殺人犯として逮捕された男の妹と、彼女をマスコミから保護することになった刑事。現場を考えない上司の命令や、インターネットで振りまかれる一般人の悪意などに振り回される二人は逃避行を続けていくが……
以下、ネタバレあり
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マスコミやインターネットは凶器になる。それがものすごくハッキリ示される。
逮捕前後の犯人の家の前は、まるでカーニバルか何かのように大騒ぎ。何を壊そうが近所迷惑だろうが知らん顔。殺人犯の加害者の家族は、これからを生きていくため苗字を変えるべく離婚書類と再婚書類を作ったりする。追いかけるマスコミは、走る車からドアを開けてカメラを突き出すなど、撮影に命がけ。
そんなこんなのやり合いが、きっと現実にも起こっているのだろうなと、とてもリアルで怖かった。
加害者とその家族は別の人間でも、やはり家族なのだから「関係ない」では許されないだろうとは思う。だけど、ここで出てくるマスコミやインターネットは、あまりに暴力的で理不尽。こんな風に追いつめて意味があるのかと問いたくなる。だけど架空のことではなさそうな話ばかりで胸が痛くなる。
そういう情報を受け取る側の、そしてあるいはもしかしたら当事者になってしまう可能性も0ではない人間として、様々なことを考えさせられる痛烈な映画だった。
ただ、ここまで現実的な重いエピソードが丁寧に積み重ねられるこの物語の中で、彼女のBFのくだりは必要だったのかなぁ? ドラマ「TEAM」を見た時にも思ったけど、君塚良一さんは最近の少年達に絶望しているんだろうか。BFがあまりに陰険で無神経な人間すぎて、今までのリアリティがここで少し薄れたような気がしてしまった。BFは彼女から距離を置いて離れていってしまうくらいで充分だったんじゃないかとも思えて。
この、重い「誰も守ってくれない」。唯一の笑い所は、佐藤浩市と松田龍平の軽口のたたき合い。「背筋も凍るね~、オイ」がとってもはまっていて、ナイスコンビだった。
蛇足
途中、松田龍平のカーアクションがあるが、某名作刑事ドラマを思い起こさせるそのシーンは、「ジーパン」へのオマージュ? 亡きお父様に、風体やヌーボーとした感じがソックリです、龍平くん