2022年7月 京都童心の会 通信句会結果(訂正版)
【選評】 後半
○金澤ひろあき選
特選 天 65 ふと失くしたものを想う博物館のミイラ 青島巡紅
「永遠の生」の願望でミイラになった人達。その想いをずっと抱き続けているのでしょうか。今もどんな夢を見ているのと聞きたくなります。
人間の業のようなものを考えさせられます。
特選 地 6 野菊のごとく男は黙って戦争へ行ったか 暉峻康瑞
黙って戦場へ行かざるを得なかった苦しみ、悲しみ。今、ウクライナではこれが現実になってしまいました。一日も早い平和を願います。
特選 人 44 七夕や子の短冊のくさび文字 三村須美子
たどたどしい文字だけど、成長の証ですね。短冊にはどんなお願いを書いていたのかな。見守っている親のまなざしのあたたかさ、喜びが伝わりますね。
他、印象に残る句です。
2 イマジン聴く丸い猫 野谷真治
平和な風景です。ジョン・レノンの「イマジン」の願いが実現したかのような。
14 子供3人五十越え 歩幅半減 白松いちろう
子供が社会人になり独立し、家庭を持つ。それと同時に親は老化。私もしだいにそうなりつつあります。他人事じゃないです。
他人事でない詩は心に残ります。
27 青田に風通り抜け通勤路 野原加代子
生活の中から生まれる句ですね。ほっとひといきのひととき。暑い日の、さわやかさを感じるひとときです。印象に残りますね。
69 引越の荷も解けぬまま明け易し 中野硯池
引っ越しはしたものの、まだ荷を解けていない。あわただしい雰囲気が、短い夜の「明け易し」で強調されています。一つのことばがとても効果的です。
79 冷房のおかげで生き延びる夏三つ月 蔭山辰子
今年は梅雨明けが早く、暑い月が四ヶ月位になりそうです。年々気温も高くなっています。気をつけたいです。
○野谷真治特選
37 夕焼けに「アンパンマーン」と一斉に 金澤ひろあき
「アンパンマン」の作者、やなせたかしさんは、二〇一三年に亡くなられた。
初代の「アンパンマン」は、短編集「十二の真珠」にある。元々は、アンパンを配るオジサンであった。最後は悲しい結末である。
現代のアンパンマンは、今も元気に、空を飛び回っている。夕焼けとアンパンマンの組み合わせがいいです。
○野原加代子特選
70 舟屋出るエンジンの音明け易し 中野硯池
舟屋を映像でしか見たことはありませんが、旅をしてみたい場所の一つです。夏の明けは早く、情景が目に浮かびます。
私の母が早起きして畑を鍬で耕し、馬鈴薯を掘り起こして、その日の朝食、お味噌汁の具になっていたことが記憶にあります。他の方の俳句から、ふと母を想い出すことがあります。お盆にはそんな母の事を想い出しながら、墓参りしたいと思います。
○蔭山辰子特選
48 雨上がりムクゲの花の道一面 三村須美子
ぱっちりとした大輪のムクゲの花、夏のエネルギーを覚えます。
○三村須美子特選
65 ふと失くしたものを想う博物館のミイラ 青島巡紅
エジプト、ピラミッド、ファラオ、ミイラ等にどんなイメージを持つでしょうか。永遠の生命は人間のゆめ、希望です。物体となったファラオのミイラが生存中のさまざまな出来事、昇天したであろう、あるいは再生したかもしれません。数千年の時をミイラ化し、博物館に保存されているミイラを見て、自分の人生で失ったものをミイラに投影しているようでもある。さりげなく「ふと失くしたものを想う」と「博物館のミイラ」の取り合わせが良いと思いました。
○岡畠真理子特選
30 七夕は思い出も嘘も美しき 金澤ひろあき
意味深な雰囲気がする句ですが、何はともあれ七夕というのはロマンチックな香りがしますね。
83 ひとときの涼をたのしむカップ氷 蔭山辰子
カップに入った氷のことでしょうか?最近は「映える」かき氷がよく話題になっていますが、シンプルな昔ながらのかき氷がやっぱり一番かなとも思います。
【お便りより】
○暉峻康瑞様
「暴力とは言葉の放棄である。不安の正体は高慢な自我。‘’俺の云うことを聞いてある‘’」
前総理が消えた歴史をふりかえると。
「わからんもんがわからんことをわからんようにわからん人にお喋りするからますますわからんようになるのだ。」
人間の世界の善悪について親鸞は「善悪の二字はわたしにはわかりません。念仏のみぞまことにて候」と。
句
カラスが原発に止まって阿呆と啼いている
煎じつめれば人間赤ん坊になって黄泉に往く
○平岡久美子様
暑中お見舞い申し上げます。
先日は童心の会会報ありがとうございました。元気になれました。
「泉賞」の参加いただきました。
「泉」へにもよろしくお願いいたします。
なんだか晴ればれとしない夏ですが、お体ご自愛下さいませ。
【お知らせ】
○8月句会のお知らせ
8月21日(日)午後二時
阪急長岡天神駅東口 喫茶 アーバンにて
※コロナ流行により、緊急事態宣言が出された場合、会合は中止します。
通信句会で参加されている方は、84円切手三枚を作品に同封下さい。