四月二十七日から五月五日まで、信州に行っていました。
宿泊したのは上田の近くの山間です。
散歩をしたり温泉に行ったりと、のんびり過ごしました。
信州は、若い時代の私にとって詩情をかき立てる地名でした。
当時暮らしていた神戸から見ると、とても遠い別天地に思えたのです。
島崎藤村の「千曲川旅情の歌」を、暗記するほど唱えたものです。
音楽の教科書に載っていた同じ詩の歌曲もよく歌いました。
いまはもう、詩を暗記するようなセンチメンタルな気分は色あせたかもしれません。
教会で賛美をするとき以外、歌を歌うこともありません。
でも、変わっていないものがあるのですね。
「信州」という語感に対する、ある懐かしさです。
少女時代に擦り込まれたなにかが、まだ、生きていたのです。