンス=クラウス・ユングハインリッヒ、訳:渡辺 正)によると、このヴァイオリンとピアノ(鍵盤楽器)のためのソナタ(BWV1014-1019)は、1725年頃にライプツッヒで作曲され、同市内のツィンマーマンのコーヒー店で開催されていた音楽団体「コレギウム・ムジクム」の定期演奏会において、バッハ自身も参加して演奏したと考えられているようです。これらの6つのソナタは、形式的にはコレルリが確立した教会ソナタを手本にしており、第6番以外は、“緩-急-緩-急”という4楽章で構成されています。
このヴァイオリン・ソナタ集は以前は少し地味なイメージがあり、少し敬遠気味でしたが、このツィンマーマンの演奏を聴いて、この曲集のイメージが大きく変わりました。冒頭の第1番ロ短調のアダージョの出だしから感動的で、薄暗い、奥深い森の中にあるお伽噺に出てくるような神秘の世界にゆっくりと分け入って行くような感じがしました。過去の誰の演奏とも違う、現代風のイメージがあり、バッハの宗教的な厳かな雰囲気と、ダイナミックで躍動的な演奏がうまく絡み合っています。特にピアノの演奏が深い!(自分でも意味不明ですが....)と感じました。SONYレーベルの録音は、ペライアの頃から何となくピアノの音がぼやけてシャープでなく、空間での音の反響がボヤッと、モヤッとしていて、好みの問題でもあるとは思いますが、グールドのCD以外はあまり好きにはなれなかったのですが、このCDに関してはこの特徴によって、うまくピアノとヴァイオリンの音色と絡み合って、独特な素晴らしい録音となっているように思います。グールドのこの曲集をもう一度聞き直してみたいと思いました。
右のCDは「J.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ集(全11曲)BWV1014-1023」(ヴァイオリン:アルテュール・グリュミュオー)(録音:1978年、1980年)(PHILIPS:UCCP3367/8)です。凄く凛とした演奏で、頭の中にそよ風が流れるような演奏です。全11曲収録されていて、第6番の異稿も録音されています。
この2つのCDは、ピアノとチェンバロの違いもあり、雰囲気もかなり違いますが、どちらもこの曲集の真髄をとらえた名盤と思います。
年度末でかなり忙しい日々が続いています。昼間は暖かくなり、暖房が暑く感じるようになってきました。バッハの音楽はBGMとして仕事をしながら聞いていますが、なかなか集中して聞く時間がありませんでしたが、最近、やっとnew CDをゲットしました。CHANNEL CLASSICSから出ている「COMPLETE SONATA & PARTITAS FOR VIOLIN SOLO(無伴奏バイオリンソナタ、パルティータ全曲)」(CCS SEL 2498)(演奏:Rachel Podger、baroque violon)(2002年)です。落ち着いた演奏で、空間の広がり、奥行きを感じます。過去の巨匠のような、個性的な演奏ではありませんが、一挙に全曲聴ける、非常に心地よい落ち着いた演奏のように思います。不思議とストレスなく自然に心の中に音が染み入ってくる感じです。解説書によると、彼女は現在、“Professor of Baroque Violin at The Guildhall School of Music and Drama in London and Visiting Professir of Baroque Violin at the Hochschule in Bremen”という素晴らしい役職のようです。
「2つのバイオリンのための協奏曲」は、バッハの器楽曲の中でも最高レベルの作品と思います。クラッシク史上で、全てのバイオリン協奏曲の中でも最も好きな作品です。神技的な作品です。バッハがチェンバロやオルガンと同様にバイオリンの演奏も非常に優れていたことは良く知られていますが、このことがバッハのバイオリン曲以外の音楽の作曲にも大きな影響を与えているように思います。
バイオリン協奏曲には過去の巨匠による多くのCDがありますが、私が最初にCDで聞いたのは、イツァーク・パールマンによる演奏と記憶しています(EMI:TOCE-7050)(イギリス室内管弦楽団/指揮:ダニエル・バレンボイム)(録音:1971-1982年)(真中のCD)。パールマンは1948年7月16日、イスラエルのテル・アヴィブの生まれで、彼の柔らかで、しなやかな、伸びのある音色は、誰が聞いても美しく感じるのではないでしょうか。
最近は、ヒラリー・ハーンによる「ヴァイオリン協奏曲集」(UCCG:1161)(ジェフリー・カヘイン指揮、ロサンゼルス室内管弦楽団)(録音:2002年、2003年)が特に気に入っています(左のCD)。パールマンのCDと全く同じ曲で構成されています。パールマンの正統的な演奏と比べて、彼女の演奏は、エネルギッシュで、スピードも速く、とにかく楽しいです。彼女はライナーノート(訳:木村博江)で、「このアルバムを聞きながら、みなさんもゆっくりした楽章では旋律を口ずさみ、速い楽章では爪先で床を鳴らし、曲に合わせて踊っていただけたら(もちろん自分の家で、ですが)、幸いです。どうぞ、私たちとご一緒に! きっとバッハも喜ぶと思います。」と書いています。まさしく、この通りだと思いました。ちょっと元気を出したいときや気分転換したいときには、このCDを聞きます。彼女の演奏を聞く度に、バッハの音楽は、本当は楽しい、心躍る音楽なんだなあ、と改めて思います。
これと対照的な演奏が、カール・スズケの演奏による「ヴァイオリン協奏曲集」(KICC:9476)(ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団)(録音:1977年、1978年)です(右のCD)。ドイツ・シャルプラッテン・リマスタリング・プロジェクトの1つです。解説書の中で、プロデューサーの清勝也さんは、「独奏のカール・スズケさんは、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスターを務めた人です。いつも同じ息をして同じフレージングで音楽を演っている同じ楽団員がコンチェルトを演る、というのはいちばん素晴らしいことなんだ、とスズケさんで強烈に感じたんです。一騎打ちみたいな演奏も素晴らしいけれど、自然発生的な和やかさが、ですね。」と書いています。でも。あまり魅力的な演奏には感じられないのですが...どうでしょう.....。
それにしても、バッハのバイオリン協奏曲は何回聞いても、≪凄い≫の一言です。
BRILLIANTから「バリトン・サックスフォーンによるチェロ組曲」(93637)が出ていたので、聞いてみました。Henk van Twillertという人の演奏です。ジャケットの雰囲気が怪しげだったので、どうしようかと迷っていたのですが、安かったので買いました。チェロ組曲は、以前にも他の楽器で演奏したものがありましたが、このCDは非常に聞きやすく感じました。本来のチェロの演奏は確かに重厚ですが、一見、同じようなリズム、旋律が長時間続く為、やはり全曲を一度に聴くには気合が入ります。このサックスフォーンによる演奏は、音がクリアで、この曲の全体像がつかみやすいように思います。また、ずっと聞いていても不思議とあまり退屈な雰囲気にならず、最後までさりげなく、自然に聞けます。チェロ組曲は一度、他の楽器での演奏を聴いてから、本来のチェロでの演奏を聞きなおすと、もっと理解が深まるように思いました。バイオリンやチェンバロで編曲して弾くとどんな感じになるのかとふと興味が沸きました。
モテットの雰囲気は何とも言えないですね。如何にも天空から降臨してきたような、深遠で、厳かで、重厚で、神秘的な音の響き、和声には、どのモテットを聞いても引き込まれます。このCDはピーター・ダイクストラ指揮、オランダ室内合唱団の「バッハ 6つのモテット」(CHANNEL CLASSICS:CCSSA 27108)です。録音も良くて、思わず何回も聞いてしまいました。ここ数日はこのCDを集中的に聞いていました。それと、このCDジャケットの紫がかった濃紺の色彩が非常に印象的で、この深海のような青紫色のイメージとモテットの雰囲気も非常に合っていて、とても気に入っています(ジャケットにうっすらとバッハの肖像画が見えるのもいいです)。いつも思うのですが、CDの装丁もコレクションする人にとっては重要ですよね。いいジャケットの音楽は、何となくまた手にとってまた聴きたくなる気分になります。
大分、暖かくなってきましたが、朝晩まだ寒いです。明日は筑波大学へ初めての出張です。天気がいい日でありますようにっ。
以前から、バッハの息子たちの音楽を体系的に聴きたいと思っていたのですが、なかなか全集とかが出ないし、忙しくて書籍を紐解く暇も無く、知識もないまま今日まで来ています。CPEバッハの作品は結構、散発的に発売されているようですし、以前にもhyperionからカンタータも沢山出ていたように記憶しているのですが、その時はさほどに興味が無くあまり買っていなくて、今になって後悔しています。その他の息子たちのCDはbrilliant以外はほとんど持っていません。
先日、お店で「W.F.バッハ・鍵盤作品集 第1集」(NAXOS:8.557966)(フォルテピアノ:ロバート・ヒル)(2005年9月録音)を見つけて買ってみました。思わずニンマリです。第1集ということは、これから続けてドンドンと続巻が出そうな雰囲気なので、何集まで出るのか楽しみです。大バッハが息子たちの中で最も期待をかけていた長男のフリーデマンですが、当時は彼の音楽は世間にあまり受け入れられず、不遇な人生だったようです。収録曲は、①12のポロネーズ F.12、②鍵盤のためのソナタ二長調 F.3、③幻想曲イ長調 F.23の3曲です。なるべく先入観なしに、数回連続して聞いてみました。バッハの息子たちの曲には対位法など、父親の影響は殆ど見られないと言われていますが、インベンションや平均律の匂いが何となく感じられます。大バッハが長男フリーデマンの教育のために書かれた作品が基になり、インベンションや平均律クラヴィーア集が生まれたことから考えると、フリーデマンの曲がこれらの父親の曲に似ていたり、影響をうけていてもおかしくはないのかなぁと思います。ちょっと旋律が一部似ているようなところもありますし...。表紙の解説にもあるように、斬新なリズム、半音階的な和声進行等、現代音楽的なところもあり、あれっ、結構フリーデマンさんは意外と凄いなっと感じるところがあります。幻想曲イ長調 F.23は私のお気に入りです。結構、いけてる曲です。
今までリュートのための作品はあまり真剣に聞いてこなかったのですが、たまたまDHMからの再版の「リュート作品全集」(BVCD-38086-87)(リュート:コンラート・ユングヘーネル)が出ていたので買ってみました(レコード芸術・特選だったようです)。通称リュート組曲は4曲あります。以下、解説書(浜田三彦氏)によれば、第1番は、1710年代のバッハの若い時の作品といわれているようです。この曲は明らかにリュート、あるいはリュートの音色を求めた鍵盤楽器、ラウテン・ヴェルク(どんな楽器か良く分かりません.....)の音質を想定して作曲されたようです。第2番は当時からリュートで演奏されていた可能性の高い作品のようです(タブラチュアという、五線譜ではないリュート特有の文字譜、数字譜が存在するようです)。第3番は無伴奏チェロ組曲第5番の編曲で、第4番は無伴奏バイオリンパルティータ第3番の編曲です。ユングヘーネルは13弦の典型的なバロック・リュートを使っているようですが、新バッハ全集にある譜面に忠実な演奏家は、低音にもう1弦を加えた14弦のリュートを使用しているです。本物のリュートを見たことも、触ったこともない私にとってはチンプンカンプンですが.......。
難しいことは別にして、とにかく聞いてみると、繊細で、柔らかで、厳かなリュートの音は神秘的です。最近、4、5回繰り返して聞いてみました。天気のいい日の昼間に、自動車の騒音の中で聞く雰囲気の曲ではないので、夜の静かな時に聞いてみました。昼間に聞くときには、カーテンを閉めて、部屋を暗くして、耳をそばだてて聞く方が音色に集中出来そうです。昨夜もこの曲を聴きながら寝てしまいました....。無伴奏チェロ組曲と同様、全部一挙に聞くには、少しだけ気合が入りそうです。途中でテレビをつけたくなるか、寝てしまうか、どちらかになってしまいそうです。今度は、雨の日に家に籠って静かに聴こうかなぁと思っています。
最近、久しぶりにブランデンブルク協奏曲に興味が沸き始めて、また左のCD(AVIE:AV2119)(2CDs)を買いました。周期的に聞きたくなる時期がくるようです(どの曲もそうなんですが.....)。直輸入版でトレヴァー・ピノック(指揮&チェンバロ)、ヨーロピアン・ブランデンブルク・アンサンブルの演奏です(2006年と2007年の録音)。ピノックの演奏は、以前は何となく肌に合わないと言うか、リズムがしっくりこないので、今まであまり聞いてこなかったのですが、ジャケットにある「名匠ピノックと当代一流の名手たちが至高のブランデンブルク協奏曲を生み出した!」という宣伝文句にグラッと来て、1週間前に買ってしまいました。この1週間、数回繰り返して聞いてみたのですが、これが結構良くて気に入ってしましました。この曲には名盤も沢山あるのですが、このピノック演奏は、第一音(?)に気合が入っていて、歯切れが良く、溌剌として、比較的テンポが早く、爽快でかつ力強い演奏です。一挙に6曲続けて聞いてもあっという間に終わってしまう感じで、何回も聞いてみました。録音も良く、空間の広がり、各パートの分解能もいいように思います(CDラジカセでもいい音が出ました)。以前は、ピノックはイギリス人で、バッハ演奏には何となく合わないような偏見を持っていたのですが、これから彼の以前のCDをまた聞いてみようと思っています(お気に入りの学者肌のガーディナーもイギリス人なので国籍は関係ないですね)。また、改めてこの曲の凄さに惹かれてしまいました。
最近はクラッシク業界も不況なのか、CDの新録が少なくなってきています。再版が多く、昔に比べるとちょっと寂しいです。特に映像(DVD)のnew releaseは少ないです。昔買ったCDをゴソゴソと探していたら、左のコープマンの2、3、4台のチェンバロのための協奏曲集(PHILIPS:PHCP-3515/6)が出てきました。1980年の録音で、何時買ったのかも忘れていて(買ったことさえも記憶にない状態で.....)、埃もかぶって、ジャケットも黄色く変色していました。コープマンのCDは殆どERATOから出ているので、アレッと思いました。この曲を、コープマンは1988年と1990年に再録音して、ERATOから出ており(WPCS-10807/8)、これしかないのかと思っておりました。この、PHILIPSの演奏はERATOの演奏より、彼の演奏としてはあまり軽くなく、オーソドックスで、堅実な演奏のように思います。新鮮に聞けました。
最近、コープマンの新譜は見当たらず、以前にレコ芸では彼はERATOから解任されて、母国で自費レーベルを立ち上げて、未完成であったカンタータ集を、2巻出版したと書いていたと思いますが、その後はどうなったのでしょうか?(日本で発売された12巻は何とか揃えたのですが、この2巻はゲット出来ませんでした)。彼のバッハの全曲録音の構想は、あまりにも急ぎすぎ、十分に検証しないままに録音を進めた為、多くの批判を浴びているように思いますが、コープマンのバッハに対する情熱は十分に伝わってきます。彼のチェンバロ曲は軽快で現代的で、個人的には悪くないと思っています。
最近、フーガの技法を久しぶりに聞いてみました。というのも、お店でピエール=ロラン・エマール(ピアノ)の「フーガの技法」(ユニバーサル:UCCG 1386)(08.1.23)が発売されていて、思わず買ってしまったからです(最も左のCD)。この曲については、今更、素人の私が解説するまでもないと思います。この曲には楽器の指定はないのですが、確か本で読んだ記憶では、バッハは鍵盤楽器を意図してこの曲を作曲したのではないかと推測されているようです(間違っていたらすみません....)。 ただ、個人的には弦楽器で演奏した方が深遠な雰囲気が良く出て、各声部も良く聞き分けることが出来て好きです。ピエール=ロラン・エマールのピアノ演奏が良いかどうかは私には分かりませんが、オーソドックスな演奏のように思います。その他、管弦楽器で演奏したCDには、左から2番目の「ザール放送室内管弦楽団」(Erato:WPCS-22073/4、録音:1963年頃)、左から3番目の「エマーソン弦楽四重奏団」(ユニバーサル:UCCG 1175、録音:2003年)、左から4番目の「カール・ミュンヒンガー指揮/シュツットガルト室内管弦楽団」(KING:210E 1173/4、録音:1965年)です。他にも沢山ありますが、すぐ手元にあったものを載せてみました。
私がこの曲を始めて聞いたのが、一番右端の「カール・ミュンヒンガー指揮/シュツットガルト室内管弦楽団」のフーガの技法で、このイメージがずーっと残っており、この演奏が最もお気に入りで、他の演奏を聴くといつもこの演奏と比較してしまいます。この演奏を超える演奏は私にはまだありません。ピアノ、チェンバロ、オルガンによる演奏もそれなりにいいのですが、若い時に聞いたこのCDの深遠な素晴らしい演奏が未だに忘れずにいます。目が悪くなり(糖尿病からきた白内障でしょうか?)、口述筆記をしながら作曲していたであろうバッハの姿を想像すると思わず心がジーンとして、涙が出そうになります。
以前から、フェルツマンの「イギリス組曲」が欲しかったのですが、最近、やっとゲットしました(カメラータトウキョウ、CMCD 20068-9)(録音2005年12月14日、15日)(2007.4.20)。確か、去年NHKのBSでイギリス組曲第6番を演奏しているのを見たことがあります。CDのジャケットに“フェルツマンの演奏を聴くと、心が静かにざわめきはじめる。”とあるのですが、彼の演奏がどういう特徴があるのかは良く分かりません(いつもながらまだ解説書は読んでません)。カメラータの録音はどれも音がクリアで、かつまろやかで綺麗ですが、この録音も快い響きです。イギリス組曲は多くの演奏家が弾いていますが、ピアノでの演奏は今までヒューイットとグールドの録音が気に入っていました。フェルツマンの演奏には、彼らのような特別に強い個性を感じないのですが、熟練した技巧に裏打ちされた正確で歯切れの良いタッチで、欠点の無い緻密な演奏で、この曲の構成も良く分かるように思います。5番、6番は平均律とイメージが似ているように感じますが、晩年とは違う、バッハの若さを感じます。フェルツマンはパルティータも録音していますが、平均律、フランス組曲のCDが早く出ないかと楽しみにしています。CDジャケットやテレビで見た彼の印象は、ちょっと頑固なおじさんです。
今日も寒い一日でした。家に帰って暖房してホットしています。
3台のチェンバロのための協奏曲(第1番と第2番の2曲あります)はバッハの器楽曲の中で最も好きな曲の1つです。バッハの熟練した作曲技術が凝集した傑作と思います。もう30年位聞き続けていますが、何回聞いても飽きません。バッハのチェンバロ協奏曲はほとんどが自作のバイオリン協奏曲を編曲したものとされています。このCD「J.S.バッハ・チェンバロ協奏曲第2集」(NAXOS 8.554605)は1995-1999年に録音されたものですが、第2番をバイオリンで復元したものが収録されているのが聞き所と思います。バイオリンで復元された曲は、“あ~、オリジナルはこんな風だったんだな~”、と感慨深く、興味を持って聞けます。オリジナルはケーテン時代に作曲されたのでしょうか(調べていないのでわかりません....)。でも、やはりチェンバロの方が、きらびやかで花があるように感じます。
第1番の方は、他の録音よりテンポが速く、一気に聞け、爽快感がありますが、第2楽章のAlla Sicilianoがやや情緒に欠けるように思います。バッハの器楽曲の緩徐楽章はどれも美しい旋律ですが、特にこの3台のチェンバロのための協奏曲第1番の第2楽章は最もお気に入りで、疲れたときに時々聞いてリフレッシュしています。