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疑心、暗鬼を生む / こぶ皿

2004年08月04日 19時08分45秒 | 想在
 小さなころ、なんでもないようなことが、異常にこわかったことがある。

 あらゆるものに、取り囲まれていて、いつも不安におびえていたような。

 いまでもよく憶えているのは、いちばん近所の友だちの家 ( ... いちばん近所といっても、一キロ近く離れている) に行く途中にある桑の木。

 木の 「ふし」 というか、「こぶ」 が、まるで、「目」 のように見えて、とてもこわくなった。

 夕方六時のサイレンが鳴り響くなか、薄暗い、人通りのない田舎道で、その 「目」 に捕らえられて、どうにかなってしまうのではないか、と思い、一散に自宅へと逃げ帰った。

 それ以来、夕刻には、その友だちの家に行かないようにした。

 つい、遊びに夢中になって、その友だちの家からの帰りが遅くなってしまったときは、泣きそうになりながら桑の木のわきを通り過ぎるか、遠回りをして帰った。



 いまでも、その名残か、夜の散歩中、ちょっとさみしい通りなんかで、傍の木の 「こぶ」 を見かけると、どきどきすることがある。

 その話を、私の友人 (というか彼) にしたら、

 「疑心暗鬼になってると、なにを見ても、こわいと思うもんなんだぜ」 と言われた。

 それでも、こわいものはこわい、と言い返したら、

 「よく見てみると、木のこぶって、いろんな表情があって、おもしろいぜ」 と。

 「その 『表情』 が、まさに 『目』 みたいなのだけど ... 」 と言おうとしたけれど、やめておいた。 どう考えても、じぶんの意見が、幼稚な、取るに足らないことに過ぎないように思えたから。

 彼は、しょうがないな、という感じで、見知らぬ家の、木塀を指差して、「あれさ」 と言った。 「ただの木目に見えるかもしれないけど、ぜんぶ、ちがう模様なんだぜ。 木のこぶもひとつひとつ、ぜんぶちがって、見てみるとほんとにおもしろいよ。 こぶの部分で作った 『皿』 とかもあって、すげえおもしろいんだぜ」



 あとで調べてみると。 こぶのお皿。 たしかにあるもよう。


   「木のうつわ すずき」 - 「お皿・盆」


 「木のこぶ」でできた製品は、木肌模様がひとつひとつまるで違います。カタログの写真でお伝えできるのはその雰囲気だけ…。写真の紋様は、世界にたったひとつのもの。そして、お届するものも、間違い無く世界にただひとつのものです。木目を生かした製品というのは、基本的にそういうもんなんですが、この、「こぶ」ってのは特にそれが際立っており、そこが、「こぶ」の魅力でもあるわけなんです。


 ... とのこと。 なるほど。

 そう考えれば、多少は ... 。 不思議な、神秘的な魅力を感じるまでには、まだ至っていないけれど。

 木のこぶ。 それは、木が、生きているという証し、なのだろうか。 人が、「まめ」 をつくったり、「たこ」 をつくったりするのと同じような ... ? じぶんの 「たこ」 やなんかは、にくい反面、いとおしくもなる。 じぶんが、たくさん、生きている、証しのような気がするから。



 関連リンク:
 『楽しい英単語の国』 - 「knock の k はダテじゃない!」



 BGM:
 Eddie Floyd ‘Knock on Wood’

コメント (12)
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