2019年 3月17日 長岡天神句会鑑賞
金澤 ひろあき
今月で退職です。退職後は、教員を継続希望していますが、どうも別の学校になりそうです。別れを惜しんで、若い友人と伏見稲荷へ行って来ました。
京都に来たての頃、父と最初に訪れたのがここ。そして退職の月に再び。ふしぎなご縁を感じます。あわただしい中、ほっとするひとときでした。
そして句会もほっとするひととき。皆さんの句を楽しみます。
皆さんの作品です。
橋四(はし)になり医者と仲よし梅咲いて 岡畠さな子
「橋四」とは「八四」の掛詞だそうです。「医者と仲よし」になったのは、まあ仕方が無い。でも「梅咲いて」で少しほっとします。そのあたりの微妙な心境がよく描かれています。
雛飾る町屋の主変りけり 中野硯池
京町屋、最近ブームですが、維持できなくなって持ち主が変わることも多いそうです。新しい持ち主は「雛飾る」家なので、女の子をお持ちの人のようですね。家の雰囲気が変わりますね。
白一灯 一人母待つ膝小僧 青島巡紅
帰りの遅い母を待つ子供の姿が思い浮かびます。私自身こういう体験があり、心に響く句です。「膝小僧」をクローズアップし、心象が非常に具体化しています。
全開す一重の梅の奴さん 坪谷智恵子
「一重の梅」を人物に喩えると? 坪谷さんは「奴さん」に。名答ですね。
手袋の綻び引き払った下宿 野谷真治
これまた私自身の体験が、ありありと想い出されます。大学卒業の時、友人達が次々に下宿を引き払い、その手伝いもしました。私自身は大学院修了時に最初の下宿を引き払いました。その雰囲気を「手袋の綻び」とは。言い得て妙です。
老いてできたるわが娘 日々の誠の嬉しき言の葉 木下藤庵
実感ですね。特に自分が落ち込んだ時にこういう言葉をもらった時には。
定年や一回地面に降りる凧 金澤ひろあき
「定年」は大きな出来事だったので、その題でたくさん作句しました。というか、自然に出てきました。一番言い得たなという実感が出たのがこの句。自分は「一回地面に降りる凧」のようなもんだなと思ったことです。