鳥の羽を切り、飛べなくしてしまう(または、飛翔力を弱める)ことをクリッピング(またはクリップする)といいます。クリッピングは、迷子や狭い屋内で飛ぶことによって怪我をすることを防ぐ目的で行われます。また、しつけの目的でクリッピングを行うこともあります。ここでは、クリッピングの是非ではなく、クリッピングによって生じる鳥の行動の変化としつけについて考えてみたいと思います。
■攻撃的だった子が、クリッピングで手乗りになった!
飛べなくなった鳥は、自発的に行きたいところに移動することができません。ケージから出た後、歩いて移動する他は、全て人の手を介して移動することになります。
移動したい→手に乗る→目的地に着いた!
このような繰り返しが生じると飼い主さんの手は、目的地に着くという鳥にとって「うれしいこと」といつも一緒に現れることになりますので、「好ましいもの」になります。また、逃げることのできなくなった鳥を危険なところや嫌なことから助けてくれるのも「手」(まさに救いの手!)です。
そして、羽を切ったことで逃げることができなくなるので人との接触時間が増え、手を介した関わりや私たちとのコミュニケーションが増え、鳥にとって良いことが繰り返し起こるようになります。こうして、手と手にくっついている飼い主さん自身もいいこと、うれしいことになり、「大好き」に変化していくのです。
羽を切ることで性格が変わったのではなく、飛ぶ力を失ったことで手や私たち自身がうれしいことに変化して鳥の行動が変わったのです。
■クリッピングの前にしつけを見直してみよう
もし、しつけのためにクリッピングを考えているのなら、しつけを見直してみることでクリッピングしなくてもすむかもしれません。
手に乗るといいことがあるよ。ケージに帰るといいことがあるよ。肩に乗らないでパーチ(止まり木)で待っててねと「こうしてね」をたくさんごほうびでほめてあげましょう。そうすれば、鳥の自慢の美しい羽を切らなくてもよい子になり、私たちや私たちの手を好きになってもらえうことができるのです。
また、しつけ以外の目的でクリッピングをする場合にも、クリッピングによって鳥は嫌なことから離れるという嫌なことを避ける方法の一つを奪われていることを意識する様にしてください。このことをふまえた鳥との関わり(しつけ)を考えるようにしてください。
■クリッピングで信頼関係が崩れてしまう場合
羽を切るときには、危険がないよう鳥の体を保定します。この時、保定に慣れていない鳥は精神的な苦痛を味わいます(鳥にとっては死ぬか生きるかという位の!)。このため、羽を切ったことによって人や手が嫌いになる子もいます。しばらくたてば、羽は伸びてきますからクリッピングを何度も繰り返すうちに慣れてくる子もいますが、ますます手や人が嫌になってくる子もいるでしょう。
クリッピングすることを選択した場合は、体に触られること、タオルに包まれることのトレーニングをして保定されることに慣らしていくことが必要です。
■クリッピングと毛引き症、無気力症、うつ病
鳥のクリッピングは、犬のトリミングや私たちが美容院で髪を切るという行為とは異なります。鳥の翼は移動手段として使うもので、単純すぎるたとえですが私たちの足のようなものです。鳥がこれまで逃げることで避けていた嫌なことがクリッピングによってできなくなります。この状態でしつけとはいえ鳥が嫌だと感じることを繰り返し行うと、過大なストレスが生じ毛引き症や無気力症、うつ病のような状態になってしまうことがあります。悪い行動を罰して矯正するというしつけは、クリッピング後は改めなくてはなりません。
■攻撃行動について
攻撃行動はしつけの問題か発情期の問題なのかをよく見極めて対処しなければなりません。繁殖期の攻撃行動については、本能行動ですから行動の修正はむずかしいでしょう。なわばりに入らない、パートナーに近づきすぎないなどの対処が必要です。また、長く続く発情期は鳥の体に負担がかかります。環境と食餌のコントロールで発情を長引かせない工夫も必要です。参考ページ→発情を防ぐhttp://love.ap.teacup.com/bird/50.html
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