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平取町立二風谷アイヌ文化博物館②採る クワリ(仕掛け弓)チプ( 丸木舟)マレプ(自在もり)アプ( 魚とりかぎ)

2024年06月06日 09時22分25秒 | 北海道

平取町立二風谷アイヌ文化博物館。平取町二風谷。

2022年6月9日(木)。

クワリという仕掛け弓による狩猟は台湾原住民族も同じである。

 

採る (続き)。

クワリku-ari。和名:仕掛け弓(狩猟用具)

サイズ(mm)    最大幅1230 長754 高826 材料・材質        罠猟/熊猟/木製 製作者   萱野茂

収集(製作)時期   1977/昭和52年頃か 収集(製作)地域    二風谷

説明1(使用場所・方法)   「クワリというのはク=弓、アリ=置く、つまり仕掛けておく弓のことです。これはいちばん多く熊をとることができる狩猟用具であり、アイヌたちが頼りにしていたものでありました。」▼「熊の足跡を見つけたり、熊の姿をちらりとでも見たら、熊がどうしても通らなければならない細いやせ尾根や熊の通り道のそばの草むらにクワリを仕掛け、マカニッアイをつがえておきます。

説明2(製作方法)  「Y字型棒、弓、矢、ヘチャウエニ、糸、房目の板▼「このクワリに仕掛けておく矢はマカニッアイといって、遠くにいる獲物を射るのではなく、目の前にいる熊に射こまれる矢なので、矢羽も軽さも必要なく、かわりに重く丈夫に作らなければなりません。それで、木の中でもいちばん堅くて重いとされているさびた(のりうつぎ)の木で作ります。▼「クワリのすえ方は、直径七センチくらいの先端がY字型になった棒を土に打ちこみ、Y字状の上の部分に、人間でいうと左腕の役目をするしっかりした棒を水平に置いてしばりつけます。この腕木の先の方にアイチセと呼ぶ、がんび(うだいかんば)の木の皮で作った細長い筒をしばりつけます。アイチセとはアイ=矢、チセ=家ということで、弓を仕掛けておいて雨が降った場合、矢尻に塗った毒が流されるのを防ぐと同時に、矢のねらいを定めて、横へそれるのを防ぐ役目をします。これはがんびの皮を火にあぶって柔らかくし、それを矢が入るくらいの太さに丸めて、糸でぐるぐる巻いてそのまま冷やして作った堅い筒で、かなり激しく雨が降っても中へ水がしみこんでいくようなことはありません。一方で手ごろなおんこ(いちい)の木を切ってを作っておきます。カリンパウンクと違って丸木のままでよいのですが、この方が木が太いので、どうしても一人で曲げることができないときは、二股になった木の片方の枝を途中で切っておいて、股のところに弓のはしをはさみ、体で弓を曲げてつるを張ります。アイチセをしばりつけた腕木の先端に弓をかませて弓づるを引き、そこにマカニッアイ(仕掛け矢)をつがえ、へチャウェニで押さえます。へチャウェニの先にはノプカと呼ぶ延べ糸がかけてあり、熊の通る道に張ってあります。ノプカはクカと同じように、カパイという背丈の低いいらくさの繊維をよって作った糸でできるだけ細くより、熊の嗅覚を迷わすために熊の脂を塗っておきます。これでノプカが引っぱられるとヘチャウェニがほごれ、矢が発射されることになります。このノプカは、人間への安全を考えて、ヘチャウェニのところで糸に延び(遊び)を加えてあります。延びとして加える糸の長さは、糸のはしを左手の人差し指と親指でつまみ、親指のうしろを通して親指側から手首の内側をぐるりとまわし、元のところに戻った長さ(約三十三センチ)で、その分をヘチャウェニのところにはさんでおきます。この延びを加えることにより、万一人間が歩いていて足が糸にふれて矢が発射されたとしても、矢は大腿部のうしろ側を飛び去るわけです。また、この延びは、熊であれば頭を下げて歩くので、首のあたりが糸にふれて矢が発射されたとき、俗にいう肋の三枚目に当たるように計算されているものです。熊の足跡によって糸の高さを決めますが、足跡が大きくても体の小さな熊や、逆に足跡は小さいのに体のずいぶん大きな熊もいるので、土の柔らかいところで足跡の窪み具合によって判断するのがよいとされていました。しかし、糸の高さの一応の目安として、男が四つん這いになり、たなごころを土にぴったりつけて腕をたてた腕のつけ根までの高さが標準とされていました。

チプ cip 和名   丸木舟

サイズ(mm) 長6340 最大幅640 高420 材料・材質   材質:かつら 製作者   萱野茂

収集(製作)時期  1965/昭和40年頃 収集(製作)地域     二風谷

説明1(使用場所・方法) 「チプ(舟)とは「チ=我ら、オプ=乗るもの」という意味であり、これは丸木舟のことです。この丸木舟は、昔のアイヌたちにとって欠かすことのできない生活必需品でした。

説明2(製作方法)   カツラ。▼「私がはじめて丸木舟を造ったのは、昭和二十二年の春でした。自家用の舟を造ろうということで、二風谷村の対岸にあるパラタイ沢で、父の指導を受けながら掘りました。舟造りは、木を選ぶことからはじまります。舟を造るのにもっともよい木はばっこ柳で、その次がかつらの木です。太くて舟に造りたいようなピンニ(やちだも)やチキサニ(にれ)の木は重いので、舟を造ってもあやつりにくく、操作をあやまり岩に激突したりして、時には死者を出すことにもなります。それで、これらの木で造った舟をケユクチプ(ケウ=しかばね、ウク=取る、チプ=舟)と呼んで嫌いました。山を歩きまわって舟材になる太くてまっすぐな立ち木を選ぶわけですが、アイヌは、まっすぐに伸びて、枝の張り方も均整がとれた立ち姿の美しい木を、心の正しい木であると考え、舟を造る場合はそのような木を選びます

▼「安定の良い舟を造るための絶対的な条件は、立ち木の北側を舟底にすることです。つまり、北側は日当たりが悪いため木の生育が遅くて年輪がつまっており、成長の早い南側に比べると重いので、北側を舟底にすると重心が下がって安定がよいわけです。立ち木の北側を俗に[雪背負い」といいますが、これは冬中雪がへばりついていて雪を背負っているようにみえるからです。夏でもこの雪背負いにはこけが生えています。したがって、山で道に迷った場合、たとえ夜であっても、太い立ち木をなでてみてどちらが北であるのか方角を確かめることができるのです。木を伐り倒したら、節やこぶのないところを選んで長さを決めます。節やこぶのある部分は、削ると往々にして空洞になっていることがあります。舟を掘っていくときには、人数が多いと危険ですので、二人で作業します。最初は、まさかりで皮をきれいにはぎ取ります。年輪を見てもう一度確認し、北側を下にして両端を三尺(九十センチ)ずつ残し、上面の七、八か所に鋸目を約六寸(十八センチ)の深さに入れていきます。そして、鋸目ごとに割りとりながらその深さまで平らに削り、両端は上から四寸(十二センチ)くらいのところから下は斜めに削りおとします。舟べりの厚さを決め、まさかりで舟の内部を荒ぐりしてだいたいの舟の形を作ります。ここまでに二人で五日から一週間はかかるでしょう。それからは一人で、もったを片手に持ってまさかりの跡がなくなるまできれいに削りとり、内側から仕上げていきます削りすぎないように手でなでて厚みを計りながら慎重に削りとっていきます。とくに舟の舳先の上面はチプナンカ(舟の顔)といって、ま上から見ると美人の富士額を思わせる形に削ります。内側をくり終わったら、舳先とともの部分の両わきを削りおとします。それから中へ棒を立てて深さを計り、その棒を舟の外側から当てて内側の舟底の位置を印をつけてから舟をうつ伏せにします。 舟をひっくり返すときはてこを応用するわけですが、直径十センチ、長さ五~六メートルほどの棒を片方を長くして舟べりと直角にしっかりとしばりつけます。そして、棒の先端に綱を結びつけて引っぱると、二人くらいで楽に返すことができます。このやり方は、四百キロもある熊を一人でとって、皮をはぐために熊をあおむけにしたいときにも使います。熊の足と胴体にてこ棒をしばりつけて引っぱると、一人でも楽にひっくり返すことができるものです。 舟をひっくり返したら、舟底の厚さが十センチくらいになるように外側を削りとり、舳先とともの部分はいくぶん丸みをつけながら斜めに削って、舟底を仕上げます。舟底を仕上げたらもう一度表に返して、綱を通すプイという穴を舳先にあけ、それより少し内側の舳先より三尺(九十センチ)くらいのところにチプサキリという横棒を取りつけます。このチプサキリの取りつけ方は、両方の舟べりに一方のは深くもう一方のは浅く、それぞれ穴を掘り、取りつける横棒を深い方の穴にいっぱいに差しこんで、それを戻しながら浅い方の穴にぴっちりとはめこみます。そして、深い方の穴の奥にできた隙間には木屑をたんねんに詰めこんでふさいでしまい、横棒がまわったりぐらついたりすることがないようにします。このやり方を俗に「厩栓棒方式」と呼んでいます。そしてこのチプサキリから十センチぐらい舳先よりの舟べりの内側に直径二センチ、深さ一センチほどの窪みをつけます。これは舟を上流へ遡上させるとき、一人が舟の綱を引き、他の人が棹をこの窪みに当てて岸から舟を押しはなすためにつけられたもので、このようにして舟を引っぱると本当に楽に舟を遡上させることができます。この智恵の窪みのことをアイヌ語で何というのかを父から聞きもらしたことを残念に思います。

マレプ(マレク)ma-re-p(marek) 和名    サケ・マス漁に使う自在もり

サイズ(mm) 長703 径24 もり先・幅94×73 縄1650 材料・材質      突き漁/木製柄/鉄製鈎/鮭鱒漁

製作者   萱野茂 収集(製作)時期  1971~1972/昭和46~~47年頃 収集(製作)地域     二風谷

説明1(使用場所・方法)「この漁具は夏から秋にかけて産卵のために川をのぼってくるますや、それから一足おくれてのぼりはじめるをとるのに用いられるものです。持ち運びしやすいこともあって、川幅の広いところでの鮭漁だけでなく、上流や奥山の小沢でのます漁にも盛んに使いました。台木とかぎだけをサラニプに入れて運び、魚をとる場所についてから台木にマレプニプと呼ばれる二~三メートルほどの柄を切ってつけ、水に潜らすようにして魚を突くのです。突くときには魚を突きやすいようにもり先を向こうに向けておきますが、突きさした魚を引き上げるときには、そのもり先が回転して手前を向き、かぎの役目に変わります。つまりマレプはもりであると同時にかぎでもあり、この工夫のおかげでいったん突いた魚は確実に引きあげることができるのです。

説明2(製作方法)  「マレプは三つの部分に分かれます。根元を中心にして前後に半回転する釣り針形の鉄のもり先と、それを取りつける台木、そして使うときに適当な木を切って台木にしばりつける柄です。台木にはやちだもの木を使います。この木は髄が太くて溝を彫ったりする細工がしやすく、丈夫なのです。太さ三センチくらいのものを六十センチほどの長さに切り、先端から三センチくらい残したところに穴を開け、そこから手元の方へ約八センチの長さに溝を彫っておきます。一方鉄のもり先にはその根元の部分(釣り針でいえば糸を巻きつける部分)の内側に細長い鹿のなめし皮を当て、糸できっちり巻きつけてとめておきます。この皮紐をつけたもり先の背を、先ほどの台木の溝に埋めこむように当て、根元から出ている皮ひもを穴に通して裏に出し、その先に太さ六ミリくらいのハラキカ(しな縄)をつなぎます。これでもり先の取りつけは終わりです。

アプ ap 和名   魚とりかぎ(流し鈎)サイズ(mm) 長3670 鈎・長300

材料・材質   突き漁/木製柄/鉄製鈎/鮭漁 製作者   不明 収集(製作)時期    昭和35年

収集(製作)地域    二風谷

説明1(使用場所・方法) 「このアプはふつう、流しかぎといわれているもので、やはり産卵のため川にのぼってくる鮭をとるのに使われましたが、水の中がよく見えないところや暗いときでもとれるように、特別の工夫がしてあります。だから上流よりも人里に近い川でおもに使われました。鮭がのぼってくる通り道にかぎを上向きにして、川の流れにそって流します。かぎの内側には棒から一センチほど離して手元まで糸が張ってあり、それに魚の腹びれが触れると手応えが伝わります。そのとき柄をぐっと引くと、かぎに魚がひっかかってくるのです。魚の群れの先頭にくるのは雌なのでそれはとらず、後からくる雄魚をとるようにします。それは鮭の習性として雌魚のいるところに雄魚が寄ってくるので、雌魚はとらずにできるだけ後まで残しておき、同じコースをたどって寄ってくる雄魚だけを先にとるわけです。

説明2(製作方法)  部品が揃っている。「鉄製のかぎの部分に、やちだもの木を火にあぶって柔らかくしたものをぴったりと当てがって、紐できっちりしばってとめ、その後方に長い柄をつけます。この柄は、しうりという木を割って作ります。しうりの木はまっすぐに割れて、削りやすくて、長く使っても狂いがこないので、多くはこの木を使いました。この他、待ちかぎと呼ばれる漁具もありました。