「主流」NO、648より
金澤ひろあき
古い話になるが、阪神大震災の時、自分が生き延びたのは、たまたま運が良かっただけだと感じた。以後、その想いは消えない。
東日本大震災の時、同じ思いがよみがえった。そしてコロナ禍で身近な人が感染し、私もPCR検査を受けた。結果は陰性だったが、同じ思いを抱いている。
いつか突然、終わりが訪れるかもしれない。だから、生きている今、やれることをやるしかない。私にとってこの想いをありのまま述べることができるのは、今の言葉で表現する口語俳句であり、表現範囲が広い自由律俳句であり、連作であったりする。
独り言が溜まってきた 亡妻と話す 鈴木喜夫
胸の内にある想いを、ふともらす。ありのままもらす。そうやって出た言葉が、胸の奥に届く。鈴木瑞恵さんの「こもれびをにぎりしめる母火葬」の句と共に、胸の奥に届いた。これが詩歌の本来のあり方なのだろう。
詩が出てくる時、想いを述べている自分と、その自分を見ているもう一人の私がいる。そして、想いを述べている自分を、言葉を通じてもう一人の私が受け止めたり、受け容れていたりしている。語り手である自分の、最初の読者は私である。言葉にするということが、受け止め、受け容れる契機になっているような気がする。
孤独死は勇気いるだろ寂しかろ 松下日佐男
独居している人の数が増えているし、その人たちは高齢化している。それを他人事でなく、我が事として見ている。言葉にしてはじめて見えてくるものがある。
おわるということば頭の一角を出ていかない 田中 陽
実は私にもずっと頭の中にこびりついていることがらがある。私の場合は物語であるが、田中陽さんお場合は「おわる」という一語。しかし、この一語が背負う「物語」は重い。
デジタル派?私絶対コオロギ派 鈴木和枝
ITは信じない祖母伝来の梅干し甕 田畑光
ネット社会になり、スマホが普及し、便利になった反面、使いこなせず情報から置き去りになる人、フェイク情報など危険も大きくなっている。新しい技術が開発されるとともに、人出が削減され、逆に忙しくなっている。技術は利益を生み出す側面もあるが、「自己増殖」を優先する。技術が次の技術を生み出す方向に加速していく。人間の都合などおかまいなしに。その違和感をお二人はしっかりととらえていると思う。
金澤ひろあき
古い話になるが、阪神大震災の時、自分が生き延びたのは、たまたま運が良かっただけだと感じた。以後、その想いは消えない。
東日本大震災の時、同じ思いがよみがえった。そしてコロナ禍で身近な人が感染し、私もPCR検査を受けた。結果は陰性だったが、同じ思いを抱いている。
いつか突然、終わりが訪れるかもしれない。だから、生きている今、やれることをやるしかない。私にとってこの想いをありのまま述べることができるのは、今の言葉で表現する口語俳句であり、表現範囲が広い自由律俳句であり、連作であったりする。
独り言が溜まってきた 亡妻と話す 鈴木喜夫
胸の内にある想いを、ふともらす。ありのままもらす。そうやって出た言葉が、胸の奥に届く。鈴木瑞恵さんの「こもれびをにぎりしめる母火葬」の句と共に、胸の奥に届いた。これが詩歌の本来のあり方なのだろう。
詩が出てくる時、想いを述べている自分と、その自分を見ているもう一人の私がいる。そして、想いを述べている自分を、言葉を通じてもう一人の私が受け止めたり、受け容れていたりしている。語り手である自分の、最初の読者は私である。言葉にするということが、受け止め、受け容れる契機になっているような気がする。
孤独死は勇気いるだろ寂しかろ 松下日佐男
独居している人の数が増えているし、その人たちは高齢化している。それを他人事でなく、我が事として見ている。言葉にしてはじめて見えてくるものがある。
おわるということば頭の一角を出ていかない 田中 陽
実は私にもずっと頭の中にこびりついていることがらがある。私の場合は物語であるが、田中陽さんお場合は「おわる」という一語。しかし、この一語が背負う「物語」は重い。
デジタル派?私絶対コオロギ派 鈴木和枝
ITは信じない祖母伝来の梅干し甕 田畑光
ネット社会になり、スマホが普及し、便利になった反面、使いこなせず情報から置き去りになる人、フェイク情報など危険も大きくなっている。新しい技術が開発されるとともに、人出が削減され、逆に忙しくなっている。技術は利益を生み出す側面もあるが、「自己増殖」を優先する。技術が次の技術を生み出す方向に加速していく。人間の都合などおかまいなしに。その違和感をお二人はしっかりととらえていると思う。