講談社文庫 宮部みゆき『天狗風 霊験お初捕物控』を読了しました。
あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。
【目次】
第一章 かどわかし 朝焼けの怪/御番所模様
第二章 消える人びと おあきの足跡/ささやく影/魔風/再び、ささやく影/明けない夜
第三章 お初と鉄 姉妹屋にて/浅井屋脱出/夢の娘/矢場の男
第四章 武家娘 吹き矢/鉄と御前さま/御前さまと和尚
第五章 対決 しのの涙/桜の森/お初と御前さま
解説 吉田大助
【あらすじ】
真っ赤な朝焼けの中、娘が一陣の風とともに忽然と消えた。居合わせた父親が自身番に捕らえられるが、自ら命を絶ってしまう。
不自然な失踪に「神隠し」を疑うお初と右京之介。探索を始めた二人は、娘の嫁ぎ先に不審な点があることを突き止める。だが、その時、第二の事件が起こった。
【感想】
『霊験お初捕物控』の2作目。このままシリーズ化していくと思われたが、何故かここで休止中。『三島屋変調百物語』を始めたから?かもしれない。
正直、『三島屋変調百物語』のほうを先に読了していたので、こちらのシリーズは同じ長編でも少し物語がもたつく感じがした。主人公のお初のキャラクターも単純に思えて、あまり感情移入できないのも少々気になるところだった。
事件が幾つもほぼ同時に起こるので混乱しやすい。これはこれと繋がって…と、頭の中で整理しつつ読みすすめていかないと訳がわからなくなる。最終的にはきっちりわかるようにはなっているのだが。この絡まり具合は横溝正史作品を思い出す。
最初から不穏でオカルト風な始まりを見せる。『霊験お初捕物控』シリーズなのだから当たり前といえば当たり前なのだが…。人の心の奥底にある本音の部分を、なにかで増幅させて見せつけられている気分になる。正直、軽く吐き気さえした。
人には見えないものが見えるお初が、同心を退いた右京之介、岡っ引きの兄の六蔵、御前こと奉行の根岸肥前守鎮衛(実在した人物で『耳袋』の著者)、どこからか現れた猫の鉄、すず、和尚と共に幾つも重なった事件を紐解いていく。事件そのものは嫌な事件だが、猫とお初の場面は可愛らしい。お初は何故か猫と会話できるし。
疾風と共に現れる天狗は、亡くなってもなお妄執を抱いたままの女、御家人柳原家の娘 真咲だった。夜毎、娘たちの夢枕に立った観音様も真咲だった。若く美しい娘に嫉妬し妬み、桜の咲くこの世とあの世のあわいに連れ去ってしまうのだ。
物語は一応の解決をみて、娘たちも無事に家に帰れたが、ここからが始まりだよな…と。自分の縁談絡みで自害した父をもつおあきは、これからどう気持ちを整理して折り合いをつけていくのだろう…。めでたし、めでたしとはいかないはずだ。そこは、さらっとしか触れてないけど。
それにしても、物の怪より亡霊より、人の心が一番怖いのだと心底思う。
【余談】
1作目は読了したもののブログにアップし損ねた。読了したらすぐにアップしないと感想は薄れていくので、後からアップする気がなくなってしまうのが原因。
やっぱりさかさかとアップしないとね~。