市販されているクランク長のバリエーションはそこまで幅広いものではありませんが、少しのクランク長の変化が、ライダーに大きな影響を与えるようです。近年のプロ選手がショートクランクを利用しているのがその証左だと思われます。
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その理由のひとつがクランク長は適切なライディングポジションをとるための重要な要素だからです。わずか数ミリであってもクランク長を変えるとペダルまでの距離が変化するので、それに伴ってサドルのポジションも変更する必要が出てきます。そうするとフレームに対してライダーのポジションも変化するので、股関節の角度が浅くなったり深くなったりします。
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クランク長はバイクフィッティングの要素のひとつで、ベストなクランク長は身長や体格、関節可動域などによって変わってきますが、クランク長の選択にはある程度の幅があります。実際、異なったクランク長でペダリングをしても何ら問題がない場合や、クランク長変更による差を感じない場合もあるのです。では、ふたつのクランク長で悩んでいるとして、どちらのクランク長が適しているのでしょうか?短い方、長い方どちらでしょう?また、それぞれのメリット、デメリットはどのようなものなのでしょうか?
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これには快適性やエアロダイナミクスに影響するという研究があります。つまりクランク長を適切に調整できれば、パフォーマンス向上に繋がるという訳です。多くの人は長いクランクの方がパワーを発揮し易いと考えてきました。クランクが長いと、トルクをかけやすくなるという考え方です。先に記したてこの原理からの先入観です。
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確かにてこの原理からは長いクランクの方がメリットは大きいと言えますが、クランク長とパワー発揮の関係を調査した研究では、市販されていないほど極端に長いクランクの場合にのみ最大パワー発揮にとって有利であるとされています。一方で極端に短い120mmというクランクにおいては、通常のクランク長の2-5%ほどのパワー低下にとどまるという研究結果があるのです。そしてほとんどのアスリートにとって、170mm前後が丁度良いクランク長であるという研究結果です。市販のロードバイクに170㎜のクランクが多くアセンブルされているのはそうしたデーターに基づいているからです。