「家庭・家族機能の外部化」ということが言われて久しい。ボクが初めてこの言葉を聞いたのは、60年代から70年代にかけての頃である。核家族化や女性の有業化が進むなかで、子どもの保育は保育園や学童保育へ、食事は外食産業へ、洗濯はクリーニング店へと、それまで家庭で行っていた様々な機能が外部に委託されていった。 社会学的に見れば「外部化」は日本の近代化とともに始まったのだろうが、ボクの実感で言えば、やはり60年代から70年代にかけての時代が転機だったような気がする。 「外部化」現象は収まるどころかドンドン進み、最近では家族機能のみならず生活そのものを外で行うという、「街頭化」志向の若者の出現を見る。 このような流れを最初に感じたのは、いわゆる「歩きタバコ女」を見た時だった。かつて女性がタバコを吸う場所といえば、会社の休憩室や喫茶店、バリケードの中と決まっていた。どれも密室ではないが、一応は屋内だった。それが最近は屋外で、それも歩きながら吸っている。 断っておくが、女だてらに歩きながらタバコを吸うなと言っているのではない。男だろうが女だろうが、歩行喫煙は良くない。今までの女性は屋内で吸っていたのに、それが男性同様に街頭化されてきていることを問題にしているのだ。 そして「電車内で化粧する女たち」の出現である。先日はJRの車内ですごい光景を見てしまった。シートに座るやいなや、ルイヴィトンのバッグから携帯電話を取り出し、ひたすらメール打ち。それが終わったら化粧道具が出てきた。鏡を見ながらファウンデーション、眉毛の書き込み、そして唇を開け閉めしての口紅塗り、さらに鉗子のようなものを使って偽睫毛をくっつけていた。 かつては、化ける作業なんて自室で行っていたはずなのだが…。おかげさまで、化ける工程をとくと観察することができた。 ひととおり化粧が終わったら、再び携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。話の内容が丸見えである。最初のうちは、たわいのない雑談をしていたのだが、次第に雰囲気が険悪になってきて、とうとう痴話喧嘩に発展していった。すべて丸見え。昔なら考えられないことである。 女の例ばかり書いていると叱られそうなので、男の例も書こう。 これも電車の中でのことだ。時間はちょうど昼時だった。向かい側に座った若い男が、おもむろにパンを取り出し食べ始めた。左手には1リットルの牛乳パックを持っている。20分ほどで菓子パン4個を平らげてしまった。 そして最後にデザートなのか、プリンを食べていた。小腹が空いたのでちょっと一口というのではない。完全な昼食摂取なのである。旅先での長距離列車内ならまだしも、首都圏の混雑した電車内での出来事に唖然としてしまった。 そして極め付きは、先日見た「歩きカップ麺」である。20代半ばと思われる女が、歩きながらカップ麺を食べていたのだ。コンビニの前に座り込んでスナック麺を食べているチューボーや小ギャルは結構見馴れているが、この「歩きカップ麺」にはビックリした。 しかし、このように生活の一部が街頭化することは、日本人の伝統的習慣からして充分考えられることだと、iモードの仕掛け人である松永氏が言っている。確かに日本では昔から、モバイルの前身とも言うべきグッズが多く存在していた。携帯用の食事である「おにぎり」、携帯用筆記用具の「矢立」、そして現代では携帯用ステレオ「ウォークマン」や「i-POD」など、路上で移動しながら使用するものの流れは、途絶えることなく連綿と続いている。携帯電話一台あれば、飛行機の予約から銀行の決済まで、なんでも街頭でできてしまう。これからも日本人、とくに若い人たちの生活は、ますます街頭化していくに違いない。 むかし、別役実の演劇で、路上のお膳を囲む家族というのがあった。10年後にはこれが現実のことになっているかもしれない。内と外の境界線が不明確になることによって、路上生活者との区別もつかなくなる「ボーダーレス」時代の到来だ。 ■「青葉」のカップ麺■ 北海道には大きく分類して、札幌の「みそ」、函館の「塩」、そして旭川の「醤油」と、それぞれ特徴をもったラーメンがある。旭川ラーメンといえば、「トンコツ醤油」ラーメンが主流なのだ。 札幌の味噌ラーメンが全国的ブームになる以前から、この旭川では「醤油」を主流とするラーメン文化が脈々と息づいていた。 その旭川ラーメンの草分けが、「青葉」である。昭和22年、初代村山吉弥が屋台から始めた。豚骨、鶏ガラの他に利尻昆布、鰹節、煮干し、各種野菜を入れ、沸騰させずに弱火で煮出したスープは、二代目、三代目が創業当時のやり方を頑なに守り続けている。(青葉の所在地:旭川市2条8丁目) さて、この「青葉」がカップ麺を出した。ファミリーマート、サークルK、サンクスなどで販売しているが、おすすめは、やはり「醤油」だ。しかし、所詮はカップ麺。店で食べるのとは大違いだった。 旭川らぅめん「青葉」のカップ麺の新聞記事 「青葉」のカップ麺に関するサークルKの記事 ![]() |
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