土曜日の早朝、羽田から北九州へと飛び立った。いきなりの話ではなく、2ヶ月くらい前からの予定であったが、このところ公私共に忙しくて、なんかあわただしい出発になってしまった。
この時期、西に向かう飛行機はもろに偏西風の影響を受けて時間がかかる。およそ2時間弱で北九州空港へ到着した。なんともローカルな空港であり、街中に降り立つ感じはちょっと怖い。ところがあと1週間もすると、新しい空港が海上にオープンするとのこと。「ありがとう北九州空港」とかの横断幕がかかげられていた。
バスで小倉まで出て、JRで門司港に着いた頃はもう昼を過ぎていた。空腹感が若干麻痺してはいたが、お目当ての店を探して歩いた。
「洋膳茶房 にしき」は雑誌に紹介されていたところだ。門司港は焼きカレーだとかカレーグラタンだとか呼ばれる食べ物の発祥の地だそうだ。その雑誌には白黒の写真で写っていたのだが、どうにも気になって寄ってみることにした。店は洋食屋の装いとは裏腹に、古い民家をベースにしているようで、ちょっと田舎の親戚ん家に来た、というような感じだ。応接間や和室、洋室にそれぞれテーブルが置かれ、そこで食事をする。ボクらは2階の一番奥にある洋室に案内された。迷うことなくカレーグラタンを注文。待つ間、美術館のようなその室内のレトロな工芸品や絵画、絵本等を物色した。15分程して出てきたのが写真のシロモノである。カレーライスにチーズを乗せてオーブンで焼いたものだ。中の野菜がまた常識を覆している。ごぼうや大根、こんにゃくまで入っている。これがまた良い食感なのだ。味も絶品なのでお近くにお寄りの際は立ち寄っていただきたい。店の雰囲気も最高なので良い旅の思い出になるだろう。食後に出てくる有機栽培のコーヒー、これも香ばしくて旨い!
門司港を一通り散策して、疲れた足を癒すために向ったのは「門司港地ビール工房」。海辺に建つちょっと倉庫っぽい建物で1階はジンギスカン、2階はビアレストランになっている。
3種類のオリジナルビールと季節物のスペシャルビールが2つあったので、スペシャルを選んでみた。色が薄い方は冬用らしく、身体を温めるためにアルコールの度数が高いそうだ。黒い方は黒ビールっぽいが燻されたホップを底面発酵させて云々・・・ということらしいが気にせず飲んでみた。ボクの好みとしては黒い方だ。濃厚な味わいがたまらない。おつまみのミックスナッツに良く合うと思った。
港町というのは、当然のことながら船によって栄えてきた。明治時代、鎖国が解かれて海外からいろんな物資が入り込むのと同時に文化もやってきた。だから港町というのは、外国文化の最初の入口だった為、とてもモダンな町並みになっていったのだろう。それを現代の目から見ると、レトロという言葉がピッタリな印象になる。小樽にせよ、横浜にせよ、レトロな雰囲気を持っているのは港町の特徴だ。ボクはこの大正ロマンな雰囲気が大好きなので、ちょっと作られたような感があるのは否めないが門司港というところが大変気に入った。もっと時間を作ってゆっくりまわってみたい街だ。次の港町はどこにしようかと今から思案している。