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他界からの手紙:父の死

2018-02-09 01:42:46 | 天国・地獄
ミカエル・モスカ神父訳『わたしは亡びた』、6

 地上にいる間からわたしはこんな考えをもっていました。あなたは、このことに気づいていたでしょうか。

 わたしは、父のことを少しはあなたに話しましたが、日頃、父と母はいさかいの絶え間がありませんでした。生前は恥ずかしくて、あなたにも話しませんでしたが、今は、悪を恥かしいとは少しも思いません。父はだらしのない酒のみで、家財を質に入れてまで飲んでいました。二人の姉は勤めていましたが、働いたお金は自分で使いたいと言い張っていました。母は、内職をしてやりくりしていました。父は死ぬ1年前など、飲み代がないと言っては、よく母をいじめていました。

 そんな父もわたしにはやさしく、わたしが気に入らない、というと、買って来た靴を、2度も取り替えさせたことがありました。このことは、あなたにも話しました。そのとき、あなたは、わたしのわがままに不愉快な様子でした。

 わたしは、あなたが誤解するのではないかと恐れて、父が脳溢血で死んだ夜の出来事を隠して話しませんでした。でも今は、あなたにそれを知って頂きたいのです。その夜の出来事こそ、わたしの生涯にとって大切なことだったからです。そのときわたしは初めて、今わたしを苦しめている悪魔に出会ったのです。

 わたしは母と同じ部屋で休んでいました。ふと、わたしは、だれかに呼ばれて目が覚めました。見ると、母は静かな寝息を立てて眠っていました。声は、どこからともなく聞こえて来ました、「おまえの父親が死ぬとしたら、どうするね?」

 わたしは、母をいじめる父をみるようになってから、父を好きになれませんでした。それにもうわたしには愛する男の人がいて、他の人のことはどうでもよかったのです。神の恵みをもっていない人は、だれかを愛さないで生きることは出来ません。そのときわたしには、もう神の恵みはなかったのです。わたしは平気で、「でも、まだ死んでいないわ」と、この気味の悪い声に答えたのです。

 少したって、また同じ声が聞こえて来ました。

 わたしは、「まだ死んでいないわ」と、もっと強い口調で答えました。声は3度目に、「父親は、死んだらどうなるかね?」と、尋ねるようでした。そのときわたしの頭に浮んで来たのは、父が酔いしれて家に帰ってくること、母をいじめること、そしてこんな父の暮しぶりを周囲に恥かしく思っていることの不満の渦でした。

 わたしは怒りをこめて、「死んでもかまわないわ。それですっとするわ」と答えてやりました。すると、すべてが元の静けさにかえっていました。次の朝"いっものように母が父の部屋のドアを開けようとし走したが、鍵がかかっていて開きませんでした。昼ごろになってドアをこじ開けてみると父は服を脱ぎかけたままベッドのかたわらで、冷たくなっていました。地下室にビールを取りに行って、発作を起こして亡くなったらしいのです。



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