1994年刊行の本で、紹介文によると「三島由紀夫から松任谷由実まで、'60年開店以来、きらめく才能が集う伝説のレストラン「キャンティ」。そのオーナーにして希有な国際人と言われた川添夫妻と客達の青春を描いたノンフィクション」というもの。
キャンティは、知ってる人は誰でも知ってるでしょうが(当たり前)、私が意識するようになったのは10年ほど前。「安井かずみがいた時代」という本を読んだ時でした。
その後、磯前順一さんの「ザ・タイガース 世界はボクらを待っていた」や、瞳みのるさんの「ロング・グッバイのあとで ザ・タイガースでピーと呼ばれた男」でも、そのキャンティと経営者の川添夫妻のことがよく出てきたので、大体どんなところかというのはわかってきました。
そして、極めつけというかその川添夫妻の長男で音楽プロデューサーの川添象郎さんの「象の記憶」を読んで、ますます興味を持ったと。そこで読んだのが今回の「キャンティ物語」。
読んでみたら、これまでぼんやりと思い描いてた部分がかなり具体的にわかった気がします。川添夫妻の実像についてはかなり踏み込んで書かれてて、確かにすごい人たちではあったわけですが、別にスーパーマンでも非の打ち所の無い人格者だったわけでもないということで。
私の場合は1963年生まれの一般男性なので「キャンティ」には時代的にも地理的にも人脈的にもまったく接点はありませんが、もしその時代に東京にいて誰かに誘われたとしても「ケッ」と言って関わらなかったような気はします。というか、いくらかかるかもわからないし、どんな格好をして行ったらいいかも悩むし。
当時も加橋かつみさんやGSのファンの間では有名な存在だったでしょうが、そのファンが彼らを目当てに大挙押し寄せたという話は聞かないので、ある種一般人は近寄りがたい場所だったのかもしれません。(もしかしてファンはちょこちょこ行ってたのかもしれませんけど。)
それで、ここでもロックミュージカル「ヘアー」の話題が出てきて、それについては後半のかなりの部分が割かれてて、またまたこれへの関心が高まりました。あとは、加賀まりこさんが当時いかに特別な存在だったかというのも強調されてますが、その辺はあの時代を体験してないとわからないでしょうね。
そんなこんなで、ある程度関心を持って読むと面白い本だと思います。文庫なので入手しやすいので気になる人は是非どうぞ。