バードトレーニング

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保定の練習をしよう

2008年03月03日 | コラム
 大好きなおやつを無心に食べている姿を見て、「練習して良かったね。」と心からそう思いました。それは、動物病院の診察室でのことでした。

 家庭で飼育されている鳥にとっては、キャリーに入れられて病院まで連れて行かれるだけでもドキドキする大仕事です。病院について、知らない人にいきなりつかまれてひっくり返されたら鳥は驚くに決まっています。噛みついたり逃げようとするのは当たり前ですから、鳥の安全と正確な診察のために獣医さんは動けないように保定します。

 でも、私は「それは必要なことだから我慢してね」とは言いたくありませんでした。怖いことを我慢させれば、そこに行くだけで恐怖を感じてしまうようになります。病院で獣医さんに触られることが怖くて怖くてたまらなくなってしまえば、健康診断だってストレスになるし、病気で行くことがあったら移動と診察で余計に具合を悪くしてしまうことになります。家庭で暮らす鳥には、鳥自身の力だけでは越えることができない大きな壁がたくさんあります。そんな時は、一緒に楽しく遊びながら「得意」にしていきたいと思うのです。

 よし、ひっくり返る練習をしよう。今はひっくり返るのは大嫌いだけど、ひっくり返るのが平気になるように一緒に練習しようね。

 病院へ行くまでの一ヶ月間、毎日毎日、ちょっとずつ体に触る面積を広くしていきました。細かく細かく砕いた大好きなおやつを用意して。体に触って平気だったらごほうび。指一本ずつ、関節一つ一つを乗せていく様にしてそのたびにごほうび。嫌がるのを慣らしていくのではなく、嫌がらない状態を作ってごほうびでほめていくのです。「ギャア!」といわれてしまったら、私が急ぎすぎた証拠。前の段階に戻ってやり直します。

 病院へ行く日、大好きなおやつを小さいビニール袋に入れて丁寧に鞄の中にしまいました。どうぞ、病院の診察室でもこれを食べられるくらいリラックスできますようにと願いながら。病院へ到着して、いよいよ診察。診察が終わった後、キャリーに戻してから獣医さんにおやつを与えてもらいました。クチバシで受け取ると早速ムシャムシャ。鳥は、安全だと思わなければ餌を食べませんから、食べたということは診察で怖い目に遭わなかったと判断できました。お家で何度も楽しく保定の練習をしたことで病院で保定されても大丈夫になったのです。

 保定の練習は、慎重に進める必要があります。焦らずに2ヶ月くらいかけて進めるつもりで練習してください。ひっくり返るのが得意でない種類は更に一ヶ月プラスしてゆっくり楽しく進めていきましょう。ごほうびには特に好きなものを細かくしてたくさん用意してたくさんほめてあげるようにしてくださいね。

 ごほうびにおやつを使うのには理由があります。生まれながらにうれしいことと組み合わせることで、嫌いなことを好きなことへと変えていくことができるからです。獣医さんに大好きなごほうびを手渡してもらうのをお願いしたのも同じ理由からです。詳しくは、インコのあくびとあの有名な犬のお話へどうぞ。