私は葛飾の出身です。
講演などでは「葛飾柴又です」とちょっと尾ひれをつけることもありますが、正確には新小岩です。
そこには、小学校に上がる直前から結婚するまで過ごした家があります。
父親が亡くなってから母親がしばらく一人で住んでいたのですが、東北の震災の後に私の自宅近くの横浜のアパートに引っ越しました。
それからこの家は人に貸してきたのですが、老朽化が目立ち、借地権の書き換えも近いことから取り壊すことにしました。
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住人が退去してから、工事の下見も兼ねて久しぶりに家の中に入りました。
子どものころの環境は狭く感じると言いますが、そんな印象ですね。
いたる部屋に思い出があります。
かつてここにはみんないました。
ここでギターを始めました。
いろいろな音楽を聴きました。
高校入学はそんなに苦労はなかったのですが、大学入試勉強や今の仕事の国家試験勉強はハードなもので1日12時間以上にも及びました。
空手と水泳に明け暮れ、むさぼるように読書し、友人と麻雀をしながら夜を明かしたのもここです。
実際にもう二度とここで暮らすことはない、寝泊りすることはないとわかっていても、心のどこかでよりどころになっていた部分があります。
郷愁という言葉では言い尽くせません。
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今回は人のお世話になり、6月から取り壊し作業が始まっています。
今度訪れる時には更地になっているでしょう。
私をはぐくみ、その後も見守ってくれたこの家に感謝したいと思います。
ありがとうございました。
toko