西院の裏路地 二
金澤ひろあき
同じアパートに住んでいた人は、まず高齢の男性。身寄りがないようでした。
若い会社員の男性も一人で暮らしていましたが、忙しいらしく、夜遅くに帰ってきてそのまま寝るという生活でした。この人は大家と喧嘩して出て行ってしまいました。
六畳、四畳の二間に小さな台所、トイレと言った間取りでしたので、一人暮らしの人が多かったのです。一部屋だけ家族で住んでいて、子供は小学生、奥さんがよく洗濯機を回していました。たぶん他の家の洗濯もしていたようです。どういう事情かは、分かりません。
私と同じ年齢ぐらいの女性が一人。猫と一緒に暮らしていました。彼女とは話もしました。繊維工場に勤めていました。ある政党の熱心な支持者で、勧誘したり、機関紙を買わそうとするので、居ないふりをすることもありました。
夜中に私の部屋に入ろうとするので、お断りし、会うのは昼だけということにしたのです。不服そうでしたが、守ってくれました。
その彼女の部屋に、知り合いと思われる若い男が訪ねて来たこともありました。
「こんな夜中に迷惑ですから、帰ってください」と言って、男を入れませんでした。二人の間に何があったのでしょう。
短夜のカーテン越しのささめごと ひろあき