ノアの小窓から

日々の思いを祈りとともに語りたい

台風のとき

2016年08月30日 | 自然



      台風情報は、子供の頃からあった。
      関西は、台風の通り道であったから、
      梅雨が終わって炎暑の夏が終わるころには、
      かならず、一度や二度台風が襲来する。

        

      台風が来るかどうかは、学校が休みになるかどうかなので、
      子どもたちは、何日も前から、生き生きと話題にした。

      インターネットはもちろん、電話さえすべての家にあるわけではないので、
      ちょうど、朝に襲来してくる台風に合わせて学校を休むべきかどうかは、
      学校に行ってみなければわからない。

      まあ、台風のピークはたいてい二時間もすれば通り過ぎるので、空模様を見ながら、
      行くべきか、止めるべきか、親と議論するこの朝もいつになく楽しかった。
      のんきな子供時代?、世の中全体がゆるゆるだった?

        ★★


      台風が午後から来るくらいのときは、学校に行った。
      学校で、授業打ち切りの発表があって、

      「皆さん。気を付けて帰ってください」と校内放送があったりする。
       屋根瓦が飛んでくるから、電柱が倒れてくるかもしれないから、
       マンホールがあふれるから、「気を付けて帰るように」と、
       同じ方向のものがグループを組まされて、並んで帰った。

       日ごろは嫌味な男の子でも、
       腕力のありそうな子は、そんなときなんとなく気負っていて、
       「俺のあとをついてこい」なんて言ってくれる。

       低学年の子なんか、「お姉さん。お兄さん」と頼ってくれる。
       それも案外、楽しかった。――のんき――

       だけど・・・すでに雨で陥没している道路があり、石垣が崩れていて、

       家に帰ったものの、瞬間風速60mかと思える時は、家が揺れた。

       雨戸を閉め、子どもは学用品を、親は貴重品を背負い、
       家の真ん中あたりにひとかたまりになっていた。

       いつもは外につながれている犬も玄関のたたきで、猫はおびえた目で窓際にいて、
       でも、二時間ほどたつと、たしかに風の音がおさまってくる。
       
       「あー、やっと行ったみたいね。ホンマ、戦争中の空襲みたい」
        母は、かならず、台風直撃と空襲とを結びつける。


        数年後には避難所になった小学校から、避難指示が出たその地域に、わざわざ帰っていて、
        けっこうみんな無事だったのは、不思議としか言いようがありませんね。

        ほんと、生きてきたのではなく、生かされてきたのですね。




             
       

      



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