ベリーダンサーASYA ☆ オフィシャルブログ

レバノンを拠点に、アラブ諸国を股にかけた過去を持つベリーダンサーASYA(アシア)の今と昔の奮闘日記

レバノン バス事情

2010-06-14 00:26:23 | レバノン

前回のアブダビタクシー事情の流れで、今度はレバノンのバス事情をちょいと。

日本でバス、と言うと、大型のバスで座席がきちんと配列されていて、立っている人用にはつり革がぶら下がってて、降りるときは「降りる」ボタンを押して、pasmoやスイカ(関東ではイコカで、九州でも違うのよね)などの電子マネーをかざす機械があって・・・とテクノロジーの賜物、とまで言えそうなのだけど、「システム」がないレバノン(とあるレバノン人は、これを認めたのだけど?)のバスは、それとはまるで正反対のもの。バスっていう乗り物自体もハチャメチャながら、運転手さんたちもハチャメチャ。。。

ってな訳でエキサイティングなレバニーズ バス事情のおすそ分け。

レバノンは西側が地中海に面した、細長い地形の土地。海岸側は平地なのだけど、ほんの数キロ東に向かうと、国土全体が徐々に坂になっていて、それを上がっていってシリアとの国境になる山脈につながっている地形でもある。そのレバノン、1国の幹線道路として海側を南北に突っ切る高速道路があるのだけれど、エージェントのオフィスはその幹線道路から歩いて5秒ぐらいのところに位置するため、ビルの9階にあるオフィスから国の交通状況が一目瞭然なのである。そしてその交通の中にマイクロバスらしきものが行ったり来たりしている。

道路脇に行ってみると、それらのバスには、大きなフロントガラスのどこかしらにダンボールで作ったような番号札が貼ってある。まあこの番号でどのバスがどこ行きかを判断するのだろう。

レバノンでの移動は、通常タクシーやセルビス(相乗りタクシー)を使っていたある日、私は思い立つ。

なるほど・・・バスか。と。

なぜかそれまでそんな考えがよぎりもしなかった私は、何日間もかけて情報収集した後、ある日町までバスで行ってみることにする(情報収集になんでそんなに何日もかかたかって?そりゃみんなが違うこと言うからね。。。オーアラブ)。

そして得た情報は次の通り。

幹線道路を反対側に横切り、8番だか何だかのバスに乗りおおよその行き先を告げる。すると1回1,000LLないしは1,500LL(レバニーズポンド。ちなみに1,500LL=$1。これはドルがいくら安くなっても半永久的にこのままのレートでまあ何とも分かり易い)程で目的地まで行く、という。まあそれぐらいの情報さ。

降りる場所が近づいたら運転手さんに「その辺」で、と告げて降ろしてもらうらしいのだけど、ここのバス、バス停があるわけではないので、乗る時も降りる時も何かしらの合図をするのが普通。

時にはびゅんびゅん飛ばして客なんか関係なしに突っ走る運ちゃんもいるのだが、大体運ちゃんたちは、完全歩合制なのか、バスでもタクシーでも道沿いで人を見つけるとひとまずスピードを落とす。そしてプップとクラクションを鳴らしてみたりする。要するに「君は乗客になりうる人かね?」と聞いているのである。

アラブミュージックをすっごいボリュームで流しながらどんなアクション映画を撮影中なのかな、君?って具合に運転する人もいるからたまらない(色んな意味で)。

実はトルコ人もそうなのだけど、アラブ人通になってくると、彼らのとあるしぐさに気付く。それは、彼ら/彼女らが目を閉じて、口を少しとがらせて「チッ」と音を鳴らしながら顎をちょっと上げる、というもの。それは、「ノー」と言う意味の仕草で、とあるトルコ人の女の子がそれをしたら、彼女はお母さんにみっともない、とたしなめられていたのだけど、私に言わせるとちょっとしびれる?仕草なのだ(だからたまにやってみる)。

さて後者のアクション運ちゃんの場合は別として、前者の完全歩合制運ちゃんたちは、人によっては本当に、本当にあきれるほどバスを止める。そう、それは乗客を増やすためだからなのだけど、歩行者もそれを分かっての上か、やってくるバスを見かけると目を閉じて顎を上げる。そしてそういう歩行者を目撃するたびにしびれてる。。。

それはそうと、これはそんな日常が理解できた上でバスに乗ったある日の私の物語。

道路沿いでバスを止めた私は、すでに何人か乗車しているバスに乗り込む。バスの番号を把握していたので、このバスの最終目的地は、私の目的地の手前、少し大きな乗換ターミナルだということは認識していた。バスの最終目的地が分かっている私は、最後で降りて、そこからバスを乗り換えて街中まで行けばいいやと思っていた。が、なんだかその運ちゃんが私に聞いてくる。

「どこまで行くの?」って聞いているよう。なんだか愛想は良いやつだ。

夏の暑い日のバスは、窓が全開、ドアも全開(って危ないけどあっちでは普通・汗)で運ちゃんの声がなかなか聞こえない。

だから私は席を前の方に移してこう言った。

「これ、ダウラまで行くでしょ?」と。

すると「そうだ」、と運転手。

「私はダウンタウンまで行くの。ダウラで乗り換えるから」、と説明した私に運ちゃんは、ニコニコしながらどこから来たんだ?と質問してくる。

面倒くさいな、と思いつつも無視を決め込むのも気の毒なので一声「ヤバーン(日本)」という私。

すると今度は名前を聞いてくる。何度も何度も聞いてくるのでしょうがないからこう言った。

「メアリー」って。

ヤバーンから来たメアリーなんてないでしょ、なんて思いながら。

すると運ちゃん、他にも乗客はいるのに、私にこう話しかける。1,500LLでダウンタウンまで行ってやる。だからそのまま座っとけって。このバスはダウラで終わりなはずなのに・・・。そしてダウラに着いたところで乗客は皆降りていく。

最初は親切心で言ってるのかしらと思った私もなんだかマズイんじゃ?と、以前レバノンを旅した知り合いの日本人の女性が言っていた話が脳裏をよぎる・・・。

それは彼女が乗った、いわゆる路線バスで、運転手が急にバスを止めたかと思うと、アラビア語で彼女以外は皆バスから降りるように指示した、という話。皆が文句を言いながら降りてるのを見た彼女はその時はまだ何が起きてるのだろう?と不思議に思ってたそうなのだけど、運転手が扉を閉めようとしたその瞬間、彼女は自分の身が危険にさらされるであろうことを悟り、ドアをこじ開けて脱出した、という話。

瞬時にこの話を思い出した私も間一髪、乗客全員が降りる前にお金を投げ渡すようにして我が身をバスから遠ざけた。

すると全員が降りたそのバスを運転しながら運転手、ドアを開けたまま私の歩くスピードに合わせながら「Come back! Come back Mary!」としつこく付きまとう。

降りて良かった。。。ホッと胸をなでおろし、でもいつまでも聞こえる「Come back! Come back Mary! Mary from Japan!!」と言ってる声を聞きながら笑っちゃった。

メアリーフロムジャパーン、って・・・ないよな、と。

なんでこうレバノンってどんな話にも笑いがつきまとうんだか。。。

 

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする