つい先週、知り合いがおススメしてくれたダンスカンパニーの公演に行ってきた。
今ヨーロッパですっごい話題になってる作品なんだ、と力む彼の言葉を耳に、これは行っておいた方がよさそうだな、と足を運ぶことになるのだけど、実際公演を見た後、私がこれほど胸を打たれることになるとは思っていないほど感動的な作品だった。
実は私、パフォーマンスやステージのことに関すると案外?辛口。
本当に良いものに対してしか、ポジティブな発言が出来ない、よく言えば正直者、わるく言えばひねくれ者(笑)。
このカンパニー・カフィグのAGWAという作品は、こんな私を感動の渦に巻き込み、1週間経った今でもこんなに熱く語らせるすっごい作品。
‘フランスが誇るヒップホップダンスの旗手、ムラッド・メルズキが演出・振付を手掛けるカンパニー・カフィグ。これまで世界で1,000回以上の公演を行い、ストリートの表現を高い芸術性とともに昇華し、舞台芸術界に大きな衝撃を与えている。’(公演プログラムより)
名前からしてアラブ系だとは思っていたけど、なんとこのムラッド・メルズキはアルジェリア系フランス人とのこと。実はアルジェリア人ってダンスで才能を発揮する人がたくさんいるような気がする。
AGWAとは、水の意味。
水をモチーフに扱った作品で、普段はヒップホップを踊る総勢11人のブラジル人ダンサーが、無数のプラスチックコップに入った水をプロップとして用い踊り上げていく。
神奈川芸術劇場のステージいっぱいに広がる踊りの質の高さ、振付、ダンサーたちのみなぎるエネルギー、作品の完成度の高さ、音楽、演出、照明、全てが感動的で文句なしに素晴らしかった。
本物を見るのとはもちろん違うけど、兎に角一度見てみて欲しい。↓
実は私、ダンスはもちろん、演劇とか音楽でも舞台のことになると斜に構えて物事を見たり、でも同時にものすごくまじめに考えるところがあり、本当に良いものじゃないと拍手もそれほど大きく出来ないし、笑顔にもなれないし、音楽に体をのせるようなことも出来ないのだけど、その時ばかりはそんな私も、今まではじめてしたくらい大きな拍手を送った。もうスタンディングオベーションもの。
1時間弱の舞台が、あっという間の出来事に終わった。
舞台を観て心から感動したのははじめてかも。それくらい本当に、心から素直に感動した。ちなみに感動から涙も出た。
これを読んでくださってる皆さんは私ほどひねくれてないはずなので、この動画でもその素晴らしさを分かってくれるのではと思う。
のちのインタビューの記事をもとに、ムラッド・メルズキのお話を少し。
「AGWA」は、ブラジル人ダンサーたちと最初の作品。実は、スラムなど貧しい環境で生活している独学のストリートダンサーたちをオーディションして決めた11人に、本番までの1年半の間に5、6回ブラジルに渡り振付を指導、フランスで仕上げたそう。ブラジル=サッカーやカーニバルといったステレオタイプではなく、普遍的なモチーフを扱いたく、水でイメージとして使用した結果が、水とそれを入れるプラスチックコップが踊りとともに様々な効果を発揮している。ブラジルのダンサーが海外で踊る場合、サンバやカポエイラ、サルサなど南米の音楽を使うことが多いけれど、このダンサーたちのエネルギーにたくさんの出口を作りたかった、そしてひときわシンプルな舞台として生まれた作品「AGWA」。
余談ですが私、あまりの感動に、観に行った翌々日、同じ演目なのにまた観に行きましたとも。
公演後、間近でダンサーを見る機会に恵まれたのですが、皆小柄。ステージ上でのあのパワフルさはどこへやら、とても朗らかな青年たちでした。
来年またカンパニー・カフィグの公演があれば、間違いなく観に行きます。
次の作品が今回の「AGWA」ほどの感動を得られるかは未知の世界ですが、舞台ダンスの芸術性、可能性を確実に広げる、一見の価値はあるはず。
皆さまにもぜひぜひおススメです!
(事前にお知らせ出来ずにスミマセン)