おもしろい本 ジェフ・フレッチャー 「SHO TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男」 タカ大丸訳 徳間書店
金澤ひろあき
2023年前半のスポーツ界で一番注目を集めたのは、WBCの日本チームだろう。
ふだん野球に関心のない者も、熱心に試合を見ていた。ヌートバー、万波、周東など、一部ファンしか知らなかった選手が、あっという間に有名になった。その中でも一番注目されたのは、大谷翔平選手だった。過去のWBCに、名選手イチローが出た時は、野球ファン以外の者が注目するという現象は起こらなかったのだが。
大谷翔平は日本に居た頃すでに、日本ハムで投手と打者の二刀流で活躍し、メジャーリーグに挑戦した。そしてエンゼルスという、日本人にはあまりなじみのなかった球団に入った。メジャーリーグで二刀流が通用するのかという疑問の声もあったが、「通用」を超えて、メジャーリーグの歴史を変えてしまうほどの活躍をしている。それを私たちはリアルタイムで見ている。(手術で投げられない年もあるが)
この本は、大谷翔平選手の日本時代にも触れられてはいるが、メインは2017年にメジャーリーグ行きを決断してから、18年~22年のエンゼルス時代の話である。
各球団が獲得のためにどう動いたか。お金よりも野球を大切にする大谷翔平選手の姿。なぜ彼がエンゼルスを選んだのか。(フィーリングだそうだ)。改革のためのトレーニング法(ドライブライン・ベースボールというそうだ)など、日本にいる私たちになかなか伝わってこない記事が興味深い。ドライブライン・ベースボールには、日本のなかなか力を伸ばせないプロ選手にも行ってみてはと提案したくなる。
だが、一番大きな出来事は、大谷翔平選手の活躍でメジャーリーグの野球が変わったことだろう。ルール改正にとどまらない。かつて人種差別でメジャーリーグに入れなかった黒人リーグの、優れた二刀流選手の存在を改めて見直させている。(二刀流は、白人のベイブルースだけではないのだ。)
エンゼルスという球団の実情も伝わってくる。(残念ながら弱い)。しかし今、エンゼルスは日本で一番なじみのある球団ではないだろうか。
なおこの本は2022年に出されている。したがって、2023年の大谷翔平選手のホームラン王と投手としての2桁勝利には触れられていない。
大谷翔平選手は再び手術を受けたので、24年はバッターに専念だろう。
どんな続編を見せてくれるのか。楽しみにしている。