京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

「主流」NO、648より

2022-03-31 07:55:44 | 俳句
「主流」NO、648より
        金澤ひろあき
 古い話になるが、阪神大震災の時、自分が生き延びたのは、たまたま運が良かっただけだと感じた。以後、その想いは消えない。
 東日本大震災の時、同じ思いがよみがえった。そしてコロナ禍で身近な人が感染し、私もPCR検査を受けた。結果は陰性だったが、同じ思いを抱いている。
 いつか突然、終わりが訪れるかもしれない。だから、生きている今、やれることをやるしかない。私にとってこの想いをありのまま述べることができるのは、今の言葉で表現する口語俳句であり、表現範囲が広い自由律俳句であり、連作であったりする。
  独り言が溜まってきた 亡妻と話す      鈴木喜夫
 胸の内にある想いを、ふともらす。ありのままもらす。そうやって出た言葉が、胸の奥に届く。鈴木瑞恵さんの「こもれびをにぎりしめる母火葬」の句と共に、胸の奥に届いた。これが詩歌の本来のあり方なのだろう。
 詩が出てくる時、想いを述べている自分と、その自分を見ているもう一人の私がいる。そして、想いを述べている自分を、言葉を通じてもう一人の私が受け止めたり、受け容れていたりしている。語り手である自分の、最初の読者は私である。言葉にするということが、受け止め、受け容れる契機になっているような気がする。
  孤独死は勇気いるだろ寂しかろ        松下日佐男
 独居している人の数が増えているし、その人たちは高齢化している。それを他人事でなく、我が事として見ている。言葉にしてはじめて見えてくるものがある。
  おわるということば頭の一角を出ていかない  田中 陽
 実は私にもずっと頭の中にこびりついていることがらがある。私の場合は物語であるが、田中陽さんお場合は「おわる」という一語。しかし、この一語が背負う「物語」は重い。
  デジタル派?私絶対コオロギ派        鈴木和枝
  ITは信じない祖母伝来の梅干し甕      田畑光
 ネット社会になり、スマホが普及し、便利になった反面、使いこなせず情報から置き去りになる人、フェイク情報など危険も大きくなっている。新しい技術が開発されるとともに、人出が削減され、逆に忙しくなっている。技術は利益を生み出す側面もあるが、「自己増殖」を優先する。技術が次の技術を生み出す方向に加速していく。人間の都合などおかまいなしに。その違和感をお二人はしっかりととらえていると思う。


フリー句「六根清浄」の巻

2022-03-30 07:50:43 | 俳句
フリー句「六根清浄」の巻
六根清浄お山ひっそり桜のつぼみ   ひろあき
交差する靴の向こうの影に咲く花   巡紅
広い都会に一人暮らしが始まった   ひろあき
たまに食べると絶品チキンラーメン  巡紅
炭火おこすキャンプ場の昼御飯    ひろあき
雪渓で冷やした缶ビール吊り上げる  巡紅
放浪の吟遊詩人立ち寄ってくる    ひろあき
夜明け前火を囲む若者の踊りの輪   巡紅
だんじり祭に向かう気合いで     ひろあき
商人として頑張っただけなのに男爵の位なんて要らねえと言えない理不尽  巡紅
上方落語の鴻池はん日本動かしとった ひろあき
頭打つ凄く良い音を残して降りていくお客さん 巡紅
思い出し笑い蟻さんごっつんこ    ひろあき
小雨降る桜の木の下前撮りカップルの譲り合い 巡紅
いちげんさん定番コース京の春    ひろあき
二人の写真名所で撮って巡る老夫婦  巡紅
くうくうと鳩取り囲む日永かな    ひろあき
※東本願寺での出来事です。
隣の妻の眼を見て歌う粋な老紳士   巡紅
日向ぼこついでにベランダに干す布団 ひろあき
町内に戦死者告げる黒腕章を陰干しする 巡紅
花見には無言の帰国なさるとは    ひろあき
国家の為に死んだ万歳と言わねばならない時代がありました 巡紅


「さんしょ」NO、173を読んで

2022-03-29 07:59:45 | 俳句
「さんしょ」NO、173を読んで
        金澤ひろあき
拝復 コロナ流行が続く中、地震が起きたり、ロシアがウクライナに侵略戦争をしかけたり、世界はどうなって行くのだろうと不安です。
そんな中、「さんしょ」NO、173を読んでいるとほっとします。そしてこんな平和を大切にしたいと思うのです。
○トンよりドンお日様背中押しとくれ   鈴木和枝
 強いはげまし、後押しが欲しい心境が「ドン」によく出ています。今、そんな時代なのかもしれません。
○ぽかぽかぽか頭からっぽ日向ぼこ    上田美穂子
 頭がからっぽになるくらい日向ぼこを楽しみたいですね。苦労も悩みもみんな忘れて。
 それだけリラックスして元気になりたいものです。
○今一番友が腹から笑った電話      細川幸恵
 マスク生活、人と対面で会えない生活。声もつい控えがちです。とても窮屈です。それを吹き飛ばす力をもらたちょうな気がします。
○福豆食べる内なる鬼を追い出すぞ    石神君子
 そうです。外なる鬼だけでなく、閉塞した生活や現実の中で溜まっている内なる鬼も追い出したいです。
○クローバー撫でて一時少女に返る    山口美代子
 幼い頃、早く大人になって色々なことができることを願って、「大人ごっこ」の遊びをしたことがあります。年をとると逆に子供の頃に返ってみたくなるのです。
 そのきっかけが「クローバー」。四つ葉のほうでしょうか。   

フリー句「水素から」の巻

2022-03-28 08:13:27 | 俳句
フリー句「水素から」の巻
水素からホップステップジャンプで僕らの宇宙 巡行
樹肌撫でる同じ大地に生受けて        ひろあき
ご苦労さんですと最初の生命の跡       巡紅
はじめてのおつかい試練のりこえる      ひろあき
だったのかデート犬の散歩に手を繋ぎ     巡紅 
月夜には二人の長いシルエット        ひろあき
互いの心臓になれなかった峠道        巡紅
麓の村は温泉の宿花盛り           ひろあき
湯煙桜星も清かに冷酒に花びら        巡紅
チャンピオンベルト再び取り戻し       ひろあき
舞台を降りる力の抜けた肩に紙吹雪      巡紅
主役より光る脇役千秋楽           ひろあき
大皿の猪肉と床の生け牡丹の決闘       巡紅
朝イチの朝市気合い十分な          ひろあき
バーゲンは女の戦場男は子守         巡紅
女には独立記念日ありました         ひろあき
サイボーグになっても働くお父さん      巡紅
巣籠もりでズームとにらめっこ        ひろあき
ドローンで街を見下ろすと空に憧れた自分がここかしこ 巡紅
空からふわり魔女の宅急便やってくる     ひろあき
帰宅すると腰痛ゴムバンド届いていた     巡紅
一生つきあう彼女の名前と病の名前      ひろあき

「しだれ梅」の巻

2022-03-25 07:50:57 | 俳句
「しだれ梅」の巻
しだれ梅夢の群舞の紅と白     ひろあき
※城南宮のしだれ梅、満開です。
桃の花樹の下眠る髪なびく     巡紅
山水画中から仙人抜け出して    ひろあき
まだ遊ぶお腹の虫が呼ぶ家路    巡紅
かる鴨の列なし親について行く   ひろあき
コロナ禍と乗客戻しの会談す    巡紅
デフォルトの文字が躍っているニュース ひろあき
毎日が書き初めの様な子供達    巡紅
お絵かきの時間になった自習時間  ひろあき
ままごと拗れてお嫁さんになると泣き出す子 巡紅
順番待ちができずぶつぶつ蟹の泡  ひろあき
ここかしこ生命を泡沫に変える砲弾 巡紅
世界へと嵐広がる予感して     ひろあき
嵐電の沿線には京都人さえ忘れてる風景がある 巡紅
路地の店生姜入りあんかけうどん  ひろあき
※京都に来て初めて食べたのです。寒い冬には暖まりますね。
半世紀空洞で蒲鉾型の遊具まだ健在 巡紅
公園に保存の市電花盛り      ひろあき
今でもあるかのな市電の児童館   巡紅
母が押してくれたブランコのうしろ ひろあき
愚痴をこぼしには行けない春彼岸  巡紅
子育ての中でわかる親の思い    ひろあき
霊魂にも霊族なるものがあるらしい 巡紅