それは2009年の夏にさかのぼる。
まだその年のラマダン前、レバノンに滞在しているときに、知人を介して知り合った日本語をしゃべるレバノン人が、親切にもこう言ってくれた。
もしどこか行きたい所があれば、自分は車を持っているから、連れて行ってあげるよ、と。
なんと!それはありがたい。
長くレバノンに滞在していても、半ば住み込む、という環境の中、一度住んでしまうと中々観光地に行ったりはしなくなってしまうものなのよね。億劫になっちゃって。
てな訳で、そのアントアン(日本語をしゃべるレバノン人)にお願いして、バールベックというローマ遺跡の観光地に行ってきた。
バールベックは、ヒズボラの本拠地?を通って行く先にあるのだが。
「おー、こえー、おー、こえー」、と内心ビビりながらも行きたいから行ってしまう私。
そんな私も一人で連れて行ってもらうのは何だか申し訳ないと思い、前日、同じエージェントのアルゼンチン人ダンサー友達に一緒に行かないか聞いてみた。「もう一人の友達も誘って是非行きたい!」、と言った彼女だったのだけれど、結局当日、どうしても動かせない別の用事が入ってしまい、私はアントアンと二人でバールべックにいくことになる。
湿気も多く真夏のレバノンは、30度を超える暑さになることも普通のこと。ベイルートからおよそ80キロ北東、ベカー高原の中央に位置するバールべックは、ユネスコの世界遺産でもあり、世界でも有数のローマ神殿跡。お日様がカンカンと照る中、その日は朝から出かけてバールべックの遺跡観光を堪能した。
レバノンにはいくつか世界遺産があるのだが、平日の昼間のせいか、その日のバールべックは人もまばら。バールべック遺跡の象徴ともなっていて有名な6本の巨大な円柱は、今は大部分が損壊しているジュピター神殿を支えていた一部なのだが、目の当たりにしたそれはなんとも圧巻だった。写真でもその大きさが分かると思うのだけれど、その遺跡をバックに毎年夏には音楽や演劇などのフェスティバルが開催されるらしく、その日はちょうどその準備をしているところも見学できた。フェスティバル夜のバールべックは照明でおめかしをし、さぞ綺麗なのだろうな、と自然とため息が洩れる。そしてあちこち歩き回っては写真を撮ったり日陰で休んだり、とにもかくにも堪能という言葉が一番しっくりくる一日をバールべックで過ごした。
※中央にちょこんと立っているの、私です。ほとんど見えないでしょう。
※フェスティバルのステージ
※バールべックの一部
※フェスティバル様にステージの用意をしている様子。右上に見えるのは遺跡の一部
午後、観光を終えてエージェントのオフィスに戻ってきた私を見かけたスタッフが一言。
「バールべックどうだった?」
「う、うん。とっても良かったよ。」と、私。
特にオフィスの人には何も言わずに出かけたのだけど、まあダンサー友達から聞いたのだろうな、と察しがつく。
次の日、また別のスタッフが私に聞く。
「マリコ、バールべック行ったんだって~?」
「う、うん。そうだよね、知ってるよね。バールべック良いねぇ。」
もちろん私はバールべックに行ったことを隠しているわけではないんだけどさ・・・。
と思っていると次の日にはまた別の人から感想を聞かれた。
そして1週間ほど経ったある日、先週バールべックに行ったことを忘れ気味だった私に、ちょうどエレベーター乗り場ですれ違った衣装屋のおばちゃんが一言。
「ハビビー、バールべックどうだった~?」
オフィス内の人たちが私の情報を共有しているのは良いさ。いいさ、それは。そんなもんさ。
でももしかして全然関係ない近所の人たちも私の一日の行動を知ってるんかい!と疑ってしまい・・・
・・・ハッ・・・
もしかして私の一日の行動はニュースにでも載っているのか?!
そう思ってやまない日々。。。
ってかレバノン人、人の噂話ばっかりしとらんで仕事をしろ!仕事を!!!(笑)
でも憎めないのよね、大好きなのよね、私、レバノン人。