バードトレーニング

行動分析学の理論に基づく鳥のトレーニングやしつけのサイト。

1.クリッカートレーニングって何?

2004年10月06日 | クリッカートレーニング
■クリッカートレーニングとは

 クリッカーというカチッと音の出る道具を使うトレーニングです。

 イルカトレーナーだったカレン・プライア(Karen Pryor)が、イルカのトレーニングの理論を犬のトレーニングに応用したものがクリッカートレーニングです。

 クリッカートレーニングでは、まず最初にクリッカーを鳴らして、すぐに食べ物を食べさせます。「カチッ→ごほうび」をくり返すことで、クリッカーの「カチッ」の音がうれしいことに変わります。

■クリッカートレーニングは行動の法則を応用したトレーニング

 鳥は、行動の直後に良いことがあるとその行動を繰り返すようになります。この行動の法則を応用したトレーニングがクリッカートレーニングです。

 良い行動と良いことが時間的に近づけば近づくほど、行動と良いことが結びつきやすくなります。つまり、その行動をとった瞬間にほめれば「いい子ね!」「上手ね!」と上手く伝えることができるのです。

 しかし、逆に良い行動と良いことの間隔があいてしまうと行動と良いことが結びつきにくくなるのです。ほめる瞬間を上手にとらえて、相手にほめられたことがわかるようにほめる。これが、トレーニングの秘訣なのです。

  【トレーニングの重要なポイント】
  1.相手が嬉しいと思うことを
  2.タイミング良く与える

■クリッカーならタイミング良くほめることができる

 上手にトレーニングできないと、ついつい、うちの子馬鹿なのかしら?と相手のせいにしてしまいがちです。しかし、トレーニングがうまくできない原因の多くは、鳥がほめられていることがわからない、適切なタイミングでほめていないの2点です。つまり、「ほめているつもり」でも【トレーニングの重要なポイント】を押さえていなかったので、鳥はほめられていることがわからずに学習できなかったか、タイミングがずれていたために別の行動を学習してしまったのです。

 クリッカーを使えば、タイミングを逃さずにほめることができます。鳥は、良い行動の直後にカチッという嬉しい音が鳴り、ご褒美をもらえることがわかります。鳥はごほうびと行動を結びつけ、良い行動をどんどん学習していきます。

 良い行動→カチッ(ごほうびあり!)

■HAPPY TRAINING!

 トレーニングというとアメとムチ・・・など、なにやら厳しい印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。クリッカートレーニングは鳥の良いところだけをほめて育てるトレーニングです。鳥の自発的な行動に対して「上手ね!」を伝えてしてほしい行動の回数を増やしたり、いままでしなかった行動をできるようにしたりしていきます。

ごほうびを使ったトレーニングは、「餌で釣っている」とよく言われます。しかし、クリッカートレーニングは、餌を見せてあやつっているのではないのです。クリッカートレーニングでは、ごほうびのフードは、行動の直後にあらわれるもの。いうなれば、アメとアメなし。鳥は、「自発的」に行動するようになるのです。

■じゃあ、悪いことは悪いとどうやって教えるの?

 クリッカートレーニングは、良いことをほめてのばすトレーニングです。悪いことを悪いと教えることはできません。クリッカートレーニングでは、悪い行動を罰するのではなく、「こうしてね」を教えて問題を解決します。

 例えば、遊んで欲しくて手にかみつく子だったら、手にタッチを教えてみしょう。クリッカートレーニングで「遊んで欲しい時には手にタッチしてね」を教えるのです。タッチすれば遊んでもらえることを学習させるのです。鳥は遊んで欲しい時には手にタッチをするようになります。

 タッチを教えると同時に、かみついた時には構わないようにします。かみつくという悪い行動の直後に遊んだり、声をかけたり注目したりという良いことが起こらないように気をつけます。すると、賢い鳥たちは、やっても意味のない行動(噛む)をするより、ほめられる行動(タッチ)をするほうがいい!と学習します。

 飼い主が頭を絞って鳥と楽しくせるよう考えていくトレーニングがクリッカートレーニングなのです。たくさんほめて、行動レパートリーを増やしてあげましょう。

 鳥たちは、クリッカートレーニングが大好きです。クリッカーを見せただけで、そわそわとして「ねえ、今日は何して遊ぶの?」と実に楽しげな様子を見せることでしょう。



2.トレーニングの前に

2004年10月05日 | クリッカートレーニング
2.トレーニングの前に
■ ごほうびを探しましょう

ごほうびを考えます。
もらって「うれしい」ものなら、何でもごほうびになります。
鳥にとってうれしいことは何かを考えてみましょう。

私たち人間が、考えつくのはこんなことでしょうか。

 1.「いい子」「良くできたね」というほめことば
 2.頭を掻いてあげること
 3.おやつ
 4.何かができたという喜びそのもの

 ごほうびは、鳥さんの行動の直後にあらわれたときに、直前の行動が増加するものです。飼い主さんがほめたい方法ではなく、鳥さんが本当に嬉しいものにしましょう。おすすめなのは最初のうちは大好きなおやつをごほうびにすることです。カロリーが気になるのなら、慣れてきたらいつも食べているものに切り替えていきましょう。

1.いつも食べている餌の一部をトレーニング用に取り分ける[オススメ]
2.特別に好きなもの[最初のうちはこれ!]
3.鳥用のおやつ


 ごほうびは、いつも食べている餌でもいいですし、いつもと違うものでもかまいません。ただし、鳥が喜んで食べて、なおかつ健康を害さないもので、トレーニング中にお腹がいっぱいにならないように少しずつ与えられるものが適当です。

 小~中型のインコの場合は、少量でお腹がいっぱいになってしまうので、一粒が小さいアワやヒエなどの種子が使いやすいでしょう。ただし、種子類は、殻がついていない方がよいでしょう。殻付きは、食べるのに時間がかかることと、散らかった殻を餌と勘違いして気が散ってしまうのです。
 また、やっておいたほうが良いことがあります。平均体重と一日に食べる餌の量を出すことです。1週間、鳥の体重と餌の量をはかり、体重と餌の量の平均を出します。体重測定と餌の量の測定は、時間を決めたほうがいいでしょう。

ほめ言葉はごほうびにならないの?

一生懸命ほめてもトレーニングが進まない。大げさに声を張り上げてほめてるけど。飼育本にはほめるのが一番うれしいことって書いてあるのに・・・。うちの子はトレーニングに向いてないんだ。やーめた。

 最初のうちは、私たちが一生懸命「いい子ね」「上手ね」と語りかけてあげても鳥はこの言葉が嬉しいことと思わない場合もあります。クリッカートレーニングの効果を実感して頂くために確実に「嬉しいこと」をごほうびにすることをオススメします。

 ごほうびにおいしいおやつをあげながら、声かけをすることであなたの声もうれしいことに変わってきます。あなたの声=うれしいことになるのです。クリッカートレーニングは、あなたの声を嬉しいことにする手助けもしてくれるのです。ほめ言葉がうれしいことになれば、いつでもごほうびがないとダメな子にはなりませんね。安心してください。

■ ごほうびを入れるもの用意しましょう

 指でつまみやすいように小さな容器にごほうびを入れましょう。入れ物を使うなら小さなスライド式のケースにしまうと与えやすいでしょう。ミントキャンディのケースやヘアピンのケースで代用できます




■ クリッカーを用意します。

 クリッカーという訓練用の道具を用意します。犬用品売り場にあります。なければ、ノック式のボールペンなどで応用できると言われていますが、使いにくいと思います。




■ さあ、はじめましょう

1.まずは、鳥さんをトレーニングするところに乗せます。

 鳥さんが自由に歩き回れる位の広さがあってグラグラしない安定したテーブルや止まり木など、トレーニングする場所を決めたら、いらないものを取り除きましょう。慣れない場所なら、落ち着くまでその場所で遊んだりして慣らしましょう。テーブルや止まり木に乗るのをいやがるようでしたら、手に止まらせたままでもかまいません。なれてきたら、テーブルや止まり木に載せるようにして下さい。

2.ごほうびをケースに入れた場合は、食べさせる練習をしましょう。

 おすすめは、指でつまんで与えることですが、ケースから食べさせる場合は、ケースに慣らすことから始めます。
ケースをそっと鳥さんの目の前に出します。驚かなかったら、ケースを開けて、中の餌を見せます。興味を示し、食べるようだったら、そのまま二~三口食べさせて、そっと、ケースを閉じます。次は、一粒か二粒、または、一口食べさせて、ケースを閉じます。これを5~6回繰り返します。もし、ケースを見ただけで驚くようだったら、最初からケースを開いて餌を見せながら提示します。そして、興味を示したらそのまましばらく食べさせてケースに慣らして下さい。

 このとき、ごほうびほしさに鳥がケースにかじりついたり、手を囓ったりするようなら、餌を持った手(またはケースを持った手)を鳥から見えないよう背中に隠します。そして、鳥から目をそらして心の中でゆっくり5秒数えてください。「ダメ」等の声かけもしないで下さい。

 5秒たったら、また元のトレーニングに戻ります。かじったら、また、同じように手を背中に回し、5秒かぞえます。これを繰り返すと、鳥は、手やケースをかじってもごほうびがでない、ケースを開くのを待っていればごほうびがもらえると学習します。

トレーニング中、ケースやごほうびが気になってしかたがないという場合も後ろ手に隠して、クリッカーを鳴らした後に出すようにしてみましょう。

 ケースが開いたら、ごほうびがもらえる。閉まったら、もらえない。これがわかるまで繰り返します。焦らず、できるまで鳥のペースにあわせてゆっくり進むことが大切です。

1回のトレーニングの長さや回数は、1回3分を目安にします。
鳥さんが飽きるまでやってはいけません。もう少しやりたいなと思っているうちにやめるのがコツです。
 
 時間をあけて一日に何度か繰り返えすのが理想ですが、一日一回でもかまいません。何日間か間が空いてしまっても構いませんが、トレーニングが進む早さがゆっくりになります。

 また、ごほうびに関心を示さないようでしたら、一番おなかがすいているときにトレーニングしてみましょう。また、ごほうびを色々変えて試してみましょう。


3.はじめてみましょう

2004年10月04日 | クリッカートレーニング
■ クリッカートレーニング 3つのルール

ルール1 嬉しいこと・楽しいこととクリッカーの音を結びつける

ルール2 よい行動をした直後にクリッカーを鳴らす

ルール3 クリッカーを鳴らしたらごほうびを与える

これだけです!
トレーニングの詳しい方法は、下で解説しますので、ご覧下さい。

■ クリッカーをご褒美と結びつける … ルール1をマスターしよう

1.クリッカーを「カチッ」と回鳴らします
2.すぐご褒美を与えます

1と2を繰り返します。

▼トレーニングのポイント

ごほうびはカチッのすぐ後に上げてくださいね。

30回位を1セッションとして。連続してやってみましょう。
淡々とクリッカーを鳴らし、ごほうびを渡します。

▼クリッカーの音にビックリしてしまう

ポケットに入れたり、布に包んでやってみましょう。
だんだん慣れてきます。

▼ごほうびに興味を示さない

ごほうびを変えてみるか、
お腹が空いているときにやってみましょう。
トレーニングに与える分をあらかじめ取り除いて与えておくと良いでしょう。
空腹な状態を作ることは鳥の体調維持にもいいのです。


【確認してみましょう】
「カチッ」と鳴らすして、鳥さんがクリッカーやあなたを見つめるようになったり、ごほうびを探すような素振りを見せたら、クリッカーとご褒美が結びついています。

▼よくわかりません

もう一度、カチッ→ごほうびを繰り返してみましょう。
5セッション(30回)を目安にして、やってみます。
わからなかったら、先に進んでしまって構いません。

【注意】
クリッカーとご褒美が結びついたら、カチカチ鳴らさないで下さい。もし、してほしくない行動をしているときに「カチッ」とクリッカーが鳴ったら、その行動を学習してしまいます。

■ いいことしたら「カチッ!」 … ルール2と3をマスターしよう

クリッカーとごほうびが結びついたら、早速始めましょう。
最初は、声をかけたり(*)、手で合図しないサイレントトレーニングです。

*どうして最初に声をかけないの?

→鳥が混乱するからです。

例えば、イヌにおすわりを教えるときに、命令とおすわりの形を同時に教える方法があります。命令を最初からつける方法だと、イヌは、おすわりという体の形を憶えると同時に、「オスワリ」という音がしたら、おすわりすることを結びつけなければならないのです。

しかし、クリッカートレーニングでは、命令は最初のうちはつけません。まず、おすわりの形を教えます。飼い主の前で、頻繁におすわりできるようになってから、はじめて「オスワリ」という命令をつけます。「オスワリ」という合図があったときだけ、おすわりしたら「カチッ」の音がする!ということをすぐに憶えます。一つ憶えたら、次のことに進めば、混乱することなく、行動と命令を結びつけることができるのです。

ただ、クリッカーを鳴らした後にいい子ね!と声をかけるのはかまいません。
もうひとつ、やってしまいがちなのが、応援です。上手にできないときに、がんばれー、そっち、こうでしょ!とついつい声をかけたくなりますが、これも最初のうちは我慢です。
(上手にできるようになったら、やりとりを楽しんでかまわないのです! 最初だけ、我慢です。)



鳥にトレーニングが必要なの?

2004年10月03日 | トレーニングとしつけ
■鳥にトレーニングできるの?

            

 三歩歩いたら忘れる、なんていわれる鳥ですが、覚えの良さは驚くほどです。また、鳥たちもトレーニングを楽しんでいるようです。

 トレーニングを始めるのに遅すぎるということはありません。種類や性別、年齢も問いません。鳥には素晴らしい学習能力があるのです。

■トレーニングは必要?バードトレーニングとは

 トレーニングは、芸を覚えさせるためのものだけではないように思います。
 トレーニングの理論を知り実践することで、こちらの意図を伝える方法や、彼らがどうやってこちらにサインを出しているかがわかってきます。トレーニングの方法を学ぶということは、動物たちとのコミュニケーション能力を高めることにも繋がっていくように思うのです。

環境エンリッチメント

 また、ちょっとした芸を教えることで一緒に楽しく遊ぶことができるようになります。トレーニングを上手に使えば、刺激が少なく単調になりがちな飼育環境を豊かにすることもできるのです。

■鳥に優しいトレーニング

 動物のトレーニング、訓練、しつけ、曲芸というと、「アメとムチで従わせる」というイメージから、嫌悪感を持たれる方もおられるかもしれません。しかし、ここでご紹介しますトレーニングでは、罰を使いません。また、餌を見せて行動を促す「餌で釣る」ことも原則としてしません。鳥の自発的な行動を誉めてトレーニングします。 鳥は一緒に遊んでいるつもりなのでしょう。このトレーニングが好きです。

■どういうふうにトレーニングするの

鳥がうれしいと思うことが良い行動の直後に起こるようにしてみましょう。

     何か行動をする→嬉しいこと出現!

行動の直後にうれしいことが起こることが繰り返されると
鳥はその行動を取ることが多くなります。

■でも、ほめているのにちっとも言うことを聞かないけど。

そんなときは、ほめていることが伝わっていないのかもしれません。
どうやったら、「そうだよ!」「いい子だね!」を鳥にわかるように伝えることができるのでしょうか。

まずは、クリッカートレーニングのページをご覧下さい。
上手にほめる方法がわかります。
クリッカートレーニング


4.いいことしたら、カチッ

2004年10月02日 | クリッカートレーニング
■いいことしたら「カチッ!」 初級編

 クリッカーとごほうびが結びついたら、早速始めましょう。
最初は、声をかけたり、手で合図しないサイレントトレーニングです。
鳥さんには、最初は合図をつけない方がわかりやすいのです。また、つい途中で「頑張れ」などと声をかけてたくなってしまいますが、余分な刺激がない状態の方がスムーズにトレーニングが進むでしょう。
 カチッとクリッカーを鳴らす時に上手ね!いい子ね!と声をかけてあげましょう。

◆アイコンタクト (1.2.3は、サイレントトレーニング)


1.目があった直後に「カチッ」とクリッカーを鳴らします。
2.ごほうびを与えます。
3.何回か繰り返すと、あなたと視線を合わせる回数が増えてくるはずです。
4.目があったとき、見つめたまま名前を呼んで、「カチッ」→ごほうび
5.名前を呼んでから、目があったときに、「カチッ」→ごほうびを繰り返します。

◆おいで! (1.は、サイレントトレーニング) 

1.あなたに近寄ってきたときに「カチッ」→ごほうび。これを繰り返します。
2.あなたの所へ頻繁に来るようになったら、よく観察して…
3.あなたの所へ来るような素振りを見せた瞬間、「おいで」と声をかけます。
4.あなたの所に来たら、「カチッ」→ごほうび
5.「おいで」と声をかけて来たときだけ「カチッ」→ごほうびを繰り返します。