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黒岩重吾『ワカタケル大王(下)』あらすじと感想

2012-09-23 10:52:31 | 紙の書籍
文春文庫 黒岩重吾『ワカタケル大王(下)』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。




【目次】
第九章 事前工作
第十章 仙界の鳥
第十一章 残敵掃蕩
第十二章 葛城山の秘計
第十三章 眉輪王の闇
第十四章 天運は吾にあり
第十五章 安康大王暗殺
第十六章 大いなる野望の果て
終章
解説 重里徹也


【あらすじ】
五世紀後半の日本を舞台に、武力と戦略をもって反対勢力の豪族らを滅し、国家平定を成し遂げたワカタケル大王の波瀾の生涯を描く。


【感想】
(上)巻からの続きで、眉輪王を利用し同母兄の安康大王を暗殺するところから、命が尽きるところまでが描かれている。以前にもまして陰謀が図られ、王子の周辺の側近たちの想いが微妙に変化していったり、彼らを取り巻く人間関係にも焦点があたっており、ただの武勇伝のようなお話にはなっていないところが、黒岩重吾の人物描写力と構成力のすごいところ。
やがて大王となりえたものの、最愛の韓媛は早世し、媛の忘れ形見は病弱で心もとない有様となる。倭国の最大の権力者となっても、この世の全てを思うがままにできるとは限らないと痛感する。
そして、大王とて人間である限り、老い、やがて命の尽きるときがやってくる。あれほどの野心と陰謀と暴力をもって邪魔者を排除してきたワカタケル大王ですら、こう言って最後を迎えます。
「おう、掬頼むぞ」
気掛かりでならない愛する白髮王子を、東漢掬に頼みこんで…。どんな人間であろうとも死は免れることはできず、人は皆死にゆくもの。
かつて絶大な権力を誇っていればいるほど、その最後はただただ哀しい。




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