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クリッピング しつけの目的で鳥の羽を切る時に知っておいて欲しいこと

2007年05月04日 | 問題行動

鳥の羽を切り、飛べなくしてしまう(または、飛翔力を弱める)ことをクリッピング(またはクリップする)といいます。クリッピングは、迷子や狭い屋内で飛ぶことによって怪我をすることを防ぐ目的で行われます。また、しつけの目的でクリッピングを行うこともあります。ここでは、クリッピングの是非ではなく、クリッピングによって生じる鳥の行動の変化としつけについて考えてみたいと思います。

■攻撃的だった子が、クリッピングで手乗りになった!

 飛べなくなった鳥は、自発的に行きたいところに移動することができません。ケージから出た後、歩いて移動する他は、全て人の手を介して移動することになります。

  移動したい→手に乗る→目的地に着いた!

このような繰り返しが生じると飼い主さんの手は、目的地に着くという鳥にとって「うれしいこと」といつも一緒に現れることになりますので、「好ましいもの」になります。また、逃げることのできなくなった鳥を危険なところや嫌なことから助けてくれるのも「手」(まさに救いの手!)です。

 そして、羽を切ったことで逃げることができなくなるので人との接触時間が増え、手を介した関わりや私たちとのコミュニケーションが増え、鳥にとって良いことが繰り返し起こるようになります。こうして、手と手にくっついている飼い主さん自身もいいこと、うれしいことになり、「大好き」に変化していくのです。

 羽を切ることで性格が変わったのではなく、飛ぶ力を失ったことで手や私たち自身がうれしいことに変化して鳥の行動が変わったのです。

■クリッピングの前にしつけを見直してみよう

 もし、しつけのためにクリッピングを考えているのなら、しつけを見直してみることでクリッピングしなくてもすむかもしれません。

 手に乗るといいことがあるよ。ケージに帰るといいことがあるよ。肩に乗らないでパーチ(止まり木)で待っててねと「こうしてね」をたくさんごほうびでほめてあげましょう。そうすれば、鳥の自慢の美しい羽を切らなくてもよい子になり、私たちや私たちの手を好きになってもらえうことができるのです。


 また、しつけ以外の目的でクリッピングをする場合にも、クリッピングによって鳥は嫌なことから離れるという嫌なことを避ける方法の一つを奪われていることを意識する様にしてください。このことをふまえた鳥との関わり(しつけ)を考えるようにしてください。

■クリッピングで信頼関係が崩れてしまう場合

 羽を切るときには、危険がないよう鳥の体を保定します。この時、保定に慣れていない鳥は精神的な苦痛を味わいます(鳥にとっては死ぬか生きるかという位の!)。このため、羽を切ったことによって人や手が嫌いになる子もいます。しばらくたてば、羽は伸びてきますからクリッピングを何度も繰り返すうちに慣れてくる子もいますが、ますます手や人が嫌になってくる子もいるでしょう。

 クリッピングすることを選択した場合は、体に触られること、タオルに包まれることのトレーニングをして保定されることに慣らしていくことが必要です。

■クリッピングと毛引き症、無気力症、うつ病

 鳥のクリッピングは、犬のトリミングや私たちが美容院で髪を切るという行為とは異なります。鳥の翼は移動手段として使うもので、単純すぎるたとえですが私たちの足のようなものです。鳥がこれまで逃げることで避けていた嫌なことがクリッピングによってできなくなります。この状態でしつけとはいえ鳥が嫌だと感じることを繰り返し行うと、過大なストレスが生じ毛引き症や無気力症、うつ病のような状態になってしまうことがあります。悪い行動を罰して矯正するというしつけは、クリッピング後は改めなくてはなりません。

■攻撃行動について

 攻撃行動はしつけの問題か発情期の問題なのかをよく見極めて対処しなければなりません。繁殖期の攻撃行動については、本能行動ですから行動の修正はむずかしいでしょう。なわばりに入らない、パートナーに近づきすぎないなどの対処が必要です。また、長く続く発情期は鳥の体に負担がかかります。環境と食餌のコントロールで発情を長引かせない工夫も必要です。参考ページ→発情を防ぐhttp://love.ap.teacup.com/bird/50.html

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新しい生活に備えよう

2007年02月04日 | 問題行動
 4月から新しい年度が始まります。家庭で暮らすインコやオウム、文鳥に新学期はありませんが、私たちの生活の変化が鳥たちに大きな影響を与えることがあります。鳥は、生活の環境の急激な変化に対応できなくて、体調を崩してしまったり、問題行動を起こして私たちに訴えかけたりするのです。これまでとは生活が大きく変わる可能性がある場合は今のうちから備えましょう。

■飼い主さんの状況が変わるとき
 忙しくなって鳥をかまう時間がなくなってしまった。帰りが遅くなり、週末しか遊ぶ時間がなくなってしまった。

→注意すること
 環境の変化に対応するのは人も鳥も大変です。飼い主さんが新しい環境へと変わったりすると、これまでのように鳥に十二分に意識を寄せることが難しくなることもあります。こういうときには、鳥の変化に気がつきにくく問題行動へと発展しやすくなります。

→対処法
▼今から
 昨日までたくさん遊んでもらえたのに、今日から全然遊んでもらえなくなった!というのが鳥には一番ストレスになります。鳥の生活のリズムを新しい生活に添ったものに時間をかけて変えていくようにしましょう。また、お留守番が上手にできるかどうかのチェックも練習をかねてしていきましょう。一人で遊んでいられるようなおもちゃを用意したり、それで遊んでいるかをチェックすることも行います。

▼新しい生活が始まってから
 今まで以上に鳥の様子に注意するか、または鳥の様子を見てもらうよう家族にお願いするようにします。また、忙しいときは鳥の様子を簡単にチェックするようなシートを用意して毎朝温度や体重、餌の量、便の様子、ふくらんでいないかなどのチェックを意識的に行い記録を残すようにするのも良いでしょう。

■家族の一人が就学就職等でいなくなってしまう。

→注意すること
鳥はどうして大好きな人が急にいなくなってしまったのかを理解することができません。探し回ったり、呼び鳴きするようになるかもしれません。

→対処法
明日からお別れだからお別れの日までたっぷり遊ぶという方法は、100%を0%にするようなもの。鳥は急激な変化に大きなストレスを感じるかもしれません。そうならないよう、徐々にいなくなるようにします。合う時間を減らしていない状態に慣らしていきましょう。

■引っ越しで環境が変わる。

→注意すること
 引っ越し前も引っ越し後も忙しく大変です。これまで以上に鳥の様子に注意するようにしましょう。また、引っ越しの際は、鳥のケージやおもちゃや餌など、鳥のこれまでの生活を変えないようにしましょう。何もかも変わってしまうと鳥は大きなストレスを感じるでしょう。

→対処法
引っ越しをしてしばらくの間は、お迎えをしたときと同じようにそっとしておいてあげましょう。鳥が外に出たくなってから外を探検させてあげるようにします。無理やりは禁物。新居は鳥にとっては、見知らぬ怖いところ。あなたの姿が見えないと鳴いて呼ぶようになるかもしれません。鳥が安心できるようなレイアウトにしてしばらく過ごしましょう。
新しい場所で、おやつを使って遊ぶことで早く上手に慣れてもらうこともできます。


呼び鳴き

2005年03月03日 | 問題行動
■ピースケ君とヤスコさんのケース

・ケージから出すまで鳴き続けます。
・近寄ると鳴きやみます。
・あまり大きい声で鳴いたら「コラッ」と叱りますが、
一瞬しか効果がありません。
・鳴いてばかりなので、ピースケにかかりきりで困っています。

■鳥の行動を分析してみましょう

ピースケ君はどうして鳴くのでしょうか。鳥の「心」に何が起きているのかを、私たちが正確に知ることは大変難しいことです。そこで、目に見える行動だけを観察し、分析してみましょう。

無駄鳴きという言葉があります。しかし、鳥はむやみやたらに鳴いているわけではないのです。鳴いた後、何が起こっているでしょうか。または、何がなくなっているか。鳴くという行動の後に何が起こっているか注目です。

■ピースケくんの行動:行動の直後に起こっているのは?

ピースケ君が鳴くたびに良いことが起こりました。
ピースケ君は、鳴くと良いことが起こるので、鳴く行動を学習したのです。




■ヤスコさんの行動:行動の直後に起こっていることは?

ヤスコさんは、近所の手前もあり、ピースケがずっと鳴き続けているのがとても苦痛でした。叱ったり、近くに寄ったりすると一瞬でも嫌なことがなくなるので、一生懸命叱ったり、なだめたりしていたのです。



■叱っているのにわかってくれないのはどうして?



叱っている「つもり」でも、ピースケ君にとっては嬉しいことだったのです。


■叱っているつもりだったけど、実は・・・


ヤスコさんは、一生懸命ピースケ君をほめていたのです!

ピースケ:鳴いたらヤスコさんが来てくれるんだから、もっと大きい声で鳴かなくちゃ。
ヤスコさん:よしよし、いい子ね!



■もっとちゃんと叱ればいいの?


しつけというと叱ることを思いつきますが、罰は、行動を止めさせるだけの罰を毎回与えなくては効果がありません。また、罰には色々な副作用があります。新たな問題行動を作ってしまうこともあるので、罰を使わずに解決する方法を考えてみましょう。


■良い行動を教える


問題行動は、正しい行動を知らないために生じます。呼び鳴きと同時にできない歌やお喋り、鈴を鳴らすといったことを教えてみましょう。歌を歌ったり、お喋りしたり、鈴を鳴らしているときに声をかけたり、外に出したりします。また、呼び鳴きの声がはっきりと区別できる場合には、小さな可愛い呼び声の時だけ近くに行ってあげるようにします。

鳥の「あなたのそばにいたい」「お外で遊びたい」という気持ちも大切に受け止めてあげましょう。







飼い主さんが決めたルール その1
【ほめる】良い行動の後によいことが起こるようにする
・静かにしているときに、ケージから出す、ごほうびを渡す。
・おとなしく遊んでいるときに声をかける
・小さく鳴いたときに近づく、声をかける

最初のうちは、短期間に何度も何度も繰り返しましょう。ちょっとでも上手にできたら近くによってごほうびをあげたり、外に出したり、ケージの外から撫でたり、声をかけたりします。これをしたらいいことが起こる、というの結びつけやすくするのです。

■悪い行動をほめない


次に、ピースケ君の悪い行動をほめないようにしてみましょう。
飼い主さんは、二つめのルールを決めて守ることにしました。

【ほめない】して欲しくない行動の後に良いことが起こらないようにする
・鳴いているときには、ケージのそばに行かない
・声をかけない

呼び鳴きしても答えないよ、と伝えるのです。同じ部屋にいるときには、視線を合わせず、無関心を装います。でも、ここで大切なのは、鳥に関心がないように装っていても、気づかれないようにそっと鳥を観察していることです。

呼び鳴きがやんだら、数を数えましょう。最初は、1,2・・ここまで静かにしていたら、声をかける。次は、3まで。次は4まで・・と徐々に時間を延ばしていきましょう。

→もっと楽しくトレーニング♪
 「かくれんぼゲーム」遊んでみましょう!

■無視の落とし穴

ただし、3つの箱を知らずに「呼び鳴きには無視すればいいのね」とだけを教わった人が実行すると、呼び鳴きをさらに酷くしてしまうことも考えられます。

鳴いても鳴いても声をかけない、姿を見せない。簡単簡単。

しかし、無視しても、これまで、鳴けば来てくれていたのですから、鳥は一生懸命呼び続けます。
呼び続ける時間がどんどん長くなり、声も大きくなっていきます。

飼い主さんにとっては、呼び鳴きはうれしくないことです。近所の手前もあります。根負けして、鳥に声をかけたり、そばによって鳴くのをやめせようとしてしまう可能性が高いのです。

でも、鳥にとっては、
大きい声でたくさん鳴くとケージの近くに来てくれる♪
もっと大きな声で呼ばなくちゃ! ということになってしまうのです。

呼び鳴きを解消するのは、無視だけではダメなのです。
必ず、同時に良い行動を教えること、それから、どうして問題行動が起こったかを考えることが大切なのです。

だって、鳥はあなたに「問題行動」で伝えたいことがあるのですから。

■問題行動のメッセージを考えてみましょう

罰を使わないしつけが浸透してきましたが、「罰はいけない、無視しよう」では問題は解決しません。

実は、問題行動は鳥自身が必要とするものを得るため(またはなくすため)に生じているのです。鳥は何を要求していたのでしょう。鳥のメッセージを考えてみましょう。

ピースケ君は、どうしてヤスコさんを頻繁に呼んだのでしょうか?
実は、ケージの中で退屈していたのです。

ピースケ:ヤスコさん、遊んで!  

ピースケ君のケージにはたくさんのカラフルなおもちゃがつり下げられていましたが、それで遊んでいなかったようです。おもちゃを与えれば遊ぶもの、と思ってしまいがちですが、おもちゃも鳥が面白いと思うものを選びましょう。

鳥が面白いと思うものって?

ヒントは、いつものいたずらにあります。あなたの鳥は、放鳥した時にどんないたずらをしますか? 新しい雑誌を囓ったり、一心不乱に壁紙を囓っていませんか? 鳥が楽しめるおもちゃを与えましょう。

また、野生動物はほとんどの時間を餌を探すことに費やします。食事の時間を長くするように餌を食べにくい容器に入れたり、包んだりして食べにくくしたり、ゲームを放鳥時間に取り入れて、ごほうびに餌をもらえるようにしてみるのも良いでしょう。

ピースケ君の場合は、生活環境を改善することでかなり解決しました。
これが、環境エンリッチメントですね。

■呼び鳴き、もう一つの理由

ピースケ君の場合は、「退屈」が呼び鳴きの原因でしたが、もう一つの理由が考えられます。それは、「仲間はどこにいるの?」の呼び鳴きです。

鳥は鳴き声をコミュニケーションの道具として使います。群れで生活する種類の鳥ならば、仲間の姿が見えない場合は、仲間を捜す声を出します。ケージの中にいる鳥ならば、移動して仲間を捜すことができないのですからなおさら声を使うようになるでしょう。

まして、以前、声を出して呼んだら来てくれた!という経験があったなら(呼んだらいいことがあるという三つの箱が完成していますね)、鳥はとても上手に声を使って仲間である私たちを呼ぶようになるのです。

鳥のケージを置く場所をリビングや家族がいるところに移すなど、家族が家にいるときには、ひとりきりにされる時間が少なくなるようにしてあげるといいですね。放鳥していないときでも、鳴いていないときにケージに向かって声をかけたり、ごほうびをあげたりしてみましょう。鳴いているときには、声をかけたりしないようにします。あまりひどいときにはそっと部屋から出て行き、静かになったら部屋に帰ります。

→もっと楽しくトレーニング♪
 「かくれんぼゲーム」遊んでみましょう!

引っ越しをしたばかりの時などは、鳥が家族とできるだけいられるようなレイアウトにしてあげましょう。

■怖い!

 ケージの位置を変えたら呼び鳴きをするようになった。仲間が見えなくなったことで呼び鳴きしている場合もありますが、もしかしたら怖がっているという可能性もあります。窓の外にひらひらした布が見えたり、急降下する物が見えると鳥は恐がり、落ち着きません。

鳥がうまく家庭生活に適応できるよう、私たちが工夫してあげましょう。


■みんなで一緒に楽しく取り組みましょう

鳥の行動は、人の行動にとても大きな影響を受けます。呼び鳴きに反応しないと決めたなら、家族みんなの態度が一致していることがとても大切です。ルールを書いた紙を目につくところに貼っておくと良いですね。


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