ティム・ボガート John Voorhis "Tim" Bogert Ⅲ
【パート】
エレクトリック・ベース、ヴォーカル
【生没年月日】
1944年8月27日~2021年1月13日(76歳)
【出生地】
アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨークシティ
【経 歴】
ヴァニラ・ファッジ(1966~1970)
カクタス(1970~1972)
ベック・ボガート&アピス(1973~1974)
ボクサー(1976~1977)
ヴァニラ・ファッジ(1982~1984)
ヴァニラ・ファッジ(1987~1988)
ヴァニラ・ファッジ(1999~2002)
チャー、ボガート&アピス(1999)
デリンジャー、ボガート&アピス(2000)
ヴァニラ・ファッジ(2003~2008)
カクタス(2006~2008)
ヴァニラ・ファッジ(2009~2010)
「ヴァニラ・ファッジ」、「ベック・ボガート&アピス」、「カクタス」のベーシストとして知られる。
1960年代初期のモータウン・サウンドに傾倒した時期があり、ジェームス・ジェマーソンから大きな影響を受けたという。
ファズをかけた粒立ちのよい音と、リード・ギターにも引けを取らない攻撃的な演奏が特徴であり、その圧倒的なベース・プレイはジャック・ブルースと双璧であろう。
ニュージャージー州リッジフィールドで育った。
8歳の時にピアノを習い始め、13歳でクラリネットを、さらにサックスを吹くようになる。
高校ではマーチング・バンドに所属したが、リッジフィールド・メモリアル・ハイスクールに転校するとR&B系のバンドで活動。その後「バンドにサックスは不要と言われたこと、管楽器はいつも音を出しているわけではないこと」を理由にベースに転向した。
高校卒業後はRCAのエレクトロニクス関係の専門学校に通い、電気工学を学んだ。
ベーシストとしても活動を続けており、1965年に「リック・マーティン&ザ・ショウメン」に参加。ここでマーク・スタイン(keyboard)と出会う。
ボガートとスタインは「ラスカルズ」のオルガン・サウンドに影響を受けて新バンドの結成を計画し、やはり「リック・マーティン&ザ・ショウメン」のメンバーだったヴィンス・マーテル(guitar)とジョーイ・ブレナン(drums)を加えて、1966年に「ピジョンズ」を結成した。やがてカーマイン・アピス(drums)に出会い、ブレナンの後釜としてピジョンズに迎え入れた。
ピジョンズはレコーディング中の同年12月に「ヴァニラ・ファッジ」と改名する。
ヴァニラ・ファッジは1967年にアトランティック・レコードと契約。
同年6月にジョージ・"シャドウ"・モートンのプロデュースでシングル「キープ・ミー・ハンギング・オン」(1967年全英18位、1968年全米6位)を、同年8月にアルバム『ヴァニラ・ファッジ』(全米6位)をリリースし、ヒットを記録した。
ヴァニラ・ファッジは、サイケデリックなサウンドとのちのハード・ロックにも多大な影響を与えたハードなサウンドを融合させ、一躍「ニュー・ロック」の旗手として注目を集めるに至った。
とくにボガートとアピスのコンビは「ロック界有数の強力なリズム・セクション」と絶賛される。
当時ヴァニラ・ファッジの「ショットガン」を聴いたジェフ・ベックが、ボガートとアピスの演奏に衝撃を受け、共演したいと望むようになったのは有名な話である。
当時ベックが率いていた「ジェフ・ベック・グループ」は1969年8月に解散するが、折しもメンバー間の不和を抱えていたヴァニラ・ファッジも解散。これを機にベック、ボガート、アピスの3人はロッド・スチュワートを加えて新グループ結成に向けて動き始めるが、結局スチュワートは「フェイセズ」に加入した。これを受けてベック、ボガート、アピスはトリオとして活動するべく数度のセッションを行うが、同年11月2日にベックが運転中に交通事故を起こして全治3ヵ月の重傷を負ったため、このプランは流れた。
ジェフ・ベックとの新グループの結成を断念したボガートとアピスは、アトランティックとの契約上アルバムを制作しなければならなかった。そのためふたりはラスティ・デイとジム・マッカーティのふたりのギタリストを迎え、同年に「カクタス」を結成。
3枚のアルバムを発表したのち、1971年末にマッカーティが脱退、その後間もなくデイが解雇されると、1972年にピーター・フレンチ(vocal, 元アトミック・ルースター)、デュアン・ヒッチングス(keyboard)、ワーナー・フリッツシング(guitar)が加わって『汗と熱気』を発表する。
その頃ベックは「第2期ジェフ・ベック・グループ」を率いていたが、このバンドが1972年に解散したのを機に、ボガートとアピスは再びジェフ・ベックに接近する。
カクタスを解散したボガートとアピス、ジェフ・ベック・グループを解散したベックは、キム・ミルフォード(vocal)とマックス・ミドルトン(keyboard)を加えて新しいバンドの結成に向けて始動する。このバンドは「ジェフ・ベック・グループ」の名で1972年8月1日よりツアーを行うが、ミルフォードはすぐに解雇された。後任としてボブ・テンチ(vocal, 元ジェフ・ベック・グループ)が加入したが、ツアー終了後にはテンチとミドルトンは脱退してしまう。
結局トリオ編成となったバンドは、1972年9月に「ベック・ボガート&アピス」としてスタート、1973年3月にアルバム『ベック・ボガート&アピス』(全米12位、全英28位)を発表した。
高度な演奏技術を誇るBB&Aは、「クリーム」や「ジミ・ヘンドリックス・エキスペリエンシス」と並ぶパワー・トリオ、あるいはスーパー・グループの登場としてロック界を震撼させた。
1973年5月、BB&Aは唯一の日本公演を行い、14日日本武道館、16日名古屋市民会館、18~19日大阪厚生年金ホールで演奏した。大阪で演奏された2日間の模様を収めたのが1973年10月に日本限定で発表された『ベック・ボガート&アピス ライヴ・イン・ジャパン』(日本21位)である。
日本から帰国後、ボガートは交通事故で重傷を負う。
1974年1月にはセカンド・アルバムの録音が行われたが、ボガートとベックの音楽的対立が深刻になり、同年5月にこのトリオは消滅した。
ボガートは、1973年にヤン・アッカーマン(guitar, フォーカス)のソロ・アルバム『Tabernakel』に参加しているが、BB&A解散後にはボ・ディドリーの『The 20th Anniversary of Rock 'n' Roll』(1976年)で演奏。
そのほか、ボブ・ウィアー(guitar, グレイトフル・デッド)のプロジェクトや、ビリー・コブハム(drums)とともにボビー&ザ・ミッドナイツのツアーに参加。
1977年には「ボクサー」のアルバム『Absolutely』に参加し、ベースを担当したほか、4曲を共作している。
1980年、ロッド・スチュワートのアルバム『パンドラの匣』(全米12位、全英4位)に参加、3曲ベースを弾いている。
1981年、初のソロ・アルバム『Progressions』を発表。ソロ・アルバムは1983年にも発表(『Master's Brew』)している。
1981年、リック・デリンジャーのツアーに参加。
1982年、オリジナル・メンバーの4人にロン・マンキューソ(guitar)、J.B.トード(guitar, ジェフ・ベックの変名)を加えてヴァニラ・ファッジの再結成に参加、1984年には15年ぶりのアルバム「Mystery」を発表した。
1988年6月、アトランティック創立40周年記念イベントのためヴァニラ・ファッジ3度目の結成に参加、レッド・ツェッペリンなどと共演。
これ以降はハリウッドの音楽専門学校MIのベース科講師を務めるかたわら、PATA(guitar, Xジャパン)、ジャック・ラッセル(vocal, グレイト・ホワイト)のアルバムに参加。
1999年、チャー(竹中尚人)、ボガート&アピスを結成、日本ツアーを行う。
2000年、デリンジャー、ボガート&アピスを結成。
2002年、ヴァニラ・ファッジは18年ぶりのアルバム『The Return』をリリースし、ツアーも行った。
2006年、カクタスの再結成に参加。メンバーはボガート、アピス、ジム・マッカーティ、ジミー・クーン(vocal, 元サヴォイ・ブラウン)の4人である。34年ぶりのアルバム『CuctusⅤ』を発表。
2008年、ボガートはカクタスから脱退し、マイク・オネスコ(g,vo)、エメリー・セオ(d)とともに「オネスコ・ボガート・セオ・プロジェクト」を結成、2009年にアルバム「Big Electric Cream Jam」を発表。
2010年、オートバイ事故がもとでツアーからの引退を表明。
2013年、ハード・ロックのスーパー・グループ「ハリウッド・モンスターズ」のレコーディングにアピスやドン・エイリー(keyboard)とともに参加。
2014年、ソロ・アルバム『Big Trouble』リリース。
2021年1月13日、カリフォルニア州シミヴァレーで、ガンのため76歳で死去。
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