11 巨人の積み石遊び――巨石記念物――
1 巨石記念物
西ヨーロッパのだいたい海岸沿いに、北はスカンディナヴィア半島からデンマーク、北ドイツ、イギリス、フランス、南はイベリア半島のスペイン、ポルトガル、地中海のコルシカ島にまでおよんで、「巨石記念物」とよばれる巨石の建造物の遺跡がひろく散在している。
それらは多く、新石器時代の末期から青銅器時代にわたってつくられたものである。 巨石記念物には種々の形のものがある。
たとえば「メンヒル」とよばれるものは、柱状の一本石で、二、三メートルから一〇メートルまで種々の高さのものがある。
それには自然のまま、ほとんど人の手の加わっていないものもあり、ときには、人間の顔などの彫ってある人工の加わったものもある。
こうしたメンヒルは、フランスだけでも千五百本以上もあるという。
さらに人工の加わっている「巨石記念物」は「ドルメン」である。
ドルメンというのは、ケルト語で「机石」という意味で、石をいくつか立てた上に大きな石を横たえたもので、ちょうど巨人の机のように見える。
巨石記念物のなかで、この「ドルメン」だけは、その用途が明らかで、多くの学者が異論なく墓と認めている。
ドルメンはのちにさらに発達し、石で築いた通廊状の「羨道(せんどう)」がついたものや、上を土でおおって、塚状にしたものなどができた。
大規模な巨石記念物としては、フランスのブルターニュ地方のカルナックというところにある「アリニュマン」があげられよう。
わが国ではこれを「柱状列石」とよぶ。一平方キロほどの広さの原に、二メートルから四メートルほどの高さの自然石が、総数で千二百本ほど、十三列にならんでいる。
これほど大規模で壮観ではないが、より建築的な構造をもっている巨石記念物に「ストーンサークル」がある。
これはケルト語で「クロームレッヒ」ともよばれ、石柱を円形に立てならべたもので、「環状列石」とわが国ではよばれている。イギリスに多く、直径五、六〇メートルのものが多い。
最大のものは直径一〇〇メートルもあり、イギリスの南部、ソールスペリー飛行場近くのアムズペリーというところにあって、とくに「ストーンヘンジ」とよばれている。
これらの「アリニュマン」や「ストーンサークル」はそれこそ、まるで巨人が、大きな石を槓んで遊んだように見える。
昔の人もそう思ったらしく、ストーンヘンジにはそのような伝説がある。
十二世紀のイギリスの学者たちは、巨人たちがはるばるアフリカから巨石をアイルランドまで運び、そののち魔法使いのメルランが、これをイングランドに運んだという伝説があったことを伝えている。
1 巨石記念物
西ヨーロッパのだいたい海岸沿いに、北はスカンディナヴィア半島からデンマーク、北ドイツ、イギリス、フランス、南はイベリア半島のスペイン、ポルトガル、地中海のコルシカ島にまでおよんで、「巨石記念物」とよばれる巨石の建造物の遺跡がひろく散在している。
それらは多く、新石器時代の末期から青銅器時代にわたってつくられたものである。 巨石記念物には種々の形のものがある。
たとえば「メンヒル」とよばれるものは、柱状の一本石で、二、三メートルから一〇メートルまで種々の高さのものがある。
それには自然のまま、ほとんど人の手の加わっていないものもあり、ときには、人間の顔などの彫ってある人工の加わったものもある。
こうしたメンヒルは、フランスだけでも千五百本以上もあるという。
さらに人工の加わっている「巨石記念物」は「ドルメン」である。
ドルメンというのは、ケルト語で「机石」という意味で、石をいくつか立てた上に大きな石を横たえたもので、ちょうど巨人の机のように見える。
巨石記念物のなかで、この「ドルメン」だけは、その用途が明らかで、多くの学者が異論なく墓と認めている。
ドルメンはのちにさらに発達し、石で築いた通廊状の「羨道(せんどう)」がついたものや、上を土でおおって、塚状にしたものなどができた。
大規模な巨石記念物としては、フランスのブルターニュ地方のカルナックというところにある「アリニュマン」があげられよう。
わが国ではこれを「柱状列石」とよぶ。一平方キロほどの広さの原に、二メートルから四メートルほどの高さの自然石が、総数で千二百本ほど、十三列にならんでいる。
これほど大規模で壮観ではないが、より建築的な構造をもっている巨石記念物に「ストーンサークル」がある。
これはケルト語で「クロームレッヒ」ともよばれ、石柱を円形に立てならべたもので、「環状列石」とわが国ではよばれている。イギリスに多く、直径五、六〇メートルのものが多い。
最大のものは直径一〇〇メートルもあり、イギリスの南部、ソールスペリー飛行場近くのアムズペリーというところにあって、とくに「ストーンヘンジ」とよばれている。
これらの「アリニュマン」や「ストーンサークル」はそれこそ、まるで巨人が、大きな石を槓んで遊んだように見える。
昔の人もそう思ったらしく、ストーンヘンジにはそのような伝説がある。
十二世紀のイギリスの学者たちは、巨人たちがはるばるアフリカから巨石をアイルランドまで運び、そののち魔法使いのメルランが、これをイングランドに運んだという伝説があったことを伝えている。