教科書によく出るシリーズ 「児のそら寝」
【本文】
①今は昔、比(ひ)叡(え)の山 に 児 あり けり。
【語句説明】
①・今は昔・・今となってはもう昔話だが、
※説話」の冒頭で使われる表現
説話=仏教の利益や面白い話を集めたもの。
代表作
平安時代の「今昔物語集」
鎌倉時代の「宇治拾遺物語」
・児・・よみ「ちご」 意味・・僧侶見習いの少年。
寺の中では大切にされた。
(ちなみに昔のお寺には女性いない。)
・あり けり
「あり」ラ行変格活用動詞
「あり」連用形 意味・・ある いる
「けり」過去の助動詞「けり」 意味・・た
【本文】
②僧たち、宵(よひ) の つれづれ に、
【語句説明】
②宵・・夕方
・つれづれ・・暇な時 所在ない時
【本文】
「③いざ、かいもちひ せ む。」と 言ひ ける を、
【語句説明】
③・いざ・・意味 さあ
・かいもちい・・意味 ぼたもち
※昔は甘い物は超高級品。めったに食べられない!
・せ む・・「せ」サ行変格活用動詞
「す」未然形 意味 する=作る
「む」意志助動詞「む」 意味 しよう
・言ひ ける・・「ける」
過去の助動詞「けり」連体形 意味 言った
【本文】
④この 児、心寄せ に 聞き けり。
【語句説明】
④・心寄せ・・期待
【本文】
⑤さりとて、し出(い)ださ む を 待ち て 寝 ざら む も
わろかり な む と 思ひ て、
【語句説明】
⑤・さりとて・・そうだからといって
・し出ださ む
四段動詞「し出だす」 意味 できあがる
「む」婉曲助動詞
意味 ような
・ざら・・打消助動詞「ず」連用形 意味 ない
・わろかり な む
「わろかり」
ク活用形容詞「わろし」連用形 意味「よくない」
※連用形の語の下の「な む」 意味 きっと~だろう
【本文】
⑥片(かた)方(かた) に 寄りて、寝 たる よし に て、出で来る を 待ち ける に、
【語句説明】
⑥・片方・・よみ「かたかた」 意味 部屋の片隅
・たる・・存続助動詞「たり」連体形 意味 ている
・よし(名詞) 意味 ふり
・出で来る カ行変格活用「いでく」連体形
意味 (ぼたもちが)出て来る
【本文】
⑦すでに し出だし たる さま に て、ひしめき合ひ たり。
【語句説明】
⑦・さま・・ありさま
・たる たり 意味 存続 ている
【本文】
⑧この児、さだめて おどろかさ むず らむ と、待ちゐ たる に、
【語句説明】
⑧・さだめて・・きっと
・おどろかさ
四段動詞「おどろかす」未然形 意味 起こす
・むず・・推量助動詞 意味 だろう
・らむ・・現在推量助動詞 意味 だろう
【本文】
⑨僧 の、
【語句説明】
⑨・僧 の・・「の」は主格 意味 が
【本文】
「⑩もの申し さぶらは む。
【語句説明】
⑩・もの申し
四段動詞「もの申す」連用形 意味 申し上げる
・さぶらは
四段動詞「さぶらふ」未然形 意味 ます
・む・・意志助動詞 意味 しよう
意味 申し上げましょう。もしもし。
【本文】
⑪おどろか せ たまへ。」と 言ふ を、
【語句説明】
⑪・おどろか
四段動詞「おどろく」未然形 意味 目を覚ます
・せ たまへ
「せ」・・尊敬助動詞「す」連用形
「たまへ」
四段補助動詞「たまふ」命令形
二語とも尊敬語 二重敬語 意味 なさってください
【本文】
⑫うれし とは 思へ ども、
【語句説明】
⑫ども・・けれども
【本文】
⑬ただ 一度 に いらへ む も、待ち ける か と もぞ 思ふ とて、
【語句説明】
⑬・いらへ
下二段動詞「いらふ」未然形 意味 返事する
・む・・婉曲助動詞 意味 ような
・ける・・過去助動詞 意味 た
・もぞ・・係助詞 意味 ~したら困る
※係り結びの法則
文中に「係り助詞」→(結び)文末活用語が変化
ぞ
なむ 連体形の変化
や
か
こそ 已然形
意味 強調 疑問など
・とて・・・と言って
【本文】
⑭いま 一(ひと)声(こゑ) 呼ば れ て いらへ む と、念じ て 寝 たる ほど に、
【語句説明】
⑭・いらへ む
いらへ・・返事する
む・・意志助動詞 意味 しよう
・念じ・・サ行変格活用動詞「念ず」 意味 我慢する
・たる・・存続助動詞 意味 ている
【本文】
「⑮や、な 起こし たてまつり そ。
【語句説明】
⑮・や・・呼びかけ 意味 これこれ
・な~そ 意味 禁止 するな
・たてまつり
四段補助動詞「たてまつる」連用形 意味 申し上げる
【本文】
⑯をさなき 人 は、寝入り たまひ に けり。」と 言ふ 声 の し けれ ば、
【語句説明】
⑯・たまひ
四段補助動詞「たまふ」連用形
意味 尊敬語 いらっしゃる なさる
・に・・完了助動詞「ぬ」連用形 意味 してしまう
・けり・・詠嘆助動詞
意味 なあ
・声 の ・・「の」 主格 意味 が は
【本文】
⑰あな、わびし と 思ひ て、いま 一度 起こせ かし と、思ひ寝 に 聞け ば、
【語句説明】
⑰・あな・・ああ
・わびし シク活用形容詞「わびし」 意味 つらい
・いま 一度 意味 もう一度
・かし・・念を押す 意味 よ な
・聞け ば
四段動詞「聞く」已然形
※已然形―ば・・「確定条件」という
意味 ので と
【本文】
⑱ひしひし と、ただ 食ひ に 食ふ 音 の し けれ ば、
【語句説明】
⑱・ただ~に~ 意味 ひたすら~する
・し・・サ行変格活用動詞「す」連用形 意味 する
・けれ・・過去助動詞「けり」 意味 た
・ば・・確定条件 意味 ので
【本文】
⑲すべなく て、無(む)期(ご) の のち に、 「えい。」と いらへ たり けれ ば、
⑳僧たち 笑ふ こと 限りなし。
【語句説明】
⑲・すべなく ク活用形容詞「すべなし」連用形
意味 どうしようもない
・無期 よみかた「むご」
意味 長い時
・えい 意味 はい
・たり・・完了助動詞 意味 てしまう
・けれ・・過去助動詞 意味 た
・ば・・確定条件 意味 ので
【訳】
①今となってはもう昔話だが、比叡山に稚児(ちご)がいた。
②僧達は、夕方の退屈な時に、③「さあ、ぼたもちをしよう=作ろう」と言ったのを、
④この稚児は、期待して聞いた。⑤そうだからと言って、作り上げるのを待って、寝ないのもきっとよくないだろうと思って、⑥部屋の片隅に寄って、寝ているふりをして、ぼたもちが出て来るのを待っていた時に、⑦すでに作り上げているありさまで、ひしめき合っている。
⑧この稚児は、きっと起こすだろうと、待っていたが、⑨僧が、⑩「もしもし。
⑪目をお覚ましください。」と言うのを、⑫うれしいとは思うけれど、⑬たった一度で返事をするようなのも、(ちごが)待っていたのかと(僧達が)思うと困ると(ちごが)思って、⑭もう一声呼ばれて返事をしようとがまんして寝ているうちに、「⑮これこれ、起こし申し上げるな。⑯幼い人は、寝入りなさってしまった。」と言う声がしたので、⑰ああ、つらいと思って、もう一度起こせよ、思いながら寝て聞くと、⑱ひしひしとひたすら食う音がしたので、⑲どうしようもなくて、ずいぶん後に、「はい」と返事をしていたので、⑳僧達が笑うことが、限りなかった。
【本文】
①今は昔、比(ひ)叡(え)の山 に 児 あり けり。
【語句説明】
①・今は昔・・今となってはもう昔話だが、
※説話」の冒頭で使われる表現
説話=仏教の利益や面白い話を集めたもの。
代表作
平安時代の「今昔物語集」
鎌倉時代の「宇治拾遺物語」
・児・・よみ「ちご」 意味・・僧侶見習いの少年。
寺の中では大切にされた。
(ちなみに昔のお寺には女性いない。)
・あり けり
「あり」ラ行変格活用動詞
「あり」連用形 意味・・ある いる
「けり」過去の助動詞「けり」 意味・・た
【本文】
②僧たち、宵(よひ) の つれづれ に、
【語句説明】
②宵・・夕方
・つれづれ・・暇な時 所在ない時
【本文】
「③いざ、かいもちひ せ む。」と 言ひ ける を、
【語句説明】
③・いざ・・意味 さあ
・かいもちい・・意味 ぼたもち
※昔は甘い物は超高級品。めったに食べられない!
・せ む・・「せ」サ行変格活用動詞
「す」未然形 意味 する=作る
「む」意志助動詞「む」 意味 しよう
・言ひ ける・・「ける」
過去の助動詞「けり」連体形 意味 言った
【本文】
④この 児、心寄せ に 聞き けり。
【語句説明】
④・心寄せ・・期待
【本文】
⑤さりとて、し出(い)ださ む を 待ち て 寝 ざら む も
わろかり な む と 思ひ て、
【語句説明】
⑤・さりとて・・そうだからといって
・し出ださ む
四段動詞「し出だす」 意味 できあがる
「む」婉曲助動詞
意味 ような
・ざら・・打消助動詞「ず」連用形 意味 ない
・わろかり な む
「わろかり」
ク活用形容詞「わろし」連用形 意味「よくない」
※連用形の語の下の「な む」 意味 きっと~だろう
【本文】
⑥片(かた)方(かた) に 寄りて、寝 たる よし に て、出で来る を 待ち ける に、
【語句説明】
⑥・片方・・よみ「かたかた」 意味 部屋の片隅
・たる・・存続助動詞「たり」連体形 意味 ている
・よし(名詞) 意味 ふり
・出で来る カ行変格活用「いでく」連体形
意味 (ぼたもちが)出て来る
【本文】
⑦すでに し出だし たる さま に て、ひしめき合ひ たり。
【語句説明】
⑦・さま・・ありさま
・たる たり 意味 存続 ている
【本文】
⑧この児、さだめて おどろかさ むず らむ と、待ちゐ たる に、
【語句説明】
⑧・さだめて・・きっと
・おどろかさ
四段動詞「おどろかす」未然形 意味 起こす
・むず・・推量助動詞 意味 だろう
・らむ・・現在推量助動詞 意味 だろう
【本文】
⑨僧 の、
【語句説明】
⑨・僧 の・・「の」は主格 意味 が
【本文】
「⑩もの申し さぶらは む。
【語句説明】
⑩・もの申し
四段動詞「もの申す」連用形 意味 申し上げる
・さぶらは
四段動詞「さぶらふ」未然形 意味 ます
・む・・意志助動詞 意味 しよう
意味 申し上げましょう。もしもし。
【本文】
⑪おどろか せ たまへ。」と 言ふ を、
【語句説明】
⑪・おどろか
四段動詞「おどろく」未然形 意味 目を覚ます
・せ たまへ
「せ」・・尊敬助動詞「す」連用形
「たまへ」
四段補助動詞「たまふ」命令形
二語とも尊敬語 二重敬語 意味 なさってください
【本文】
⑫うれし とは 思へ ども、
【語句説明】
⑫ども・・けれども
【本文】
⑬ただ 一度 に いらへ む も、待ち ける か と もぞ 思ふ とて、
【語句説明】
⑬・いらへ
下二段動詞「いらふ」未然形 意味 返事する
・む・・婉曲助動詞 意味 ような
・ける・・過去助動詞 意味 た
・もぞ・・係助詞 意味 ~したら困る
※係り結びの法則
文中に「係り助詞」→(結び)文末活用語が変化
ぞ
なむ 連体形の変化
や
か
こそ 已然形
意味 強調 疑問など
・とて・・・と言って
【本文】
⑭いま 一(ひと)声(こゑ) 呼ば れ て いらへ む と、念じ て 寝 たる ほど に、
【語句説明】
⑭・いらへ む
いらへ・・返事する
む・・意志助動詞 意味 しよう
・念じ・・サ行変格活用動詞「念ず」 意味 我慢する
・たる・・存続助動詞 意味 ている
【本文】
「⑮や、な 起こし たてまつり そ。
【語句説明】
⑮・や・・呼びかけ 意味 これこれ
・な~そ 意味 禁止 するな
・たてまつり
四段補助動詞「たてまつる」連用形 意味 申し上げる
【本文】
⑯をさなき 人 は、寝入り たまひ に けり。」と 言ふ 声 の し けれ ば、
【語句説明】
⑯・たまひ
四段補助動詞「たまふ」連用形
意味 尊敬語 いらっしゃる なさる
・に・・完了助動詞「ぬ」連用形 意味 してしまう
・けり・・詠嘆助動詞
意味 なあ
・声 の ・・「の」 主格 意味 が は
【本文】
⑰あな、わびし と 思ひ て、いま 一度 起こせ かし と、思ひ寝 に 聞け ば、
【語句説明】
⑰・あな・・ああ
・わびし シク活用形容詞「わびし」 意味 つらい
・いま 一度 意味 もう一度
・かし・・念を押す 意味 よ な
・聞け ば
四段動詞「聞く」已然形
※已然形―ば・・「確定条件」という
意味 ので と
【本文】
⑱ひしひし と、ただ 食ひ に 食ふ 音 の し けれ ば、
【語句説明】
⑱・ただ~に~ 意味 ひたすら~する
・し・・サ行変格活用動詞「す」連用形 意味 する
・けれ・・過去助動詞「けり」 意味 た
・ば・・確定条件 意味 ので
【本文】
⑲すべなく て、無(む)期(ご) の のち に、 「えい。」と いらへ たり けれ ば、
⑳僧たち 笑ふ こと 限りなし。
【語句説明】
⑲・すべなく ク活用形容詞「すべなし」連用形
意味 どうしようもない
・無期 よみかた「むご」
意味 長い時
・えい 意味 はい
・たり・・完了助動詞 意味 てしまう
・けれ・・過去助動詞 意味 た
・ば・・確定条件 意味 ので
【訳】
①今となってはもう昔話だが、比叡山に稚児(ちご)がいた。
②僧達は、夕方の退屈な時に、③「さあ、ぼたもちをしよう=作ろう」と言ったのを、
④この稚児は、期待して聞いた。⑤そうだからと言って、作り上げるのを待って、寝ないのもきっとよくないだろうと思って、⑥部屋の片隅に寄って、寝ているふりをして、ぼたもちが出て来るのを待っていた時に、⑦すでに作り上げているありさまで、ひしめき合っている。
⑧この稚児は、きっと起こすだろうと、待っていたが、⑨僧が、⑩「もしもし。
⑪目をお覚ましください。」と言うのを、⑫うれしいとは思うけれど、⑬たった一度で返事をするようなのも、(ちごが)待っていたのかと(僧達が)思うと困ると(ちごが)思って、⑭もう一声呼ばれて返事をしようとがまんして寝ているうちに、「⑮これこれ、起こし申し上げるな。⑯幼い人は、寝入りなさってしまった。」と言う声がしたので、⑰ああ、つらいと思って、もう一度起こせよ、思いながら寝て聞くと、⑱ひしひしとひたすら食う音がしたので、⑲どうしようもなくて、ずいぶん後に、「はい」と返事をしていたので、⑳僧達が笑うことが、限りなかった。