今ではエアロロードの筆頭としてCANYONのAEROAD CFRが有名ですが、且つてはスペシャライズドのVENGがエアロロードの代名詞だったのです。2019年当時cannondaleもSystemsixというエアロロードを開発していましたが、マクラーレンとタッグを組み、本格的な風洞実験を繰り返したスペシャライズドのVENGEが、サーヴェロのS5やトレックのマドンSLR7と比べても優れたエアロ性能を示していたのです。
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しかし、他社も本格的な風洞実験を始め、cannondaleはSystemsixで培ったノウハウを元にSupersix EVOを第4世代へと進化させます。イネオスから東京五輪の金メダリストリチャル・カラパスを移籍させ、大々的に宣伝に打って出たものの、金色にペイントされたバイクはカラパスの落車によりツール・ド・フランスという大舞台から早々に下りてしまうことになったのです。
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この頃にはCANYONのAEROAD CFRがマチュー・ファンデルプールの走りによって評価を高めて行ったのです。今年の春はロンド・ファン・フラーデレンにパリ・ルーベと圧倒的な走りを見せていたのですが、ツール・ド・フランスではカラパスが後半見事な走りで、山岳賞のマイヨ・アポア・ルージュを獲得し、面目躍如を果たすことが出来たのです。
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カラパスのバイクにはLAB71のロゴがありますが、バイクはHi-Modだそうです。CANYONのAEROAD CFRは確かに優れたエアロロードですが、万人向けとはいえない製品かもしれないと個人的には考えています。レース志向の高い人ならAEROAD CFRを選んで問題は無いと思いますが、私のようなホビーライダーにはむしろ乗り辛いのではと感じているからです。
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理由はあれだけダウンチューブを縦に扁平させたら縦の振動はどうなるのだろうと思うからです。バイクとライダーの間には少なからず相性問題があるのです。実際に使ってみると「最速バイク」や「最軽量バイク」であったとしても、自分に合うとは限らないということです。どのような機材であれ、バランスが一番大切で、バイクが軽すぎても前に進まないと感じてしまう場合もあるのです。
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また、いかに空力性能が高くても、垂直方向の剛性が高すぎてしまうと乗り心地は悪化してしまうものです。AEROAD CFRはその典型かもしれないのです。「マチュー・ファンデルプールが乗るから良いバイク」というのはプロモーションとしては成功しているのかもしれませんが、逆に言うとファンデルプールだからこそ乗りこなせるバイクかもしれないと私には読めてしまうのです。
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一方の第4世代のSupersix EVOはエアロロードとしてはやや見劣りはするものの、登りや悪路を含めたオールラウンドなエアロロードであることは間違いありません。とにかく乗り心地が良いバイクなのです。最上級モデルのLAB71でもカラパスが使用するHi-Modでもありませんが、1年間乗って来て、とにかく楽に走ることが出来るバイクだと感じています。
CannondaleにはSynapseというエンデュランスロードもありますが、余程の悪路やグラベルを走らないのであれば第4世代のSupersix EVOの方が空力的にも楽に走ることが出来る理屈なのです。ホイールベースが長く、ヘッドアングルも寝ているので乗り心地が悪いはずがないのです。